第09話「にこ、私は心の壁を守りたいの」
翌日、2年生教室にて。
「そういえばさ。ラブライブ!にμ'sのライブ映像が流れてたんだ」
俺はふと思い出したように言った。
それに対して穂乃果が返す。
「あれ? あの動画って竜くんが上げてたんだよね?」
穂乃果の言うことは分かる。確かに俺も動画を上げたんだ。でもそれとは違う。
「いや、それじゃない。別の角度から撮られてて、竜のより画質が良いんだ。それ故にそっちの再生数のほうが上がっててだな……誰か知らないか?」
そんな言葉に皆が返す。
「私は知りませんよ?」
「ことりも」
「知らないわね」
「知らないにゃ……」
「知らないよ」
「穂乃果も同じく」
そりゃそうだよな。IT関連全部俺が一任してんだもの。知らないのも無理はないよ。
「やっぱりそうか……。まぁ、誰であれμ'sの許可なく勝手に上げてる人がいるんだ。……絶対に探し出してやる」
俺はそう心に決めた。あわよくばμ’sの専属カメラマンにしてやる。
そんな話をよそに、穂乃果が話を切り出す。
「それはそうと、昨日あれから矢澤先輩に話つけるの忘れちゃってたよね」
「そういえばそんなことあったな。俺、凛ちゃんのことで頭いっぱいだったよ」
「竜くん……」
俺の言葉に凛ちゃんが顔を赤くする。やめてくれないか。そういう意味じゃないんだ。
「それでさ! 今からもう一度矢澤先輩のところに行こうと思うんだけど」
穂乃果はどうやらにこと決着をつけようと思っているらしい。しかし、その話は俺はあまり乗れない。
「その話なんだがさ、俺一人で行こうと思ってるんだ」
その言葉に皆が驚く。まっさきに海未が反応した。
「何故ですか?」
穂乃果も呼応する。
「そうだよ! 皆で行ったほうが良いって!」
「悪いが穂乃果たちは練習をしていてくれ。……それもとびきりキツい練習をな。海未ちゃん、キレのあるやつ頼みます」
「は、はい……。でも何故?」
「俺にいい考えがあるんだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところ変わってアイドル研究部部室。俺は一人でにこと話をつけることにしたのだ。
「ごめんくださーい」
俺の呼び声ににこは反応してドアを開けてくれた。
「アンタ……確か」
「μ'sのマネージャーだよん」
にこは俺の登場にため息を付いた。
「何度来たって無駄よ。私はμ'sなんて認めないんだから」
「なるほどねぇ……でも、俺は矢澤先輩を納得させられるカードを持っているんだな、これが」
俺はそうニヤリと笑った。
にこの顔が若干引きつる。前回凛を手玉に取ったことが気に触っているのか、なんだかそういう感じ。
「へぇ……どんなのかしらね?」
「別に竜は矢澤先輩にここから立ち退けって言ってるわけじゃないんですよ。むしろ、μ'sのメンバーになっていただきたい」
俺はそう大胆に話を切り出した。
にこは呆れた顔でこちらを見る。
「……どういう風の吹き回し? 私はアンタを襲うほどμ'sが嫌いなのよ?」
「それってあれですよね? 好きな子にイタズラしたくなる感覚」
俺の言葉ににこは苛立ちを覚える。
「バカにしないでっ! 私はそんなんじゃないわよ!」
ここで俺はカードを切る。まずは希先輩から聞いたアレだ。
「それはそうと……矢澤先輩、昔スクールアイドルやってたんですってね……」
にこは驚いた表情でこちらを見る。ただし、言葉はその驚きを必死で隠そうとしていた。
「へぇ……よく知ってるじゃない。どこでそれを?」
「親切な巫女さんに聞いたんですよ。」
にこは納得したようだ。親切な巫女さんで伝わるのか。
「巫女……希か」
「よくご存知で。知り合いですか?」
「知り合い……まぁ、そういうことになるわね」
