第五十四話 佐倉双葉
『……はあ、城ヶ崎め。着替えのパンツとか言うなよな、女子なんだからさ……』
モルガナは蓮の足下に腰を下ろしながら、そう語る。城ヶ崎シャーロットに部屋から追い出された状態であった。蓮は腕を組みながら首を捻る……この状況を、怪盗団に相談すべきだろうか?
「モルガナ」
『うん。怪盗団のメンバーに相談しようかどうか、迷っているんだな?』
「ああ」
『……今は、皆、それぞれに新生活がスタートしたばかりだからな。それに、皆に相談しても心配をかけるだけかもしれない』
「……情報収集をしたい」
『なるほど、双葉に頼むのか。聖心ミカエル学園の七不思議か……ネットとかで情報を集められるかもしれないな』
「そうだ。双葉なら、それほど難しくはないだろう」
『うん。頼んでみる……って、おい、蓮?』
モルガナはスマホを取り出した蓮の顔を見上げてくる。
『さすがに今からってのは、遅すぎじゃね?』
「……双葉はこの時間、アニメを見ているハズだ」
『なるほど。生態を知り尽くしているな……』
「メッセージだけ送っておけば、寝ていても問題ない……まあ、寝ていても動くかもしれないが」
『そんなワケねーだろ?……いや、でも……まさか……なんか、双葉なら寝ていてもパソコンのキーボードを打ち始めそうなイメージがあるよな……』
「電話じゃないから、大丈夫だろう」
『聖心ミカエル学園の七不思議について、調べておいてくれないか』。蓮はそんなメッセージを書き上げると、佐倉双葉に送信していた。
ブブブ。
『早ッ!!返信、もう来やがったぞ!?……双葉、夜更かしし過ぎだろ?明日も学校はあるんだぜ……?まあ、ちょっと助かったが……それで、どんなメッセージが返って来たんだよ?』
『任せとけ、蓮のためならそれぐらいするぞ。でも、なんで???』……双葉は深夜のメッセージに対して、疑問を持ったようだ。
『話しておくか?』
「ああ、かいつまんでな」
……『どうやら七不思議の霊に、異世界に友人を引き込まれた。自分たちも異世界ナビのおかげで、その異世界に行き、幽霊と戦った』。
ブブブ。
『いや、返信が来るの、早すぎだろ?で。双葉は何て?』
『マジか?異世界ナビ……ホントだ……さっきまで私のスマホに入って無かったのに。蓮の話を聞いたら、いきなり浮かび上がって来たぞ』
『マジかよ!?』
『これ、どういうことだ?』
『分からない』
『ふむ。そうだよな……うーん。もしかしたら、認知の影響かもしれん。蓮が怪盗の力を取り戻したと知ったから、私にもコレが認識することが出来たのかも???』
『そうかもしれないな』
『そうかもしれない』
『うん。そんな気がする……で。他のヤツには?』
『連絡していない』
『そうだな。とりあえず、それがいいかもしれない』
『ああ。情報が、あまりにも少なすぎる』
『ふむ。今な、聖心ミカエル学園の七不思議ってのをネットでリサーチしているが、いくつかの記事にヒット出来るが……あまり多い数じゃないな。有名なのと、有名じゃないのがあるのかも?……今のところ、3種類しか、無いな』
『三種類……我が輩たちが知っているのは……』
『飛び降り自殺した女子生徒の幽霊と、裏山の墓地が崩れて見つからない一人分だけの骨が、大きくなって暴れる』
『ん。その二つもあるな』
『その二つとは戦った』
『マジかーっ!?……ゆ、幽霊、や、やっぱり、いるんだなぁ……ッ』
『そうらしい』
『れ、冷静だな、蓮。さすがだ……とにかく、三つ目の七不思議は、理科準備室の人体模型……ときどき、本物の内臓と交換されるってトコロだ。神サマを裏切るような行いをした生徒は、腹を切り裂かれて、腎臓を取り出されるんだってよ。ありがち……なのかな。なーんか、ちょっと可愛くな気がするゾ』
『たしかにな。学生のノリで使うには、ちょっと血なまぐさいような気もする。そんな噂話を学生が喜ぶかな……?それに……腎臓って、臓器まで選ばれているのがな。学生なら、内臓、ぐらいで納得しそうだ……』
『……ふむ。良い視点だな、モナ』
『うお。スマホ、通話モードだったのかよ』
『よく考えたら、こっちの方が早い。指も動かせるしな。そして、双葉ちゃんの美ボイスもお届けできーる。お耳にやさしーな』
「そうだな。双葉の声を聞いていると、癒やされる」
『むぐ!?し、深夜に天然口説きマシーンの声を聞くと、ハートに悪いぜ』
「心臓が痛むのか?」
『い、いや。大丈夫だから気にするな。それで……何だっけ?』
「腎臓だ」
『ああ。そうだな。どのウワサも、腎臓が出て来る。でも、なんで腎臓なのかって理由は見つからない感じだ』
「そうか……」
『すまないな。今、分かっているのはそれだけだ。ちょっと、他の検索方法でも探ってみる。学校裏サイトとかもなー……たぶん、あるだろ。在学生か、卒業生か、まったく関係ない変人が運営しているヤツとかが』
『まったく関係ないヤツが、そんなサイトを作るのかよ?』
『作るんじゃね?……高校生同士の悪口とか聞いてると、性的な興奮を覚える変人とか?』
「……それは確かに変人だな」
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