第18話「亜里沙、希望を抱きしめて」
ここはことりの家。
海未はここでさっきの出来事について問い正そうとしていた。
「ことり、なんでさっきあんなことを言ったんですか?」
「あんなこと?」
ことりはしらばっくれた態度を取る。海未はいらだちを覚えた。
「竜のことを知らない素振りなんかして……それでも幼馴染ですか」
「ことり、そんなこと言ったっけ?」
まるでさっきの出来事がなかったような物言い。海未はこのいい加減な態度にとうとう堪忍袋の緒が切れた。
「とぼけないでください!」
「ことり、そんなひどいこと言ってないよ。言うわけないじゃん!」
ことりは頑なに否定する。その言葉に嘘偽りはないようだった。それだけ真剣な目で、真剣な物言いをしていた。
「……っ。まぁ、いいでしょう」
海未は諦めた。きっと聞き間違いであったのだと強く胸に言い聞かせた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。
真姫の家に集合した1年生組。真姫たちはどうにかしなきゃという使命感を感じていた。
「それでどうする? 生徒会長をどうにかしないといけない気がするけど」
花陽も凛も気持ちは同じだった。なんとかしないと生徒会長の思うままである。
「そうだよねぇ。竜さんがいないと私たち何もできないし……」
「そうだ、凛にいい考えがあるにゃ。それはね……ゴニョゴニョ」
凛は二人の耳元でアイデアを囁いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして、3人は生徒会室の前にやってきたのだった。
花陽は不安そうに真姫に言葉をこぼす。
「ホントにやるのぉ?」
真姫は何を言っているんだという表情で花陽を見る。
「人に奪われたものを取り返すのに罪悪感なんていらないわ。行くわよ!」
「突撃にゃ~っ!」
しかし、どこからともなく声が響いた。3人のものではない。
「なにしよるん?」
副会長、東條希の声だった。その圧倒的な威圧感に凛たちは怖気づいてしまった。
「げげっ、副会長」
「なに、しよるん?」
この威圧感には凛も花陽も、そしてさっきまで調子付いていた真姫でさえも逆らえない様子。
真姫は震えた声で希に言う。
「会長に取られた竜さんの許可証を取り返しに……」
「それで生徒会室に侵入を?」
「ま、まぁ、そんなところです」
真姫はついつい敬語で話をしてしまう。
「ふ~ん、それじゃあうちがかけ合ったるわ。えりちにそこまでやられるとうちも困るからなぁ」
希はにっこりと笑った。その瞬間、今まであった威圧感がすっと消えてなくなったような気がした。
威圧感がなくなったら真姫はいつもどおりの生意気な言葉遣いで話し始めた。
「なんであなたが困るの?」
真姫の疑問に答えるように凛は隣でつぶやく。
「きっとμ'sのファンなんだよ」
「ま、そういうことやと思っといてや」
希はその豊満な胸をどんと叩く。これ以上にない信頼感が会った。
「それじゃあ、お願いできますか?」
「そりゃもう、ばっちり!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところ変わってスクールアイドルショップ。
俺は今までやっていた仕事がなくなり、暇をこじらせていた。
正直、昔のように穂乃果ママの手伝いをすればいいのかもしれないが、あの手伝いというのも実はそんなになかったりする。
毎日のように買い物に行くわけでなし、お店は穂乃果の両親で回せるくらいであるし。
そういうわけで、俺は暇をこじらせていたのでスクールアイドルショップで物色していた。
すると、横からよく知る顔がやってきた。
「あ、竜さん。こんにちは!」
亜里沙ちゃんだ。
「おぅ、亜里沙ちゃん。久しぶり」
俺が会釈をすると亜里沙ちゃんはえへへと笑ってみせる。とってもかわいい。
「竜さんもグッズ買いに来たんですか?」
「まぁね。それと、マネージャーとしてこういうトレンドはチェックしとかないと」
学校に行けなくともこうやってトレンドをチェックしたりしてμ'sを支えていけるなら、そういう思いもあった。
もちろん、こんなことは亜里沙ちゃんには口が裂けても言えないのだが。
「そうなんですね。亜里沙は海未さんのグッズを買いに来たんです。ほら!」
亜里沙ちゃんは特大サイズの海未ちゃんのクッションを抱えてみせた。直径30センチくらいはある。
「今日入荷だったんです。一生の宝にしたいくらい楽しみだったんです!」
亜里沙ちゃんはそう言ってはにかむ。よほど海未ちゃんのことが好きなんだなぁ。
「そんなに楽しみだったのかい?」
「だって、日本に来たばっかりで心細かった亜里沙を勇気づけてくれたのがμ'sだったんですよ? 楽しみじゃないわけないじゃないですか」
勇気づけてくれる存在。作り手側にいるとついつい分からなくなってしまうけれど、μ'sに勇気づけられる人もちゃんとこうしているんだよな。
気づいたら亜里沙ちゃんは海未ちゃんのクッションを抱えてレジに向かっていた。
しばらくして会計を済ませて戻ってきた亜里沙ちゃんは、俺の顔をじっと見て心配そうな目をした。
「元気ないみたいですけど、何かあったんですか?」
実は音乃木坂に入るための許可証を奪われました、なんてなことを亜里沙ちゃんの前で堂々と言えるわけがない。
俺は何もなかったような素振りを見せた。
「いいや、別に。気にしないで」
「亜里沙にできることなら何でも言ってくださいね! μ'sの大ファンですから!」
「ありがとな、亜里沙ちゃん」
俺は感慨深くなってついつい亜里沙ちゃんの頭を撫でる。
亜里沙ちゃんは嬉しそうにしていた。
「えへへ……」
