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厨房に立つ安室の目の前に座った二人は梓に出されたメニューをじっと見つめた。
のも束の間、直ぐに注文が決まったと言わんばかりにアブサンはメニューから目を離し、店内を見回した。
男の方は目の前にいる安室に注文いいですか、と爽やかな笑顔で言った。
「パスタランチ2つ、日替わりのとこっちのミートパスタで。あ、あと単品でメロンソーダも」
彼女を気にするそぶりもなく勝手に注文を決めたその男。しかしアブサンはぴくりとも反応しなかった。
「ランチセットの飲み物はどうなさいますか?」
安室がそう聞くと男はまた勝手に答えた。
「2つともアイスコーヒーで。あ、あと角砂糖5個程もらえますか」
アイスコーヒーなのに角砂糖という訳のわからない注文に安室は内心首を傾げていたが「かしこまりました。」といつも通りの笑顔で対応した。
その間もアブサンは店内を観察していた。
料理が出るまでの間、男はスマホで何やら動画を見ているようで、アブサンはじっと安室の行動1つ1つを観察していた。
「お待たせしました」
そう言って二人の目の前に注文の料理を置くと男は美味そうと上機嫌にフォークを手に取り食べ始めた。
しかしアブサンはフォークを持つことさえせず、かわりに男のランチセットにあるアイスコーヒーを奪っていた。
ズズッとストローか音を立ててコーヒーを一気飲みしたコーヒーを男のランチセットの方に戻すと徐に角砂糖をボリボリと食べ始めた。
男の方は男の方で5分も経たないうちに目の前のランチセットを平らげると慣れた手つきでアブサンの前にあるランチセットと取り替えてまた美味しそうにがつがつと平らげ、メロンソーダを一気に流し込んでいた。
「あー美味かった!」
そう満足げに椅子の背もたれにどさっともたれかかるとやっとアブサンの方を向いた。がまた彼女と会話するでもなく、目の前の安室を呼びつけると角砂糖のお代わりを要求してきた。
「すみません、別料金でもいいんで角砂糖もらえますか?10個程。」
「えっ?」
流石の安室も驚かずにはいられなかった。
正気か?と言いたくなるのを堪えて直ぐに角砂糖を出すとアブサンはまた何も言わずにボリボリと砂糖を食べていた。
店内から徐々に客は減り、残ったのはアブサンと男だけだった。
チャンスだ。そう思った安室は梓におつかいを頼んだ。
「梓さん、明日のランチのケーキのイチゴが足りなくて、買ってきてもらえませんか?僕は明日の仕込みをしないといけないので」
「わかりました!イチゴですね!行ってきます!」
そう言って元気に出て行く梓を見送ると安室はすぐさまバーボンとしての顔に切り替えた。
安室の雰囲気が変わったのがわかったのか、すぐにアブサンはばっと安室の方を見た。
「こんな所に貴女が来るなんて。どうしたんです?」
安室はにやりと威圧感のある笑みを向けると彼女はやっと口を開いた。
「私のこと、探ってるでしょ。だから仕返し。」
「は?」
自分でも気の抜けた言葉が出たと思った。安室はバーボンとしての顔をしていたがそれでもぽかんと口を開けずにはいられなかった。
するとすぐさまアブサンと来ていた男がくすくす笑いながら話しに入ってきた。
「くくっ…こいつ意外とガキっぽいとこあんだよ。」
どう見てもアブサンよりも年下であろう彼はそう言うなりアブサンの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ちょっと…やめてよ。」
表情にあまり変化は見られないが少し不機嫌になりながらアブサンは髪をととのえながら男の足を蹴っていたようだった。
「いって」
「あんた、バーボンだろ?俺はシルバって呼ばれてる。よろしくな。」
唐突に自己紹介をした彼はバーボンに爽やかな笑顔を向けた。
「どうも。…しかしシルバというコードネームは聞いたことがありませんね。」
バーボンがすかさずそういうとシルバは「俺は組織の人間じゃないからな」と笑い飛ばした。
組織の人間ではないならアブサンもNOCである可能性が出てきたとバーボンは考えたが油断は出来ないと警戒を解くことはなく今のチャンスにとアブサンについて探ることにした。
「お二人はどういう関係で?」
安室がそう鋭い目で訊くとアブサンの代わりにシルバが答えた。
「んー、同僚って感じ?」
本当にそうなのかと安室はアブサンの方を見るが不機嫌に顔を逸らされてしまった。
そしてまたもやアブサンは謎の言語を呟いた。
「今何て言ったんですか?」そうシルバにきくと「勝手に喋るなって怒られたよ」
と笑った。そしてさらに続けた。
「ま、そんな話は置いといて。今日は忠告をしに来たんだ。バーボン。」
シルバがそう言った途端バーボンとシルバの間にピリリとした空気が流れた。
組織に自分が公安だとバラされては命を失うかもしれない。バーボンの顔は強張っていった。それに反してシルバはにやりと君の悪い笑顔を浮かべた。先ほどの爽やかな笑顔の面影すらない。
「アブサンという人物について嗅ぎ回るな。ま、もとより情報の一つも掴めないだろうが…念には念を。万が一アブサンについての情報を掴まれて変な取引を持ちかけられても困る。…こいつは特別なんだ。くれぐれも必要以上にこいつに近づくな。」
