第21話「絵里、颯爽登場!」
ここは絵里ちゃんの家。
俺は絢瀬姉妹と一緒に夕食を食べていた。
絵里ちゃんはこの家で亜里沙ちゃんと2人で暮らしている。
その割にはだだっ広いリビングがある一軒家に住んでいる。
これ本来は4人家族が住むような場所なんじゃないのかみたいにツッコみたくなるが、そんな気持ちは胸にしまい、夕食を待っていた。
部屋に通されてから10分ほど経つと、亜里沙ちゃんが大きな器を持ってやってきた。
「これ、ロシア料理のボルシチです。お口に合えばいいんですが……」
大皿に乗った真っ赤なスープ。これが噂に聞くボルシチである。
ある人はこれをカレーと見間違え、ある人はこれを飲み物だと言った。そういう曰く付きの料理である。
ほのかに香る酸味と辛味が入り交じった匂いが鼻に伝わり、食欲をそそる。
「初めて見た……。これ、亜里沙ちゃんが作ったの?」
「いえ、お姉ちゃんが」
「へぇ~……」
絵里ちゃんが厨房から出てきた。少し照れくさい表情でこちらを見ている。
「どう……かしら?」
「お姉ちゃんの得意料理なんだよねー?」
亜里沙ちゃんはいじわるそうに絵里ちゃんの方を見て言う。
「ほぅ、そりゃあ楽しみだ」
得意料理ならばきっとおいしいだろう。そう思って一口入れる。
まず、酸味がふわっと広がった後、辛味がつんつんとやってくる。ごろごろとした歯ごたえのある具が味をさらに引き立ててくる。
あぁ、これ美味しいやつだ。
「美味しいね! このなんだろうほんのりした酸味と辛みが……いいね!」
あまりに美味しくて上手く言葉に出せなかったが、それでも俺の料理評は絵里ちゃんの心に響いたようだった。
絵里ちゃんは安堵したようにみせる。
「よかった……」
こんなに嬉しそうな彼女の表情、初めて見た。そうだ、もっと褒めちゃおう。
「うんうん、これなかなかいけるよ。お店開けるくらいの出来。はっきり言って最高」
「お世辞はいいのよ?」
「お世辞じゃないよ。マジだからね?」
さすがに褒めすぎたか。褒められなれていないのか知らないが、絵里ちゃんはちょっといやそうな表情をする。
「なんであなたはそう真剣に恥ずかしいことが言えるのよ……見てて恥ずかしいんだけど」
「でも、ちゃんと気持ちは伝えなくちゃ」
「あなた本当に日本人?」
「さぁね」
☆ ☆ ☆
そんなことがあって翌日。
「という訳で、今日から絵里ちゃんがμ'sのメンバーになったぞ! 皆、異論はないね?」
「よろしくお願いします……」
突然の発表に困惑するメンバーたち。それも無理はないか。
海未とことりと凛は呆れた表情をし、真姫と穂乃果とにこは苛立っており、かよちんに至っては今にも泣き出しそうだ。
「異論ありよ!」
にこちゃんが真っ先に文句を言ってきた。
「どうした、部長」
「なんでメンバーの了承もなく勝手にメンバー入りさせてんのよ! アンタにそこまでの権限はないはずよ!」
この声に続くようにメンバーが次々と文句を垂れる。
「そうです! メンバー追加みたいな大きな話は一度私達を通してからでないと」
と、海未。
「というか昨晩二人の間で何があったの? 家に帰ってきても全然教えてくれなかったじゃん!」
穂乃果。
「どうせ生徒会長のナイスバディに買収されたんでしょ!! ナイスバディならかよちんもいるのに浮気者!!」
凜。
「ひどい……っ!!」
もうかよちんに至っては泣き崩れている。
「まぁ、各々言いたいことは分かるよ。でもな、絵里ちゃんがスクールアイドルやりたいって本気で思ってることだけは覚えておいて欲しいんだ」
そう前置きして、俺は絵里ちゃんの今までの葛藤について話した。
生徒会長という身分故に素直になれなかった話。俺にやっとの思いでμ'sのメンバーになりたいと言った話。
全部話した。
「大変だったのね……私みたいに」
