スタメン発表
スタメンを試合開始ギリギリまで伏せるという、一歩間違えれば混乱を招きかねない方針をとった古株監督代理が、選手達の顔を見回した。
ゴクリ、と息を飲む少年達。
そして音無と大谷によって、ホワイトボードにメンバー表が貼り出された。
「俺とシャドウのツートップか。」
自身がスタメンであること安堵したらしい染岡が、隣でメンバー表を覗き込むシャドウに声を掛けた。
その声には、豪炎寺と手合せできる喜びが滲んでいる。シャドウもまた、嘗ての雷門のエースストライカーと対決できることに、武者震いしている。
フォーメーションはお馴染みのF‐ベーシック(4-4-2)。2トップは染岡とシャドウ、GKは円堂だ。
DFは左サイドバックに風丸、右サイドバックに栗松、センターバックは左が壁山、右に東。
そしてMFは…右サイドハーフに一斗、左はマックス。ダブルボランチは左から少林、宍戸の順である。
ベンチは影野、飛鷹、五郎、半田、一之瀬の5人。障害を抱えた一之瀬はベンチスタートを覚悟していたようだが、他4人は少し残念そうである。
「控えじゃからといって志気を下げるなよ。」
浮かない顔の半田達の胸中を察してか、古株監督代理は優しい声を掛けた。
「この試合、決して簡単には行かんだろう。お前さんらの出番もきっと来る。控えも含めて全員で団結せんと、勝利はないぞい。」
その言葉に、4人の表情が引き締まる。これまでも死闘は幾度もあった。いつでも試合に出られるように、ベンチメンバーもスタメンと同じ心構えで試合の臨まなければならないのだ。
「さて、今回の相手は木戸川清修じゃ。お前さん達もアップの様子で分かったと思うが、前回戦った時とはまるで別のチームじゃな。」
古株がゆっくりと選手達の顔を見回す。そして音無の方を見遣ると、彼女はホワイトボードを引っ繰り返した。
ボードの裏面には、雷門と木戸川の選手を模したマグネットが散りばめられている。
「今大会の木戸川清修の得点数は13。失点は僅か2。13得点のうち、必殺技による得点は11。そのうち8点は豪炎寺さんが絡んでいます。」
ピンク色のノートパソコンを開いた音無が、分析したデータを話し始めた。
得点の殆どに絡む豪炎寺の活躍に、そこかしこから「おお」と感嘆の声が漏れた。
「4人も強力なFWがいるだけあって、どの試合もコンスタントに得点を挙げとるの。唯一の例外は二回戦のじぇみにすとーむ戦じゃが、まああれは失点を防ぐことを主軸にしとったからな。」
ジェミニストーム戦は、2トップを残してほぼ全員が自陣に下がるガチガチの守備陣形を敷いていた。
最終的には豪炎寺と勝の新連携シュートで得点を挙げたが、木戸川が攻めに対して消極的だったのはあの試合だけである。尤も、仮にスコアレスでPKに縺れ込んだとしても、4人の強力なストライカーがいる分勝算があると踏んだのかもしれないが。
ジェミニ戦の1得点を除くと、残り12得点。3試合で平均4得点挙げている計算になる。
「木戸川の強みはストライカーが4人いることは勿論だが、その組み合わせのバリエーションが豊富なところじゃの。」
「一回戦、清水インテルス戦では武方三兄弟の3トップ。二回戦は豪炎寺さんと勝さんの2トップ。三回戦は勝さん、友さんと豪炎寺さんの3トップ。四回戦は豪炎寺さんの1トップです。」
音無が古株の説明を補足する。なるほど、全試合でFWの組み合わせが違う。それも顔触れが違うだけでなく、トップの人数が異なるシステムを使いこなし、得点を積み重ねているのだ。
「逆にDF陣は一回戦から顔触れが全く変わっておらん。此処まで僅か2失点に抑えられているのも、この4バックが一番馴染みが良いんだろうな。じゃから此方もFWに関しては奇を衒わず、一番シンプルで馴染みよい組み合わせを選んだ。」
染岡とシャドウの2トップ。それは新生雷門サッカー部が始動してから、一番オーソドックスな布陣である。いきなりFWの枚数を増やしても却って混乱を招くという古株の判断は正しいかもしれない。
「両サイドハーフには敢えてFW登録の選手を配置させて貰ったぞい。お前さんらにはサイドのケアは勿論じゃが、適宜攻撃に参加して染岡達をフォローして欲しい。」
「うーん、何だか忙しくなりそうだなあ。」
のんびり屋のマックスがげんなりしたように呟いた。
マックスも一斗も、本来はFW登録だが、その非凡なサッカーセンスからMFもこなすことが出来る。
特にマックスは、三回戦でパサーとして活躍した実績がある。
一之瀬をフル出場させられない分、2人のユーティリティープレイヤーの活躍が今試合の鍵になることは間違いない。
「ボランチ2人には、ある仕事を頼みたい。」
「仕事…ですか?」
少林が小さい目をぱちくりさせる。宍戸はアフロが邪魔で見えないが、少林と同じく目を瞬かせていることだろう。
「時に少林寺に質問じゃが…今の木戸川の、躍進のキーマンは誰じゃと思う?」
古株が腰を屈めて少林の顔を覗き込む。少林は顎に手をやって1、2秒思案したが、「豪炎寺さんですか?」と即答した。
