二人なら許せる遊び
朝ご飯を三人で食べて、のんびりと準備をしてから。セイバーと士郎が二人で出かけている。
彼女は相変わらずの黒スーツ姿だ。士郎もおしゃれはしていない。
デートと言うには些か固く。ただのお出かけと言うには、二人の雰囲気が柔らかい。不思議な感じだった。…絶対に悪い気分ではない。
「シロウ、楽しみですね」
お出かけするバスの席で、彼女はぱたぱたと脚を動かしている。とても楽しそうな笑顔を浮かべていた。子供みたいに無邪気だ。
「俺も楽しみだよ」
つられて士郎も、照れた様に微笑んでいる。その様子にセイバーも満足そうだった。
「今日はどこに行くんだ?」
目的地も聞かないまま出てきた。大河の追求というか、からかいがあったんだ。逃げるような外出だ。
「凜から教わったのですが、遊戯専用の場所があるのでしょう」
自慢げな彼女の様子を微笑ましく見て、続きを促す。
「専用?」
「ゲームセンターなるものがあるそうです」
とっても楽しそうな言葉である。余程、遊びに飢えていたらしい。
「ああ、成程」
さすがに聖杯の知識でも、完全には網羅していない。
というより、どう考えても戦争に遊びの知識は要らない。戦争中に遊びに来る陣営もいなかろうよ。
「遊んだ経験はありますか?」
ニコニコと笑うセイバーへ。ちょっとだけ照れながら答える。
「一応はな。慎二っていう奴に連れてこられた事がある」
慎二とはもう会えないだろうと、直感的に理解していた。
翳りのさした雰囲気に気付いたのか、殊更楽しそうに言うんだ。
「ふっふ~それなら今日も楽しめそうですね!」
嬉しそうに笑う彼女とならば、その楽しみも許せそうだった。
そうして、二人はゲームセンターへと遊びに来た。特徴的な賑やかな雰囲気と、人々が楽しそうに遊んでいる光景。わくわくと楽しめそうな。騒々しくも楽しげな空気が溢れている。
今にも楽しい事が始まりそうな場所だ。士郎はこういう場は苦手だけど、嫌いじゃなかった。
さて。二人でさっそく何を遊ぼうかと悩む彼へ。
「実は遊びたいモノがあるのですが」
おずおずとセイバーから提案があった。迷う理由もない。
「じゃあ一緒に遊ぼうか」
「這い! えへ、いっしょにですね!」
彼女に手を引かれながら、お目当ての物まで辿り着いた。
意外にも、いやここまでの付き合いを見れば自然な流れだったか。彼女に連れられてついたのは、車を模したゲームであった。
「公道は走れませんので」
なんてちょっと照れながら言って、彼女がゲームを始める。
始めてから数分で、セイバーが一気にテンションを上げていく。
「い~っやっほう!!」
とてつもなく豪快な運転で、心底から楽しそうに運転している。これが実際の道だったら、少々危険な運転だった。
丁寧さの仮面はどこへ消えたのだろう。セイバーの本質を感じられた。だからこそ、嬉しくて楽しめている。それにだ。
隣り合って座るタイプのおかげで、随分、彼女との距離が近く感じられた。良い匂いがする。時折触れる肩が柔らかい。
「…無防備すぎるだろ」
士郎の呟きは彼女に届かなかった。それだけ楽しんでいる様子だ。
車よりも心臓の方がうるさい。隣に座るセイバーを意識して、ゲームに集中出来てなかった。
「ここで突っ切る!! はっはっは!!」
そんな気持ちも知らずに、彼女は無邪気に楽しんでいた。その姿にもっと惹かれていく。熱に浮かされているようだ。
「ふい~…やはり車は良いですねえ」
一レースを終えて満足したのか、セイバーが話しかけてきた。
「シロウ、楽しいですね!」
まだまだ遊び足りないらしいけど、違うゲームも気になるのか。迷いつつ二人は車内に残っている。
「お、おう」
そう無防備に顔を寄せないでほしい。色々と男には事情があるのだ。立ち上がれなくなってしまう。良い匂いがする。朴念仁の彼とは言え、性欲や愛欲が欠如しているわけじゃない。純粋に照れているのだ。
「どうしました。疲れましたか?」
心配そうに首を傾げている。楽しい、はまだ慣れないけれど。彼女の寂しそうな顔は見たくない。笑顔で居てほしい。
「いや、まだまだ」
せっかく遊びに来たんだ。変に意識して、セイバーを悲しませたくない。何より楽しいのも事実であった。
彼女といっしょに遊んでいると、思い悩む気持ちが楽になるんだ。
「ふっふ~、シロウは楽しい事が苦手なようですからね」
腕組みをして胸を張りながら、ふふんと分かったような顔で言っている。可愛い。抱きしめたくなった。
「他でもない私がフォローしましょう」
二人で車から出ていく。まだ遊びに躊躇う士郎を見た。
そっと彼の手をセイバーが取って、手を引きながら歩み始めた。
「さあシロウ。遊び尽すのです。一気に行きますよ! ――ついて来れますか?」
太陽みたいに優しい、にこりとした笑顔だった。
応えるように、とてもぎこちないながらも微笑みを返しながら。
「ふ。セイバーの方こそ、俺についてくるんだな!」
「その意気です!」
二人がゲームセンターの奥へと進み始めた。楽しい遊びの時間の始まりだ。
