第3話
そのまま廊下を歩き、階段の手前で立ち止まってんーっと背筋を伸ばす。緊張があったせいか、身体がやけに疲れた気がするなあ。
「さて、っと」
俺が入学を希望する大帝国学園は、やっぱり希望者多数。
予想していたことだから、驚きも落ち込みもしない。
ただ、現時点で入学可能数を超えているということはだ。入学希望者はかなりの人数いるということを示している。
入学可能数があるということは、適性テストの難易度は入学希望者が増えるにつれ上がっていくはず。
おそらくかなりの難問が出題されるのだろうと思い、一応準備はしてきた。
大学入試レベルの問題ならば、十問に一問は答えられる。
「……うしっ!」
自信は少なからずある。
油断もしない。
俺は、俺の目的を達成するためにどうしても大帝国学園に入学しないといけないから。
絶対に、絶対に適性テストを突破してやる。
「……っし! 行くか!」
ぱしん、と頬を叩いて気合を入れてから、俺は階段をゆっくりと登り始めた。
待っていやがれ! 大帝国学園!
◇ ◇ ◇ ◇
長かった入学式も終わった(・・・・・・・・)。
適性テスト翌日がすぐに入学式なんて、ちょっと過密日程過ぎる気がしたけど、文句を言っても仕方がない。
そんなわけで入学式を終えた俺は、所属することになった一年一組の教室に向かう。
教室に入り、空いている机の一つに座って待っていると、ガラガラと引き戸特有の音を鳴らしながら教室に一人の少女が入ってきた。先生かな?
「そ、それじゃあみなさん、席についてくださーい」
違った。小学生だった。
ふわふわとした印象を受ける茶髪の髪、低身長に化粧っ気のない童顔。
その容姿にまったくと言っていいほど合わない黒色のスーツを身に着けながら、少女は教壇の前に立つ。
『なんだ?』
『なんで小学生が高校に紛れ込んでいるんだ?』
『きゃー! 可愛いーっ!』
『お、お持ち帰りしたいーっ!』
『お、俺も』
『わ、我輩も……』
『おい! このクラスにロリコンが二人いるぞーっ!』
そんな会話が、教室内のいたるところから聞こえてくる。ロリコンの二人とはじっくりと会話する必要がありそうだ。色々な意味で。コレクションの交換とか――なんでもないよ!
「ええーっと、まずはわたしの自己紹介からしますねー」
言って、白のチョークを手に取り少女の背後にある黒板に流れるように文字を書いていく。……身長の関係か、位置はかなり下だったけど。
「はい! わたしの名前は長宗我部夢(ちょうそかべゆめ)って言います。この一年一組の担任になりましたぁ。これからよろしくお願いしますね」
にっこり笑顔でそう告げる少女、夢ちゃんこと長宗我部先生。
そんな長宗我部先生の言葉に、クラスメイトたちがざわざわしだす。
『え? 今『担任』って言いました?』
『違うだろ。『タンメン』って言ったんだろ?』
『一緒にタンメン食べに行きたいなぁー』
『わ、我輩のメンマを咥えさせて――』
『『『『『『『 ぜったい言わせねえよっ! 』』』』』』』
クラスメイトのほぼ全員が一人の男子生徒にツッコみを入れる。
うん。出会って間もないけど、息はぴったりみたいだ。いいクラスになれそうだな。
「タンメンじゃないのですよ! 担任、です! わたしが、このクラスの担任なんですよ!」
『『『『『『『 え、えぇぇぇええええええええええええええっ!? 』』』』』』』
クラスメイト全員の驚愕の叫び。
いや、全員じゃないか。数人は驚いていないし。もちろん、俺もその中の一人だ。
なぜならば、長宗我部先生は昨日の適性テストで面接官をやっていたからだ。言っておくけどおじさんの方じゃないよ? サポートしていた少女の方だよ?
多分、このクラスメイトの中にもあの教室で面接を受けた人がいるのだろう。もしかしたら感情を失っているエンジェロイドが混ざっている可能性も無きにしも――ねえな。
そんな妄想を膨らませようかとしているうちに、我が学友たちはこの見た目小学生が教師であることに納得したようで、さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。
「ではではみなさん! まずは自己紹介をしてみましょーっ! 自己紹介大会ですねっ!打ち解けるには相手を知らないとだめだめですよっ! それではまずはあなたから!」
長宗我部先生が廊下側の最前列の生徒を指差す。差された生徒は一瞬驚いたけど、すんなりと立ち上がって自己紹介を始めた。ある程度予想していたらしい。
さて、ここで一つ考えないといけないことがある。
まず、俺の席は教室中央の最後列。自己紹介まである程度の時間はある。
ここで考えないといけないのは、どのような自己紹介をするかだ。
人間、大事なのは第一印象。ここで女子生徒に「あ、あの人ちょっとカッコいいかも……」と思わせれば、俺の高校生活は青春の香り溢れるものになるだろう。
逆にここで気持ち悪い自己紹介をしてしまうと、高校生活の三年間、一人で便所飯しながら過ごさないといけなくなるかもしれない。
さあ、どうする? あえて人気者になるために一発ボケをかますのも手ではあるけど……それだと「えー、孔明君っていい人だけど彼氏には無理ー!」ってことになりかねない。
もしくは、自己紹介王道ネタの、「ただの人間には興味ありません。もしこの中に、宇宙人――」ってのをやるか?
