第04話「花陽、あの人と会っちゃった・・・」
先日撮ったμ'sのファーストライブの映像はスクールアイドルポータルサイト「ラブライブ!」に投稿した。
この映像によってμ'sは更に注目を集めることだろう。
ファーストライブを乗り越えたμ'sはというと、次のライブをやることも考えながら、日々練習に励んでいた。
ちなみに俺はというと、またいつものように家事をしている。
そんなある日、穂乃果たちが俺にある提案をしてきた。
「竜くん、μ'sのマネージャーになってみない?」
「マネージャー!? な、何言って……」
マネージャー。それはアイドルをサポートする仕事。
体調管理をしたり困ったことがあったら相談に乗ったり。
そういうアイドルの裏方の花形ともいえる存在。
それがマネージャー。
そんなのが俺に務まるのか? 戸惑っていると海未が話しかけてきた。
「竜は皆をまとめたり、手助けしたりするのが得意ですからね」
「そうは言っても仕事が……」
俺にはマネージャー以前に高坂家のお手伝いさんという仕事があるのだ。
穂乃果たちの手伝いまで手が回るわけがないのだ。
そんな様子を察したのか、ことりが甘い声で言葉を放つ。
「竜くん……おねがぁいっ!」
「はぅぅぅっ!」
それは反則だ。心理的にこのことりを否定することは俺にはできん。
結局、俺はことりちゃんの技で屈服してしまいマネージャー就任がめでたく決まった……
……わけではない。
「誰がマネージャーなんかやるか! 俺は家事で精一杯なんだよ!」
急に取り乱した俺に穂乃果が声を荒げる。
「俺くんだけが頼りなのっ!」
「大体、俺は音ノ木坂の生徒じゃねーじゃん! スクールアイドルに部外者が関わるのはアリなのかよ!?」
「確かに……一理あります」
海未は納得してくれたようだ。これは良かった。
「というわけで俺はマネージャーはやらんぞ」
「俺くぅん……」
ことりは悲しそうに俺を見つめる。
「……皆には悪いが、そこまで派手に関われない。俺は……皆が思ってるほど優秀じゃあないんだ」
俺はそう言って仕事に戻っていった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数日後。今日は日曜日。
穂乃果の母が特別に仕事を肩代わりしてくれた。
なんでも「ここに来てからずっと仕事ばかりで疲れてるだろうから、休んできていいよ」ということらしい。
そんなわけで、俺はこの近辺で遊べる場所……「秋葉原」へとやってきた。
ここには初めて来るが、独特の雰囲気がたまらない。なんでも、ここは昔電気街だったようで、今はサブカルチャーの中心地として認知されている。
「ゲマ! 仕事さぼんなにょっ! 目からビームッ!」
「ひどいゲマァァァッ!」
「また喧嘩やってるにゅ」
ふとアニメショップを見ればメイド服の女の子が店前で暴れている様子を堪能できる。
「しっかし、ここは魔境か……? 黄色い風船みたいなエイリアンがいるし、目からビーム出す女の子がいるし……」
そんな奇妙な店は置いといて、俺は秋葉原にあるスクールアイドルショップとやらに行くことにした。
「なんでこんなところに来ちまったんだろうな……」
俺は店内をぐるっと見て回る。秋葉原を舞台に活躍するUTX学院のA-RISEを筆頭に全国のスクールアイドルのグッズが置いてある。
「結構いろんな種類があるのね……ん?」
ふと、俺は売り場のモニターに目が行く。3人組のアイドルが歌って踊る映像が流れていた。
何を隠そう「μ's」だ。
「ここは"ラブライブ!"の直営店だから、そこに投稿した動画を流せるわけね……」
店員さんいわく、μ'sは今この店でちょっとばかし注目されているアイドルらしい。
その上、μ'sの映像がエンドレスで流れていて、なおかつモニターには「今、期待のスクールアイドル!!」とポップが貼られているのだ。
いかに注目されているかよく分かる。
「それにしても、こんなふうに流れるのが分かってたらもっとちゃんとアングルとか考えて撮るべきだったかな……?」