真っ先に感動したのはにこちゃん。アンタ本当に掌クルックルだよな。
「泣ける話だったね、かよちん」
「うん……!!」
りんぱなも分かってくれたみたいだ。
とはいえ、冷静な真姫ちゃんだけは違った。
「それはいいんだけど、この生徒会長に私達の仲間になり得るだけの実力はあるの?」
そういえば、自信満々なだけで肝心の実力というのを俺は知らない。
そのへんどうなのと絵里ちゃんの方を向く。
「……あるの?」
「あるわよ。見てなさい!」
そう言って絵里ちゃんはダンスを始めた。
ダンスといってもμ'sがやるようなアイドルムーブではなく、優雅なバレエだったが。
「身軽……っ!!」
「軽やかにゃ……」
運動神経に自信のある海未と凜はただただその技術力に驚くしかなかった。
「どう? 私のダンスは超次元レベルよ」
自信満々のどや顔を見せる絵里ちゃん。それに対し、真姫ちゃんが食ってかかった。
「じゃあ歌はどうなの?」
続いて歌を歌う絵里ちゃん。これもまた素晴らしいものだった。
「音程取れてる……」
「美しい声です……っ!!」
とりわけ穂乃果とかよちんは聞き惚れていた。
あまりのハイスペックさに真姫ちゃんは動揺を抑えられなかった。
「じゃ、じゃあ、ファッションセンスはどうなの!?」
絵里ちゃんのファッションセンスは抜群だった。どことなくセクシーで大人ぽいファッションは皆の目を釘付けにした。
「これはクール系!?」
ことりが驚く。
「セクシー系プリズムスタァの素質があるわよアンタ!!」
もはやにこちゃんに至っては何を言っているか分からない。
こんなものを見せられてはたまったものじゃない。絵里ちゃんは依然としてどや顔を保っている。
「どうかしら? 私の実力、納得してくれたかしら?」
「な? これで入れない理由はないでしょ」
これで皆、絵里ちゃんの加入を納得してくれるだろう。
「あるよ」
と思ったが、穂乃果が反論した。
俺は絢瀬姉妹と一緒に夕食を食べていた。
絵里ちゃんはこの家で亜里沙ちゃんと2人で暮らしている。
その割にはだだっ広いリビングがある一軒家に住んでいる。
これ本来は4人家族が住むような場所なんじゃないのかみたいにツッコみたくなるが、そんな気持ちは胸にしまい、夕食を待っていた。
部屋に通されてから10分ほど経つと、亜里沙ちゃんが大きな器を持ってやってきた。
「これ、ロシア料理のボルシチです。お口に合えばいいんですが……」
大皿に乗った真っ赤なスープ。これが噂に聞くボルシチである。
ある人はこれをカレーと見間違え、ある人はこれを飲み物だと言った。そういう曰く付きの料理である。
ほのかに香る酸味と辛味が入り交じった匂いが鼻に伝わり、食欲をそそる。
「初めて見た……。これ、亜里沙ちゃんが作ったの?」
「いえ、お姉ちゃんが」
「へぇ~……」
絵里ちゃんが厨房から出てきた。少し照れくさい表情でこちらを見ている。
「どう……かしら?」
「お姉ちゃんの得意料理なんだよねー?」
亜里沙ちゃんはいじわるそうに絵里ちゃんの方を見て言う。
「ほぅ、そりゃあ楽しみだ」
得意料理ならばきっとおいしいだろう。そう思って一口入れる。
まず、酸味がふわっと広がった後、辛味がつんつんとやってくる。ごろごろとした歯ごたえのある具が味をさらに引き立ててくる。
あぁ、これ美味しいやつだ。
「美味しいね! このなんだろうほんのりした酸味と辛みが……いいね!」
あまりに美味しくて上手く言葉に出せなかったが、それでも俺の料理評は絵里ちゃんの心に響いたようだった。
絵里ちゃんは安堵したようにみせる。
「よかった……」
こんなに嬉しそうな彼女の表情、初めて見た。そうだ、もっと褒めちゃおう。
「うんうん、これなかなかいけるよ。お店開けるくらいの出来。はっきり言って最高」
「お世辞はいいのよ?」
「お世辞じゃないよ。マジだからね?」
