四十五章 予言
「わたくしも本当のことはよく存じません。その辺は余所者という意識があったからかもしれませんね。リリシアをこの身に宿すまで、わたくしも所詮余所者と思っていたところがありましたので。ごめんなさいね。ですが、海の中と場所を絞れば、ひとつだけ心当たりがございます。タリア、黒ダイヤが掘り出されたという伝説の場所がどこか、ご存じ?」
「はい、それはもう、この国の者なら」
と、この場にいた者たちの顔を見渡す。
「であれば、わたくしをそこに案内してください」
「と言われましても、この有様では」
目印となるものもないこの廃れた土地で、その場所に連れて行けというのは無謀。
するとクラウディアが手をあげる。
「黒ダイヤなら、わたし、持ってる」
場のすべての視線がクラウディアをみた。
「えっと、そんな注目されても。あの、マリアンヌ様はどうして掘られた場所にと思ったのですか? もし、黒ダイヤが必要だからというのであれば、このダイヤを使ってください」
ここはお母様というべきだったと後悔するが、もう今更である。
マリアンヌは信じられないというまなざしで娘を見るが、それが至極当然であり、やはり運命なのだと小さくつぶやく。
なにがどう運命なのか知りたい気持ちもあったが、今はそれよりも優先することがある。
「黒ダイヤは持ち主を知り、持ち主以外には絶対に従わない、意志のあるダイヤであると聞いています。そのダイヤはあなたが持っていない。では、そのダイヤをかざすなどしていろいろ試してみましょう。黒ダイヤがカルミラの国宝であるといわれるのはなにも珍しいからではないのです。それだけで意味があるのです。黒ダイヤは対になっていて、いつも互いを探し求めているとも言われています。この地にある別の黒ダイヤと共鳴するか、それ単体でなにかを起こすかはわかりませんが」
しかし、その心配は無用に終わる。
クラウディアが黒ダイヤの入った箱の蓋を開けると、黒ダイヤそのものが光り輝き、なにかを呼んでいるのか音を発していた。
ところが、その音はクラウディアにしか聞こえないらしい。
さらに、どこからかこのダイヤを呼んでいるような音も聞こえるのだった。
音のする方に耳を集中させると、それは海中から。
「黒ダイヤは対になっているといったな。片割れはどうしたのだ?」
ルモンドがマリアンヌに訊ねる。
「黒ダイヤにはオスとメスがあり、あの子が持っているのはメスだと思います。なぜメスだけがレイバラルにあったのかは謎ですが」
いや、そうではない。
あの男が意図としてレイバラルの者に持ち出させたのだ。
謎は、なぜ片方だけが持ち出すことができのたか。
「まあ、そういうことですのね。でしたら簡単なことですわ。あの子が産まれた時、黒ダイヤの片方の持ち主はあの子であるとお告げがあったから。ですから外に出したのです。となれば片割れはまだ神聖の場にあるのだと思います」
地中に目的の場所へ行く入り口があるのは間違いないようだ。
みなが岸壁から海を見下ろす。
その時だった、眼下の海が渦を巻き、中心部分だけ海底が顔をだす。
「来いと言っているのね」
迷うことなくクラウディアが飛び降りようとする。
「ちょっと待て、よく考えろ。おまえ、泳げるのか?」
「もちろんよ。ダジュールは泳げないの?」
「ばかにするな、泳げる。だが、長く息は続かない。俺はそれを言っている」
確かに息が続かなくては意味がない。
「それでも行く。だって、もう選択肢はないじゃない」
クラウディアの決断に、タリアも頷く。
「それではわたくしとリリシア様で先行する方法でよろしいでしょうか?」
「いや、待てって。俺も行く。クラウディアだけ危険な目には遭わせられない」
「それでしたらわたくしも参ります。わたくしがいることでなにかと便宜が図れると思いますので」
マリアンヌがそういうと、王妃だけを危険な目にとなり、結局全員で飛び降りることになった。
飛び降りると、不思議なことにクラウディアを中心に海水がはけていく。
彼女の半径数メートルだけ海底が顔を出すのだ。
まるでクラウディアを守るように海水の壁ができあがる。
「みんな、わたしの側から離れすぎないで」
「言われなくても、そうさせてもらう」
そうやって歩いた先に現れたのは、海底の神殿だった。
神殿の石畳に足をかけると、今まで壁のようになっていた海水が一気に流れ出し、みなは瞬く間に海水の中に浮かぶかたちになる。
そこからは泳いで神殿の奥に入ることになった。
途中まで泳ぐと頭上にわずかな空間ができる。
そこに顔をあげ立ち泳ぎをすることしばし、そうやってなんとか海水から脱することがてきた。
そこはただただ広い空間で、まったく人の気配がしない。
もう生存者はいないのかもと諦めた時だった。
「そこにおられるのはマリアンヌ王妃であられますか? わたくしめを覚えておりますでしょうか。リリシア様がお生まれになった時、祭儀を行った神職者のひとりでございます」
さらにその者はクラウディアが持っている黒ダイヤを見る。