「それはそうとして、あなたがμ'sを嫌うのはμ'sが自分のスクールアイドルへの理想と大きくかけ離れた未熟な存在であるから……もしくは」
「……」
「成功の素質を抱えていて……妬ましく思っているのか」
これが次のカード。内容は「嫉妬」。相手の劣情を煽ることでなにか吐き出そうという魂胆だ。
「分かったようなことを言って……!!」
ほら、当然にこは食いつく。
はじめから分かってたんだ。この人は嫉妬心が強すぎる。良くも悪くも。
「もしかして図星でしたか?」
「えぇ、そうよ。どっちもあるのよ。この際だから言うわ。確かに私の理想としているスクールアイドルとは大きくかけ離れた強い力がある反面、アイドルとして決定的に足りないものもあるのよ! だから、あんなのをアイドルとして認めたくないの」
「だったら何故それをμ'sに教えてあげないんです? 俺を襲撃するよりよっぽど有益ですよ」
「……」
一度白熱した議論がかわされたものの、一度俺が口を開けば黙ってしまった。もっと頑張れよ。
でもまぁ、向こうの分が悪いことにうすうす気付き始めたのだろう。そろそろチェックメイトにかかろう。
「それなら、いっそのことμ'sのメンバーになるのはどうでしょうか?」
なんとしてでもにこをμ'sに取り込む。にこをμ'sのものにしてやるんだ。
「……何馬鹿なこと言ってんのよ」
「今入ればあなたが一番の年長者です。その立場を利用してアイドルとはなんたるかを叩き込んでやるんですよ」
俺はにこがμ'sに入ることのメリットを力強く語る。わかってくれ、にこ。
「そんなことしたら……またあの時みたいに」
しかし、にこの様子はおかしい。なにか引っかかることがあったのか。
「あの時?」
「この機会だから教えてあげるわ……私の過去、スクールアイドルだった時の矢澤にこの話を」
にこはそう言うと、過去の話を始めた。
「そういえばさ。ラブライブ!にμ'sのライブ映像が流れてたんだ」
俺はふと思い出したように言った。
それに対して穂乃果が返す。
「あれ? あの動画って竜くんが上げてたんだよね?」
穂乃果の言うことは分かる。確かに俺も動画を上げたんだ。でもそれとは違う。
「いや、それじゃない。別の角度から撮られてて、竜のより画質が良いんだ。それ故にそっちの再生数のほうが上がっててだな……誰か知らないか?」
そんな言葉に皆が返す。
「私は知りませんよ?」
「ことりも」
「知らないわね」
「知らないにゃ……」
「知らないよ」
「穂乃果も同じく」
そりゃそうだよな。IT関連全部俺が一任してんだもの。知らないのも無理はないよ。
「やっぱりそうか……。まぁ、誰であれμ'sの許可なく勝手に上げてる人がいるんだ。……絶対に探し出してやる」
俺はそう心に決めた。あわよくばμ’sの専属カメラマンにしてやる。
そんな話をよそに、穂乃果が話を切り出す。
「それはそうと、昨日あれから矢澤先輩に話つけるの忘れちゃってたよね」
「そういえばそんなことあったな。俺、凛ちゃんのことで頭いっぱいだったよ」
「竜くん……」
俺の言葉に凛ちゃんが顔を赤くする。やめてくれないか。そういう意味じゃないんだ。
「それでさ! 今からもう一度矢澤先輩のところに行こうと思うんだけど」
穂乃果はどうやらにこと決着をつけようと思っているらしい。しかし、その話は俺はあまり乗れない。
「その話なんだがさ、俺一人で行こうと思ってるんだ」
その言葉に皆が驚く。まっさきに海未が反応した。
「何故ですか?」
穂乃果も呼応する。
「そうだよ! 皆で行ったほうが良いって!」
「悪いが穂乃果たちは練習をしていてくれ。……それもとびきりキツい練習をな。海未ちゃん、キレのあるやつ頼みます」
「は、はい……。でも何故?」