ゴクリ、と息を飲む少年達。
そして音無と大谷によって、ホワイトボードにメンバー表が貼り出された。
「俺とシャドウのツートップか。」
自身がスタメンであること安堵したらしい染岡が、隣でメンバー表を覗き込むシャドウに声を掛けた。
その声には、豪炎寺と手合せできる喜びが滲んでいる。シャドウもまた、嘗ての雷門のエースストライカーと対決できることに、武者震いしている。
フォーメーションはお馴染みのF‐ベーシック(4-4-2)。2トップは染岡とシャドウ、GKは円堂だ。
DFは左サイドバックに風丸、右サイドバックに栗松、センターバックは左が壁山、右に東。
そしてMFは…右サイドハーフに一斗、左はマックス。ダブルボランチは左から少林、宍戸の順である。
ベンチは影野、飛鷹、五郎、半田、一之瀬の5人。障害を抱えた一之瀬はベンチスタートを覚悟していたようだが、他4人は少し残念そうである。
「控えじゃからといって志気を下げるなよ。」
浮かない顔の半田達の胸中を察してか、古株監督代理は優しい声を掛けた。
「この試合、決して簡単には行かんだろう。お前さんらの出番もきっと来る。控えも含めて全員で団結せんと、勝利はないぞい。」
その言葉に、4人の表情が引き締まる。これまでも死闘は幾度もあった。いつでも試合に出られるように、ベンチメンバーもスタメンと同じ心構えで試合の臨まなければならないのだ。
「さて、今回の相手は木戸川清修じゃ。お前さん達もアップの様子で分かったと思うが、前回戦った時とはまるで別のチームじゃな。」
古株がゆっくりと選手達の顔を見回す。そして音無の方を見遣ると、彼女はホワイトボードを引っ繰り返した。
ボードの裏面には、雷門と木戸川の選手を模したマグネットが散りばめられている。
「今大会の木戸川清修の得点数は13。失点は僅か2。13得点のうち、必殺技による得点は11。そのうち8点は豪炎寺さんが絡んでいます。」
ピンク色のノートパソコンを開いた音無が、分析したデータを話し始めた。
得点の殆どに絡む豪炎寺の活躍に、そこかしこから「おお」と感嘆の声が漏れた。
「4人も強力なFWがいるだけあって、どの試合もコンスタントに得点を挙げとるの。唯一の例外は二回戦のじぇみにすとーむ戦じゃが、まああれは失点を防ぐことを主軸にしとったからな。」
ジェミニストーム戦は、2トップを残してほぼ全員が自陣に下がるガチガチの守備陣形を敷いていた。
最終的には豪炎寺と勝の新連携シュートで得点を挙げたが、木戸川が攻めに対して消極的だったのはあの試合だけである。尤も、仮にスコアレスでPKに縺れ込んだとしても、4人の強力なストライカーがいる分勝算があると踏んだのかもしれないが。
ジェミニ戦の1得点を除くと、残り12得点。3試合で平均4得点挙げている計算になる。
「木戸川の強みはストライカーが4人いることは勿論だが、その組み合わせのバリエーションが豊富なところじゃの。」
「一回戦、清水インテルス戦では武方三兄弟の3トップ。二回戦は豪炎寺さんと勝さんの2トップ。三回戦は勝さん、友さんと豪炎寺さんの3トップ。四回戦は豪炎寺さんの1トップです。」
音無が古株の説明を補足する。なるほど、全試合でFWの組み合わせが違う。それも顔触れが違うだけでなく、トップの人数が異なるシステムを使いこなし、得点を積み重ねているのだ。
「逆にDF陣は一回戦から顔触れが全く変わっておらん。此処まで僅か2失点に抑えられているのも、この4バックが一番馴染みが良いんだろうな。じゃから此方もFWに関しては奇を衒わず、一番シンプルで馴染みよい組み合わせを選んだ。」
染岡とシャドウの2トップ。それは新生雷門サッカー部が始動してから、一番オーソドックスな布陣である。いきなりFWの枚数を増やしても却って混乱を招くという古株の判断は正しいかもしれない。
「両サイドハーフには敢えてFW登録の選手を配置させて貰ったぞい。お前さんらにはサイドのケアは勿論じゃが、適宜攻撃に参加して染岡達をフォローして欲しい。」
「うーん、何だか忙しくなりそうだなあ。」
のんびり屋のマックスがげんなりしたように呟いた。
マックスも一斗も、本来はFW登録だが、その非凡なサッカーセンスからMFもこなすことが出来る。
特にマックスは、三回戦でパサーとして活躍した実績がある。
一之瀬をフル出場させられない分、2人のユーティリティープレイヤーの活躍が今試合の鍵になることは間違いない。
「ボランチ2人には、ある仕事を頼みたい。」
「仕事…ですか?」
少林が小さい目をぱちくりさせる。宍戸はアフロが邪魔で見えないが、少林と同じく目を瞬かせていることだろう。
「時に少林寺に質問じゃが…今の木戸川の、躍進のキーマンは誰じゃと思う?」
古株が腰を屈めて少林の顔を覗き込む。少林は顎に手をやって1、2秒思案したが、「豪炎寺さんですか?」と即答した。
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