そう自身の拙い撮影技術について憂いていた。
「これ撮ったのあなたなんですか!?」
すると、背後からそんな声がした。
「あぁ……そうだけど?」
俺は後ろを振り向く。そこには茶髪ショートの少女がいた。
「もし良かったら詳しくお話し聞かせてくれませんか!?」
女の子はそう目を輝かせて言う。
この子、見覚えがある。確か、ファーストライブに来てくれた「かよちん」と呼ばれてた子だ。
一応、確認を取ってみると正解だった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
俺達は店から出て、話を続けた。
「それで、何を聞きたいの?」
俺はかよちんに問う。
「あの……あなたはμ'sとは一体どういった関係なんですか!?」
確かに気になるだろう。
あのファーストライブには自分とその友達しかいなかったはずなのに、なぜ俺がそのライブについて知っているのか。
関係者以外ありえないからな。
「あぁ……ただの協力者さ。幼馴染だからな、メンバーと」
「ほぇ~なるほど~」
かよちんは納得したようだ。
「でも、本当はそれが聞きたかったわけじゃないでしょ?」
「何故それを!?」
かよちんは図星を突かれたようで驚きの声を上げる。
「なんとなくさ。それ、自分から近付いて聞くことじゃないでしょ」
「は、はい……」
かよちんは顔を赤らめてうつむいてしまった。
「あ、分かった! もしかしてμ'sのメンバーになりたいとか?」
「はぅっ!? 何故それを!!」
またまたかよちんは驚く。この子はいろいろデリケートなのかね。
「勘さ。でも、根拠もあるんだぞ。かよちん可愛いし、μ'sのパフォーマンス見てた時も目が輝いてた」
「パフォーマンス中、私のこと見てたんですか!?」
「唯一の客だったじゃない。見ないわけないでしょ それに……」
「それに?」
「オーラがすごかった」
「オーラ!?」
かよちんは驚く。驚きすぎだぞ。
「穂乃果……あ、いや、μ'sのメンバーと同じような存在感のある力強いオーラがあるんだ」
「あ、ありがとうございます……」
かよちんがあまりに驚くので忘れそうになったが、彼女はμ’sのメンバーになりたかったはずだ。それをもう一度問うてみる。
「それはそうと、μ'sのメンバーになりたいんでしょ?」
「は、はいっ! でも……」
「でも?」
「迷ってるんです」
「迷ってる?」
「はい……。私、本当にμ'sのメンバーになっていいのかなって。実はμ'sの高坂先輩から誘われたんです」
すでに穂乃果から目をつけられていたようだ。真姫ちゃんの時といい、穂乃果は本当にいろんな人に声をかけたがる。
「やればいいんじゃない? っていうか、さっきやりたいって言ってたよね?」
「それはそうなんですけど……私人見知りで引っ込み思案で恥ずかしがりやだから……」
その性格なら、さっきの過剰なリアクションにも納得がいく。
かよちんは「そういう子」なのだ。そういう子故に悩むのだ。
「なるほど。自分に自信がないってわけか。……実は俺もそうなんだよね」
「そうなんですか?」
ここで自分語りに話を移動させる。
自分の中でも迷いがあったから、かよちんに良いアドバイスができない気がしたのだ。
「俺さ、本格的にμ'sのマネージャーとして誘われちゃったんだけど、忙しさを理由に断っちゃってさ」
「……」
かよちんは黙って俺の話を聞く。
「でもそれ以上に自信がない……。穂乃果の手助けをするって言っておきながら、ファーストライブでろくに集客もできなかった。そんな無能の俺にμ'sのマネージャーをやる資格なんてない。自信がないってそういうこと」
「はぁ……」
かよちんは共感したのか頷いて話を聞いてくれる。
「というわけで、実は俺も悩んでるんだ」
「私たち……本当にダメダメだぁ」
「まったくだ」
そうやってお互いため息を付いていると、見覚えのある人がこちらに向かってきた。
「2人してなに悩んでるのよ?」
何を隠そう、やってきたのは真姫ちゃんだった。
「……真姫ちゃん!」
「西木野さん!」