海未はここでさっきの出来事について問い正そうとしていた。
「ことり、なんでさっきあんなことを言ったんですか?」
「あんなこと?」
ことりはしらばっくれた態度を取る。海未はいらだちを覚えた。
「竜のことを知らない素振りなんかして……それでも幼馴染ですか」
「ことり、そんなこと言ったっけ?」
まるでさっきの出来事がなかったような物言い。海未はこのいい加減な態度にとうとう堪忍袋の緒が切れた。
「とぼけないでください!」
「ことり、そんなひどいこと言ってないよ。言うわけないじゃん!」
ことりは頑なに否定する。その言葉に嘘偽りはないようだった。それだけ真剣な目で、真剣な物言いをしていた。
「……っ。まぁ、いいでしょう」
海未は諦めた。きっと聞き間違いであったのだと強く胸に言い聞かせた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。
真姫の家に集合した1年生組。真姫たちはどうにかしなきゃという使命感を感じていた。
「それでどうする? 生徒会長をどうにかしないといけない気がするけど」
花陽も凛も気持ちは同じだった。なんとかしないと生徒会長の思うままである。
「そうだよねぇ。竜さんがいないと私たち何もできないし……」
「そうだ、凛にいい考えがあるにゃ。それはね……ゴニョゴニョ」
凛は二人の耳元でアイデアを囁いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そして、3人は生徒会室の前にやってきたのだった。
花陽は不安そうに真姫に言葉をこぼす。
「ホントにやるのぉ?」
真姫は何を言っているんだという表情で花陽を見る。
「人に奪われたものを取り返すのに罪悪感なんていらないわ。行くわよ!」
「突撃にゃ~っ!」
しかし、どこからともなく声が響いた。3人のものではない。
「なにしよるん?」
副会長、東條希の声だった。その圧倒的な威圧感に凛たちは怖気づいてしまった。
「げげっ、副会長」
「なに、しよるん?」
この威圧感には凛も花陽も、そしてさっきまで調子付いていた真姫でさえも逆らえない様子。
真姫は震えた声で希に言う。
「会長に取られた竜さんの許可証を取り返しに……」
「それで生徒会室に侵入を?」
「ま、まぁ、そんなところです」
真姫はついつい敬語で話をしてしまう。
「ふ~ん、それじゃあうちがかけ合ったるわ。えりちにそこまでやられるとうちも困るからなぁ」
希はにっこりと笑った。その瞬間、今まであった威圧感がすっと消えてなくなったような気がした。
威圧感がなくなったら真姫はいつもどおりの生意気な言葉遣いで話し始めた。
「なんであなたが困るの?」
真姫の疑問に答えるように凛は隣でつぶやく。
「きっとμ'sのファンなんだよ」
「ま、そういうことやと思っといてや」
希はその豊満な胸をどんと叩く。これ以上にない信頼感が会った。
「それじゃあ、お願いできますか?」
「そりゃもう、ばっちり!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところ変わってスクールアイドルショップ。
俺は今までやっていた仕事がなくなり、暇をこじらせていた。
正直、昔のように穂乃果ママの手伝いをすればいいのかもしれないが、あの手伝いというのも実はそんなになかったりする。
毎日のように買い物に行くわけでなし、お店は穂乃果の両親で回せるくらいであるし。
そういうわけで、俺は暇をこじらせていたのでスクールアイドルショップで物色していた。
すると、横からよく知る顔がやってきた。
「あ、竜さん。こんにちは!」
亜里沙ちゃんだ。
「おぅ、亜里沙ちゃん。久しぶり」
俺が会釈をすると亜里沙ちゃんはえへへと笑ってみせる。とってもかわいい。
「竜さんもグッズ買いに来たんですか?」
「まぁね。それと、マネージャーとしてこういうトレンドはチェックしとかないと」
学校に行けなくともこうやってトレンドをチェックしたりしてμ'sを支えていけるなら、そういう思いもあった。
もちろん、こんなことは亜里沙ちゃんには口が裂けても言えないのだが。
「そうなんですね。亜里沙は海未さんのグッズを買いに来たんです。ほら!」
亜里沙ちゃんは特大サイズの海未ちゃんのクッションを抱えてみせた。直径30センチくらいはある。
「今日入荷だったんです。一生の宝にしたいくらい楽しみだったんです!」
亜里沙ちゃんはそう言ってはにかむ。よほど海未ちゃんのことが好きなんだなぁ。
「そんなに楽しみだったのかい?」
「だって、日本に来たばっかりで心細かった亜里沙を勇気づけてくれたのがμ'sだったんですよ? 楽しみじゃないわけないじゃないですか」
勇気づけてくれる存在。作り手側にいるとついつい分からなくなってしまうけれど、μ'sに勇気づけられる人もちゃんとこうしているんだよな。
気づいたら亜里沙ちゃんは海未ちゃんのクッションを抱えてレジに向かっていた。
しばらくして会計を済ませて戻ってきた亜里沙ちゃんは、俺の顔をじっと見て心配そうな目をした。
「元気ないみたいですけど、何かあったんですか?」
実は音乃木坂に入るための許可証を奪われました、なんてなことを亜里沙ちゃんの前で堂々と言えるわけがない。
俺は何もなかったような素振りを見せた。
「いいや、別に。気にしないで」
「亜里沙にできることなら何でも言ってくださいね! μ'sの大ファンですから!」
「ありがとな、亜里沙ちゃん」
俺は感慨深くなってついつい亜里沙ちゃんの頭を撫でる。
亜里沙ちゃんは嬉しそうにしていた。
「えへへ……」
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