「さて、っと」
俺が入学を希望する大帝国学園は、やっぱり希望者多数。
予想していたことだから、驚きも落ち込みもしない。
ただ、現時点で入学可能数を超えているということはだ。入学希望者はかなりの人数いるということを示している。
入学可能数があるということは、適性テストの難易度は入学希望者が増えるにつれ上がっていくはず。
おそらくかなりの難問が出題されるのだろうと思い、一応準備はしてきた。
大学入試レベルの問題ならば、十問に一問は答えられる。
「……うしっ!」
自信は少なからずある。
油断もしない。
俺は、俺の目的を達成するためにどうしても大帝国学園に入学しないといけないから。
絶対に、絶対に適性テストを突破してやる。
「……っし! 行くか!」
ぱしん、と頬を叩いて気合を入れてから、俺は階段をゆっくりと登り始めた。
待っていやがれ! 大帝国学園!
◇ ◇ ◇ ◇
長かった入学式も終わった(・・・・・・・・)。
適性テスト翌日がすぐに入学式なんて、ちょっと過密日程過ぎる気がしたけど、文句を言っても仕方がない。
そんなわけで入学式を終えた俺は、所属することになった一年一組の教室に向かう。
教室に入り、空いている机の一つに座って待っていると、ガラガラと引き戸特有の音を鳴らしながら教室に一人の少女が入ってきた。先生かな?
「そ、それじゃあみなさん、席についてくださーい」
違った。小学生だった。
ふわふわとした印象を受ける茶髪の髪、低身長に化粧っ気のない童顔。
その容姿にまったくと言っていいほど合わない黒色のスーツを身に着けながら、少女は教壇の前に立つ。
『なんだ?』
『なんで小学生が高校に紛れ込んでいるんだ?』
『きゃー! 可愛いーっ!』
『お、お持ち帰りしたいーっ!』
『お、俺も』
『わ、我輩も……』
『おい! このクラスにロリコンが二人いるぞーっ!』
そんな会話が、教室内のいたるところから聞こえてくる。ロリコンの二人とはじっくりと会話する必要がありそうだ。色々な意味で。コレクションの交換とか――なんでもないよ!
「ええーっと、まずはわたしの自己紹介からしますねー」
言って、白のチョークを手に取り少女の背後にある黒板に流れるように文字を書いていく。……身長の関係か、位置はかなり下だったけど。
「はい! わたしの名前は長宗我部夢(ちょうそかべゆめ)って言います。この一年一組の担任になりましたぁ。これからよろしくお願いしますね」
にっこり笑顔でそう告げる少女、夢ちゃんこと長宗我部先生。
そんな長宗我部先生の言葉に、クラスメイトたちがざわざわしだす。
『え? 今『担任』って言いました?』
『違うだろ。『タンメン』って言ったんだろ?』
『一緒にタンメン食べに行きたいなぁー』
『わ、我輩のメンマを咥えさせて――』
『『『『『『『 ぜったい言わせねえよっ! 』』』』』』』
クラスメイトのほぼ全員が一人の男子生徒にツッコみを入れる。
うん。出会って間もないけど、息はぴったりみたいだ。いいクラスになれそうだな。
「タンメンじゃないのですよ! 担任、です! わたしが、このクラスの担任なんですよ!」
『『『『『『『 え、えぇぇぇええええええええええええええっ!? 』』』』』』』
クラスメイト全員の驚愕の叫び。
いや、全員じゃないか。数人は驚いていないし。もちろん、俺もその中の一人だ。
なぜならば、長宗我部先生は昨日の適性テストで面接官をやっていたからだ。言っておくけどおじさんの方じゃないよ? サポートしていた少女の方だよ?
多分、このクラスメイトの中にもあの教室で面接を受けた人がいるのだろう。もしかしたら感情を失っているエンジェロイドが混ざっている可能性も無きにしも――ねえな。
そんな妄想を膨らませようかとしているうちに、我が学友たちはこの見た目小学生が教師であることに納得したようで、さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。
「ではではみなさん! まずは自己紹介をしてみましょーっ! 自己紹介大会ですねっ!打ち解けるには相手を知らないとだめだめですよっ! それではまずはあなたから!」
長宗我部先生が廊下側の最前列の生徒を指差す。差された生徒は一瞬驚いたけど、すんなりと立ち上がって自己紹介を始めた。ある程度予想していたらしい。
さて、ここで一つ考えないといけないことがある。
まず、俺の席は教室中央の最後列。自己紹介まである程度の時間はある。
ここで考えないといけないのは、どのような自己紹介をするかだ。
人間、大事なのは第一印象。ここで女子生徒に「あ、あの人ちょっとカッコいいかも……」と思わせれば、俺の高校生活は青春の香り溢れるものになるだろう。
逆にここで気持ち悪い自己紹介をしてしまうと、高校生活の三年間、一人で便所飯しながら過ごさないといけなくなるかもしれない。
さあ、どうする? あえて人気者になるために一発ボケをかますのも手ではあるけど……それだと「えー、孔明君っていい人だけど彼氏には無理ー!」ってことになりかねない。
もしくは、自己紹介王道ネタの、「ただの人間には興味ありません。もしこの中に、宇宙人――」ってのをやるか?
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