俺に続いてかよちんも声を上げた。
この映像によってμ'sは更に注目を集めることだろう。
ファーストライブを乗り越えたμ'sはというと、次のライブをやることも考えながら、日々練習に励んでいた。
ちなみに俺はというと、またいつものように家事をしている。
そんなある日、穂乃果たちが俺にある提案をしてきた。
「竜くん、μ'sのマネージャーになってみない?」
「マネージャー!? な、何言って……」
マネージャー。それはアイドルをサポートする仕事。
体調管理をしたり困ったことがあったら相談に乗ったり。
そういうアイドルの裏方の花形ともいえる存在。
それがマネージャー。
そんなのが俺に務まるのか? 戸惑っていると海未が話しかけてきた。
「竜は皆をまとめたり、手助けしたりするのが得意ですからね」
「そうは言っても仕事が……」
俺にはマネージャー以前に高坂家のお手伝いさんという仕事があるのだ。
穂乃果たちの手伝いまで手が回るわけがないのだ。
そんな様子を察したのか、ことりが甘い声で言葉を放つ。
「竜くん……おねがぁいっ!」
「はぅぅぅっ!」
それは反則だ。心理的にこのことりを否定することは俺にはできん。
結局、俺はことりちゃんの技で屈服してしまいマネージャー就任がめでたく決まった……
……わけではない。
「誰がマネージャーなんかやるか! 俺は家事で精一杯なんだよ!」
急に取り乱した俺に穂乃果が声を荒げる。
「俺くんだけが頼りなのっ!」
「大体、俺は音ノ木坂の生徒じゃねーじゃん! スクールアイドルに部外者が関わるのはアリなのかよ!?」
「確かに……一理あります」
海未は納得してくれたようだ。これは良かった。
「というわけで俺はマネージャーはやらんぞ」
「俺くぅん……」
ことりは悲しそうに俺を見つめる。
「……皆には悪いが、そこまで派手に関われない。俺は……皆が思ってるほど優秀じゃあないんだ」
俺はそう言って仕事に戻っていった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数日後。今日は日曜日。
穂乃果の母が特別に仕事を肩代わりしてくれた。
なんでも「ここに来てからずっと仕事ばかりで疲れてるだろうから、休んできていいよ」ということらしい。
そんなわけで、俺はこの近辺で遊べる場所……「秋葉原」へとやってきた。
ここには初めて来るが、独特の雰囲気がたまらない。なんでも、ここは昔電気街だったようで、今はサブカルチャーの中心地として認知されている。
「ゲマ! 仕事さぼんなにょっ! 目からビームッ!」
「ひどいゲマァァァッ!」
「また喧嘩やってるにゅ」
ふとアニメショップを見ればメイド服の女の子が店前で暴れている様子を堪能できる。
「しっかし、ここは魔境か……? 黄色い風船みたいなエイリアンがいるし、目からビーム出す女の子がいるし……」
そんな奇妙な店は置いといて、俺は秋葉原にあるスクールアイドルショップとやらに行くことにした。
「なんでこんなところに来ちまったんだろうな……」
俺は店内をぐるっと見て回る。秋葉原を舞台に活躍するUTX学院のA-RISEを筆頭に全国のスクールアイドルのグッズが置いてある。
「結構いろんな種類があるのね……ん?」
ふと、俺は売り場のモニターに目が行く。3人組のアイドルが歌って踊る映像が流れていた。
何を隠そう「μ's」だ。
「ここは"ラブライブ!"の直営店だから、そこに投稿した動画を流せるわけね……」
店員さんいわく、μ'sは今この店でちょっとばかし注目されているアイドルらしい。
その上、μ'sの映像がエンドレスで流れていて、なおかつモニターには「今、期待のスクールアイドル!!」とポップが貼られているのだ。
いかに注目されているかよく分かる。
「それにしても、こんなふうに流れるのが分かってたらもっとちゃんとアングルとか考えて撮るべきだったかな……?」
そう自身の拙い撮影技術について憂いていた。
「これ撮ったのあなたなんですか!?」
すると、背後からそんな声がした。
「あぁ……そうだけど?」