「おお、それは黒ダイヤ。やっと片割れのご帰還。どうりであれがまだかと泣くわけですな。ということは、あなた様は、リリシア様であられますかな?」
「はい、それはもう、この国の者なら」
と、この場にいた者たちの顔を見渡す。
「であれば、わたくしをそこに案内してください」
「と言われましても、この有様では」
目印となるものもないこの廃れた土地で、その場所に連れて行けというのは無謀。
するとクラウディアが手をあげる。
「黒ダイヤなら、わたし、持ってる」
場のすべての視線がクラウディアをみた。
「えっと、そんな注目されても。あの、マリアンヌ様はどうして掘られた場所にと思ったのですか? もし、黒ダイヤが必要だからというのであれば、このダイヤを使ってください」
ここはお母様というべきだったと後悔するが、もう今更である。
マリアンヌは信じられないというまなざしで娘を見るが、それが至極当然であり、やはり運命なのだと小さくつぶやく。
なにがどう運命なのか知りたい気持ちもあったが、今はそれよりも優先することがある。
「黒ダイヤは持ち主を知り、持ち主以外には絶対に従わない、意志のあるダイヤであると聞いています。そのダイヤはあなたが持っていない。では、そのダイヤをかざすなどしていろいろ試してみましょう。黒ダイヤがカルミラの国宝であるといわれるのはなにも珍しいからではないのです。それだけで意味があるのです。黒ダイヤは対になっていて、いつも互いを探し求めているとも言われています。この地にある別の黒ダイヤと共鳴するか、それ単体でなにかを起こすかはわかりませんが」
しかし、その心配は無用に終わる。
クラウディアが黒ダイヤの入った箱の蓋を開けると、黒ダイヤそのものが光り輝き、なにかを呼んでいるのか音を発していた。
ところが、その音はクラウディアにしか聞こえないらしい。
さらに、どこからかこのダイヤを呼んでいるような音も聞こえるのだった。
音のする方に耳を集中させると、それは海中から。
「黒ダイヤは対になっているといったな。片割れはどうしたのだ?」
ルモンドがマリアンヌに訊ねる。
「黒ダイヤにはオスとメスがあり、あの子が持っているのはメスだと思います。なぜメスだけがレイバラルにあったのかは謎ですが」
いや、そうではない。
あの男が意図としてレイバラルの者に持ち出させたのだ。
謎は、なぜ片方だけが持ち出すことができのたか。
「まあ、そういうことですのね。でしたら簡単なことですわ。あの子が産まれた時、黒ダイヤの片方の持ち主はあの子であるとお告げがあったから。ですから外に出したのです。となれば片割れはまだ神聖の場にあるのだと思います」
地中に目的の場所へ行く入り口があるのは間違いないようだ。
みなが岸壁から海を見下ろす。
その時だった、眼下の海が渦を巻き、中心部分だけ海底が顔をだす。
「来いと言っているのね」
迷うことなくクラウディアが飛び降りようとする。
「ちょっと待て、よく考えろ。おまえ、泳げるのか?」
「もちろんよ。ダジュールは泳げないの?」
「ばかにするな、泳げる。だが、長く息は続かない。俺はそれを言っている」
確かに息が続かなくては意味がない。
「それでも行く。だって、もう選択肢はないじゃない」
クラウディアの決断に、タリアも頷く。
「それではわたくしとリリシア様で先行する方法でよろしいでしょうか?」
「いや、待てって。俺も行く。クラウディアだけ危険な目には遭わせられない」
「それでしたらわたくしも参ります。わたくしがいることでなにかと便宜が図れると思いますので」
マリアンヌがそういうと、王妃だけを危険な目にとなり、結局全員で飛び降りることになった。
飛び降りると、不思議なことにクラウディアを中心に海水がはけていく。
彼女の半径数メートルだけ海底が顔を出すのだ。
まるでクラウディアを守るように海水の壁ができあがる。
「みんな、わたしの側から離れすぎないで」
「言われなくても、そうさせてもらう」
そうやって歩いた先に現れたのは、海底の神殿だった。
神殿の石畳に足をかけると、今まで壁のようになっていた海水が一気に流れ出し、みなは瞬く間に海水の中に浮かぶかたちになる。
そこからは泳いで神殿の奥に入ることになった。
途中まで泳ぐと頭上にわずかな空間ができる。
そこに顔をあげ立ち泳ぎをすることしばし、そうやってなんとか海水から脱することがてきた。
そこはただただ広い空間で、まったく人の気配がしない。
もう生存者はいないのかもと諦めた時だった。
「そこにおられるのはマリアンヌ王妃であられますか? わたくしめを覚えておりますでしょうか。リリシア様がお生まれになった時、祭儀を行った神職者のひとりでございます」
さらにその者はクラウディアが持っている黒ダイヤを見る。
「おお、それは黒ダイヤ。やっと片割れのご帰還。どうりであれがまだかと泣くわけですな。ということは、あなた様は、リリシア様であられますかな?」
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