「俺にいい考えがあるんだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところ変わってアイドル研究部部室。俺は一人でにこと話をつけることにしたのだ。
「ごめんくださーい」
俺の呼び声ににこは反応してドアを開けてくれた。
「アンタ……確か」
「μ'sのマネージャーだよん」
にこは俺の登場にため息を付いた。
「何度来たって無駄よ。私はμ'sなんて認めないんだから」
「なるほどねぇ……でも、俺は矢澤先輩を納得させられるカードを持っているんだな、これが」
俺はそうニヤリと笑った。
にこの顔が若干引きつる。前回凛を手玉に取ったことが気に触っているのか、なんだかそういう感じ。
「へぇ……どんなのかしらね?」
「別に竜は矢澤先輩にここから立ち退けって言ってるわけじゃないんですよ。むしろ、μ'sのメンバーになっていただきたい」
俺はそう大胆に話を切り出した。
にこは呆れた顔でこちらを見る。
「……どういう風の吹き回し? 私はアンタを襲うほどμ'sが嫌いなのよ?」
「それってあれですよね? 好きな子にイタズラしたくなる感覚」
俺の言葉ににこは苛立ちを覚える。
「バカにしないでっ! 私はそんなんじゃないわよ!」
ここで俺はカードを切る。まずは希先輩から聞いたアレだ。
「それはそうと……矢澤先輩、昔スクールアイドルやってたんですってね……」
にこは驚いた表情でこちらを見る。ただし、言葉はその驚きを必死で隠そうとしていた。
「へぇ……よく知ってるじゃない。どこでそれを?」
「親切な巫女さんに聞いたんですよ。」
にこは納得したようだ。親切な巫女さんで伝わるのか。
「巫女……希か」
「よくご存知で。知り合いですか?」
「知り合い……まぁ、そういうことになるわね」
「それはそうとして、あなたがμ'sを嫌うのはμ'sが自分のスクールアイドルへの理想と大きくかけ離れた未熟な存在であるから……もしくは」
「……」
「成功の素質を抱えていて……妬ましく思っているのか」
これが次のカード。内容は「嫉妬」。相手の劣情を煽ることでなにか吐き出そうという魂胆だ。
「分かったようなことを言って……!!」
ほら、当然にこは食いつく。
はじめから分かってたんだ。この人は嫉妬心が強すぎる。良くも悪くも。
「もしかして図星でしたか?」
「えぇ、そうよ。どっちもあるのよ。この際だから言うわ。確かに私の理想としているスクールアイドルとは大きくかけ離れた強い力がある反面、アイドルとして決定的に足りないものもあるのよ! だから、あんなのをアイドルとして認めたくないの」
「だったら何故それをμ'sに教えてあげないんです? 俺を襲撃するよりよっぽど有益ですよ」
「……」
一度白熱した議論がかわされたものの、一度俺が口を開けば黙ってしまった。もっと頑張れよ。
でもまぁ、向こうの分が悪いことにうすうす気付き始めたのだろう。そろそろチェックメイトにかかろう。
「それなら、いっそのことμ'sのメンバーになるのはどうでしょうか?」
なんとしてでもにこをμ'sに取り込む。にこをμ'sのものにしてやるんだ。
「……何馬鹿なこと言ってんのよ」
「今入ればあなたが一番の年長者です。その立場を利用してアイドルとはなんたるかを叩き込んでやるんですよ」
俺はにこがμ'sに入ることのメリットを力強く語る。わかってくれ、にこ。
「そんなことしたら……またあの時みたいに」
しかし、にこの様子はおかしい。なにか引っかかることがあったのか。
「あの時?」
「この機会だから教えてあげるわ……私の過去、スクールアイドルだった時の矢澤にこの話を」
にこはそう言うと、過去の話を始めた。
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