彼女は相変わらずの黒スーツ姿だ。士郎もおしゃれはしていない。
デートと言うには些か固く。ただのお出かけと言うには、二人の雰囲気が柔らかい。不思議な感じだった。…絶対に悪い気分ではない。
「シロウ、楽しみですね」
お出かけするバスの席で、彼女はぱたぱたと脚を動かしている。とても楽しそうな笑顔を浮かべていた。子供みたいに無邪気だ。
「俺も楽しみだよ」
つられて士郎も、照れた様に微笑んでいる。その様子にセイバーも満足そうだった。
「今日はどこに行くんだ?」
目的地も聞かないまま出てきた。大河の追求というか、からかいがあったんだ。逃げるような外出だ。
「凜から教わったのですが、遊戯専用の場所があるのでしょう」
自慢げな彼女の様子を微笑ましく見て、続きを促す。
「専用?」
「ゲームセンターなるものがあるそうです」
とっても楽しそうな言葉である。余程、遊びに飢えていたらしい。
「ああ、成程」
さすがに聖杯の知識でも、完全には網羅していない。
というより、どう考えても戦争に遊びの知識は要らない。戦争中に遊びに来る陣営もいなかろうよ。
「遊んだ経験はありますか?」
ニコニコと笑うセイバーへ。ちょっとだけ照れながら答える。
「一応はな。慎二っていう奴に連れてこられた事がある」
慎二とはもう会えないだろうと、直感的に理解していた。
翳りのさした雰囲気に気付いたのか、殊更楽しそうに言うんだ。
「ふっふ~それなら今日も楽しめそうですね!」
嬉しそうに笑う彼女とならば、その楽しみも許せそうだった。
そうして、二人はゲームセンターへと遊びに来た。特徴的な賑やかな雰囲気と、人々が楽しそうに遊んでいる光景。わくわくと楽しめそうな。騒々しくも楽しげな空気が溢れている。
今にも楽しい事が始まりそうな場所だ。士郎はこういう場は苦手だけど、嫌いじゃなかった。
さて。二人でさっそく何を遊ぼうかと悩む彼へ。
「実は遊びたいモノがあるのですが」
おずおずとセイバーから提案があった。迷う理由もない。
「じゃあ一緒に遊ぼうか」
「這い! えへ、いっしょにですね!」
彼女に手を引かれながら、お目当ての物まで辿り着いた。
意外にも、いやここまでの付き合いを見れば自然な流れだったか。彼女に連れられてついたのは、車を模したゲームであった。
「公道は走れませんので」
なんてちょっと照れながら言って、彼女がゲームを始める。
始めてから数分で、セイバーが一気にテンションを上げていく。
「い~っやっほう!!」
とてつもなく豪快な運転で、心底から楽しそうに運転している。これが実際の道だったら、少々危険な運転だった。
丁寧さの仮面はどこへ消えたのだろう。セイバーの本質を感じられた。だからこそ、嬉しくて楽しめている。それにだ。
隣り合って座るタイプのおかげで、随分、彼女との距離が近く感じられた。良い匂いがする。時折触れる肩が柔らかい。
「…無防備すぎるだろ」
士郎の呟きは彼女に届かなかった。それだけ楽しんでいる様子だ。
車よりも心臓の方がうるさい。隣に座るセイバーを意識して、ゲームに集中出来てなかった。
「ここで突っ切る!! はっはっは!!」
そんな気持ちも知らずに、彼女は無邪気に楽しんでいた。その姿にもっと惹かれていく。熱に浮かされているようだ。
「ふい~…やはり車は良いですねえ」
一レースを終えて満足したのか、セイバーが話しかけてきた。
「シロウ、楽しいですね!」
まだまだ遊び足りないらしいけど、違うゲームも気になるのか。迷いつつ二人は車内に残っている。
「お、おう」
そう無防備に顔を寄せないでほしい。色々と男には事情があるのだ。立ち上がれなくなってしまう。良い匂いがする。朴念仁の彼とは言え、性欲や愛欲が欠如しているわけじゃない。純粋に照れているのだ。
「どうしました。疲れましたか?」
心配そうに首を傾げている。楽しい、はまだ慣れないけれど。彼女の寂しそうな顔は見たくない。笑顔で居てほしい。
「いや、まだまだ」
せっかく遊びに来たんだ。変に意識して、セイバーを悲しませたくない。何より楽しいのも事実であった。
彼女といっしょに遊んでいると、思い悩む気持ちが楽になるんだ。
「ふっふ~、シロウは楽しい事が苦手なようですからね」
腕組みをして胸を張りながら、ふふんと分かったような顔で言っている。可愛い。抱きしめたくなった。
「他でもない私がフォローしましょう」
二人で車から出ていく。まだ遊びに躊躇う士郎を見た。
そっと彼の手をセイバーが取って、手を引きながら歩み始めた。
「さあシロウ。遊び尽すのです。一気に行きますよ! ――ついて来れますか?」
太陽みたいに優しい、にこりとした笑顔だった。
応えるように、とてもぎこちないながらも微笑みを返しながら。
「ふ。セイバーの方こそ、俺についてくるんだな!」
「その意気です!」
二人がゲームセンターの奥へと進み始めた。楽しい遊びの時間の始まりだ。
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