そう言うシルバからはにやりとした笑みも消えて深刻な表情をしていた。
のも束の間、直ぐに注文が決まったと言わんばかりにアブサンはメニューから目を離し、店内を見回した。
男の方は目の前にいる安室に注文いいですか、と爽やかな笑顔で言った。
「パスタランチ2つ、日替わりのとこっちのミートパスタで。あ、あと単品でメロンソーダも」
彼女を気にするそぶりもなく勝手に注文を決めたその男。しかしアブサンはぴくりとも反応しなかった。
「ランチセットの飲み物はどうなさいますか?」
安室がそう聞くと男はまた勝手に答えた。
「2つともアイスコーヒーで。あ、あと角砂糖5個程もらえますか」
アイスコーヒーなのに角砂糖という訳のわからない注文に安室は内心首を傾げていたが「かしこまりました。」といつも通りの笑顔で対応した。
その間もアブサンは店内を観察していた。
料理が出るまでの間、男はスマホで何やら動画を見ているようで、アブサンはじっと安室の行動1つ1つを観察していた。
「お待たせしました」
そう言って二人の目の前に注文の料理を置くと男は美味そうと上機嫌にフォークを手に取り食べ始めた。
しかしアブサンはフォークを持つことさえせず、かわりに男のランチセットにあるアイスコーヒーを奪っていた。
ズズッとストローか音を立ててコーヒーを一気飲みしたコーヒーを男のランチセットの方に戻すと徐に角砂糖をボリボリと食べ始めた。
男の方は男の方で5分も経たないうちに目の前のランチセットを平らげると慣れた手つきでアブサンの前にあるランチセットと取り替えてまた美味しそうにがつがつと平らげ、メロンソーダを一気に流し込んでいた。
「あー美味かった!」
そう満足げに椅子の背もたれにどさっともたれかかるとやっとアブサンの方を向いた。がまた彼女と会話するでもなく、目の前の安室を呼びつけると角砂糖のお代わりを要求してきた。
「すみません、別料金でもいいんで角砂糖もらえますか?10個程。」
「えっ?」
流石の安室も驚かずにはいられなかった。
正気か?と言いたくなるのを堪えて直ぐに角砂糖を出すとアブサンはまた何も言わずにボリボリと砂糖を食べていた。
店内から徐々に客は減り、残ったのはアブサンと男だけだった。
チャンスだ。そう思った安室は梓におつかいを頼んだ。
「梓さん、明日のランチのケーキのイチゴが足りなくて、買ってきてもらえませんか?僕は明日の仕込みをしないといけないので」
「わかりました!イチゴですね!行ってきます!」
そう言って元気に出て行く梓を見送ると安室はすぐさまバーボンとしての顔に切り替えた。
安室の雰囲気が変わったのがわかったのか、すぐにアブサンはばっと安室の方を見た。
「こんな所に貴女が来るなんて。どうしたんです?」
安室はにやりと威圧感のある笑みを向けると彼女はやっと口を開いた。
「私のこと、探ってるでしょ。だから仕返し。」
「は?」
自分でも気の抜けた言葉が出たと思った。安室はバーボンとしての顔をしていたがそれでもぽかんと口を開けずにはいられなかった。
するとすぐさまアブサンと来ていた男がくすくす笑いながら話しに入ってきた。
「くくっ…こいつ意外とガキっぽいとこあんだよ。」
どう見てもアブサンよりも年下であろう彼はそう言うなりアブサンの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ちょっと…やめてよ。」
表情にあまり変化は見られないが少し不機嫌になりながらアブサンは髪をととのえながら男の足を蹴っていたようだった。
「いって」
「あんた、バーボンだろ?俺はシルバって呼ばれてる。よろしくな。」
唐突に自己紹介をした彼はバーボンに爽やかな笑顔を向けた。
「どうも。…しかしシルバというコードネームは聞いたことがありませんね。」
バーボンがすかさずそういうとシルバは「俺は組織の人間じゃないからな」と笑い飛ばした。
組織の人間ではないならアブサンもNOCである可能性が出てきたとバーボンは考えたが油断は出来ないと警戒を解くことはなく今のチャンスにとアブサンについて探ることにした。
「お二人はどういう関係で?」
安室がそう鋭い目で訊くとアブサンの代わりにシルバが答えた。
「んー、同僚って感じ?」
本当にそうなのかと安室はアブサンの方を見るが不機嫌に顔を逸らされてしまった。
そしてまたもやアブサンは謎の言語を呟いた。
「今何て言ったんですか?」そうシルバにきくと「勝手に喋るなって怒られたよ」
と笑った。そしてさらに続けた。
「ま、そんな話は置いといて。今日は忠告をしに来たんだ。バーボン。」
シルバがそう言った途端バーボンとシルバの間にピリリとした空気が流れた。
組織に自分が公安だとバラされては命を失うかもしれない。バーボンの顔は強張っていった。それに反してシルバはにやりと君の悪い笑顔を浮かべた。先ほどの爽やかな笑顔の面影すらない。
「アブサンという人物について嗅ぎ回るな。ま、もとより情報の一つも掴めないだろうが…念には念を。万が一アブサンについての情報を掴まれて変な取引を持ちかけられても困る。…こいつは特別なんだ。くれぐれも必要以上にこいつに近づくな。」
そう言うシルバからはにやりとした笑みも消えて深刻な表情をしていた。
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