俺は後ろを振り向く。そこには茶髪ショートの少女がいた。
「もし良かったら詳しくお話し聞かせてくれませんか!?」
女の子はそう目を輝かせて言う。
この子、見覚えがある。確か、ファーストライブに来てくれた「かよちん」と呼ばれてた子だ。
一応、確認を取ってみると正解だった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
俺達は店から出て、話を続けた。
「それで、何を聞きたいの?」
俺はかよちんに問う。
「あの……あなたはμ'sとは一体どういった関係なんですか!?」
確かに気になるだろう。
あのファーストライブには自分とその友達しかいなかったはずなのに、なぜ俺がそのライブについて知っているのか。
関係者以外ありえないからな。
「あぁ……ただの協力者さ。幼馴染だからな、メンバーと」
「ほぇ~なるほど~」
かよちんは納得したようだ。
「でも、本当はそれが聞きたかったわけじゃないでしょ?」
「何故それを!?」
かよちんは図星を突かれたようで驚きの声を上げる。
「なんとなくさ。それ、自分から近付いて聞くことじゃないでしょ」
「は、はい……」
かよちんは顔を赤らめてうつむいてしまった。
「あ、分かった! もしかしてμ'sのメンバーになりたいとか?」
「はぅっ!? 何故それを!!」
またまたかよちんは驚く。この子はいろいろデリケートなのかね。
「勘さ。でも、根拠もあるんだぞ。かよちん可愛いし、μ'sのパフォーマンス見てた時も目が輝いてた」
「パフォーマンス中、私のこと見てたんですか!?」
「唯一の客だったじゃない。見ないわけないでしょ それに……」
「それに?」
「オーラがすごかった」
「オーラ!?」
かよちんは驚く。驚きすぎだぞ。
「穂乃果……あ、いや、μ'sのメンバーと同じような存在感のある力強いオーラがあるんだ」
「あ、ありがとうございます……」
かよちんがあまりに驚くので忘れそうになったが、彼女はμ’sのメンバーになりたかったはずだ。それをもう一度問うてみる。
「それはそうと、μ'sのメンバーになりたいんでしょ?」
「は、はいっ! でも……」
「でも?」
「迷ってるんです」
「迷ってる?」
「はい……。私、本当にμ'sのメンバーになっていいのかなって。実はμ'sの高坂先輩から誘われたんです」
すでに穂乃果から目をつけられていたようだ。真姫ちゃんの時といい、穂乃果は本当にいろんな人に声をかけたがる。
「やればいいんじゃない? っていうか、さっきやりたいって言ってたよね?」
「それはそうなんですけど……私人見知りで引っ込み思案で恥ずかしがりやだから……」
その性格なら、さっきの過剰なリアクションにも納得がいく。
かよちんは「そういう子」なのだ。そういう子故に悩むのだ。
「なるほど。自分に自信がないってわけか。……実は俺もそうなんだよね」
「そうなんですか?」
ここで自分語りに話を移動させる。
自分の中でも迷いがあったから、かよちんに良いアドバイスができない気がしたのだ。
「俺さ、本格的にμ'sのマネージャーとして誘われちゃったんだけど、忙しさを理由に断っちゃってさ」
「……」
かよちんは黙って俺の話を聞く。
「でもそれ以上に自信がない……。穂乃果の手助けをするって言っておきながら、ファーストライブでろくに集客もできなかった。そんな無能の俺にμ'sのマネージャーをやる資格なんてない。自信がないってそういうこと」
「はぁ……」
かよちんは共感したのか頷いて話を聞いてくれる。
「というわけで、実は俺も悩んでるんだ」
「私たち……本当にダメダメだぁ」
「まったくだ」
そうやってお互いため息を付いていると、見覚えのある人がこちらに向かってきた。
「2人してなに悩んでるのよ?」
何を隠そう、やってきたのは真姫ちゃんだった。
「……真姫ちゃん!」
「西木野さん!」
俺に続いてかよちんも声を上げた。
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