さすがに褒めすぎたか。褒められなれていないのか知らないが、絵里ちゃんはちょっといやそうな表情をする。
「なんであなたはそう真剣に恥ずかしいことが言えるのよ……見てて恥ずかしいんだけど」
「でも、ちゃんと気持ちは伝えなくちゃ」
「あなた本当に日本人?」
「さぁね」
☆ ☆ ☆
そんなことがあって翌日。
「という訳で、今日から絵里ちゃんがμ'sのメンバーになったぞ! 皆、異論はないね?」
「よろしくお願いします……」
突然の発表に困惑するメンバーたち。それも無理はないか。
海未とことりと凛は呆れた表情をし、真姫と穂乃果とにこは苛立っており、かよちんに至っては今にも泣き出しそうだ。
「異論ありよ!」
にこちゃんが真っ先に文句を言ってきた。
「どうした、部長」
「なんでメンバーの了承もなく勝手にメンバー入りさせてんのよ! アンタにそこまでの権限はないはずよ!」
この声に続くようにメンバーが次々と文句を垂れる。
「そうです! メンバー追加みたいな大きな話は一度私達を通してからでないと」
と、海未。
「というか昨晩二人の間で何があったの? 家に帰ってきても全然教えてくれなかったじゃん!」
穂乃果。
「どうせ生徒会長のナイスバディに買収されたんでしょ!! ナイスバディならかよちんもいるのに浮気者!!」
凜。
「ひどい……っ!!」
もうかよちんに至っては泣き崩れている。
「まぁ、各々言いたいことは分かるよ。でもな、絵里ちゃんがスクールアイドルやりたいって本気で思ってることだけは覚えておいて欲しいんだ」
そう前置きして、俺は絵里ちゃんの今までの葛藤について話した。
生徒会長という身分故に素直になれなかった話。俺にやっとの思いでμ'sのメンバーになりたいと言った話。
全部話した。
「大変だったのね……私みたいに」
真っ先に感動したのはにこちゃん。アンタ本当に掌クルックルだよな。
「泣ける話だったね、かよちん」
「うん……!!」
りんぱなも分かってくれたみたいだ。
とはいえ、冷静な真姫ちゃんだけは違った。
「それはいいんだけど、この生徒会長に私達の仲間になり得るだけの実力はあるの?」
そういえば、自信満々なだけで肝心の実力というのを俺は知らない。
そのへんどうなのと絵里ちゃんの方を向く。
「……あるの?」
「あるわよ。見てなさい!」
そう言って絵里ちゃんはダンスを始めた。
ダンスといってもμ'sがやるようなアイドルムーブではなく、優雅なバレエだったが。
「身軽……っ!!」
「軽やかにゃ……」
運動神経に自信のある海未と凜はただただその技術力に驚くしかなかった。
「どう? 私のダンスは超次元レベルよ」
自信満々のどや顔を見せる絵里ちゃん。それに対し、真姫ちゃんが食ってかかった。
「じゃあ歌はどうなの?」
続いて歌を歌う絵里ちゃん。これもまた素晴らしいものだった。
「音程取れてる……」
「美しい声です……っ!!」
とりわけ穂乃果とかよちんは聞き惚れていた。
あまりのハイスペックさに真姫ちゃんは動揺を抑えられなかった。
「じゃ、じゃあ、ファッションセンスはどうなの!?」
絵里ちゃんのファッションセンスは抜群だった。どことなくセクシーで大人ぽいファッションは皆の目を釘付けにした。
「これはクール系!?」
ことりが驚く。
「セクシー系プリズムスタァの素質があるわよアンタ!!」
もはやにこちゃんに至っては何を言っているか分からない。
こんなものを見せられてはたまったものじゃない。絵里ちゃんは依然としてどや顔を保っている。
「どうかしら? 私の実力、納得してくれたかしら?」
「な? これで入れない理由はないでしょ」
これで皆、絵里ちゃんの加入を納得してくれるだろう。
「あるよ」
と思ったが、穂乃果が反論した。
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