偶然と必然と斉藤清六
「後になってから気づく」ってこと、ない?
「何の意味もない」と思っていたこと、「話の流れで偶然そうなった」と思っていたこと、それが後になって振り返ってみると、「実はそうじゃなかった」
「アレはなるべくしてなったことだったんだ」、「必然性があってああなったんだ」
って、そういうふうに気づく。
不思議だよね、アレ。
その時は全く何とも思わないのに、気づいた後になると「なんであの時に気付かなかったんだろう?」って思う。
全く気付かなかった「気付く前のオレ」と、なぜ気づかなかったのかと不思議に思う「気づいた後のオレ」
「気づいた後」からすると、あの時のオレ…「気付く前」のオレは違う人のよう。
同じオレなのに、オレじゃない。そんな気分。
オレが二人いるような気分になる。
オレがお前でお前もオレで、って。
転校生かよ。
…アレは本当にオレだったのかな?
もしかしたら本当に別人だったんじゃないのかな?
オレなんだけど、ちょっと違うオレじゃない誰か。
そんなものがこの世にあるのかどうかなんてわからないけれど、
もし仮にそんなものがあるんだとしたら?
だとしたら
じゃあ「本物のオレ」はどっちなのかな?
オレの名前は『フェイク・ニュース』
しつこいようだけど『・』をとって『フェイクニュース』でもいい。
『・』があってもなくてもどっちでもいいんだけど、「じゃあ本当のオレはどっちなの?」って思う時もあるよね。
今回はそんな話。
多分。
「コーイチ?あんたコーイチなの?
どーしたのその体!」
「ユカコ…?ユカコーーーッ!」
目の前には体中の骨が折れた大男、後ろには特に根拠はないんだけどなんかヤバそうな女の子。
前門の虎、後門の狼。
あるよね、そんな言葉。
直感的にそんな言葉が浮かんだけど、オレは思ったね。
ジャスト、それ。
マジ、ヤバい。
ホントそんな気分。
目の前にいる大男。体中の骨がバキバキに折れてる。両手と言わず両足と言わず体中が変な方向に曲がっていて、顔なんて180度後ろ向いてる。そんなヤツが痛がりもしないで普通に大声で喋ってる。
うん。間違いない。
どう考えてもおかしい。
だろ?
後ろにいる(はず。きっと。)声だけ聞こえる女の子。
顔も見えないしどんな服着てるいるかも分からない。けど声の調子で分かるね。
やっぱ、コイツ、マジ、やばい
すごい気が強そう。
そして強引。
強引ってことは人の話を聞かないし、聞いても譲らない。「自分の思い通りにならないなんて、そんなことは認めない」ってヤツって事。そんなヤツだから人の気持ちなんて考えない。むしろ逆撫でする。
そこへ持ってきてすごい気が強いってことは、必然、人とぶつかるし、って事はトラブルの元になる。
すぐ人とぶつかってトラブル起こして、挙げ句謝らないし人を怒らせる。そんなヤツと関わって良い事があるわけない。関わりたくない。
骨がバキバキの大男の事、「どーしたの?」って言ってるけど、字面だけ追うと心配してる風に思えること言ってるけど、全然心配していない。
「お前がそんな状態だと私が困るんだよ」
「なんなんだよそのザマは」
「斉藤清六風にいうとなんなんなんだよ」
心の中で言ってるのはきっとそういうところ。
斉藤清六は言わないと思うけどね。
見るからに瀕死の状態で(なぜかピンピンしてるけど)、普通だった完全に死んでるヤツを見て、しかもそれが自分の知り合いで、考えてるのが「お前のせいで私が困る」
普通そんなこと思うかね。
前門の虎は生物的にヤバい。
後門の狼は人間的にヤバい。
そんな二人に挟まれてるオレ。
ああ、マジ、ヤバい。
どう考えてもここから良い事が起きるとは思えない。
なんて思ってると案の定、
「ちょっとアンタ」
来たよ。
「アンタよアンタ」
話しかけてきた。
「そこの私ことユカコとコーイチを結ぶラインを遮るようにボーッと突っ立ってるアナタ」
ああ、やっぱオレなのね。
もしかしたらオレを通り越して目の前の大男に話しかけてるのかなって期待したけど、嫌な予感ばっかりよく当たるなあ。
当たったところでちっとも嬉しくない。
「邪魔なのよね、さっきから。聞いてる?」
聞いてるけど話したくない。
だってほらこの言い方。
初対面なのになんでこんなに好戦的なんだよ。
「そこにアンタが立ってるとさ、コーイチと話すたんびにアンタが視界に入るのよ。そうすると、コーイチと話してるのにアンタと話してるような気分になるのよ」
「聴覚はコーイチなのに、視覚には見知らぬアンタが浮かんでくるわ。どっちがどっちがわからなくなるじゃない」
「アンタがコーイチでコーイチがアンタで、って転校生かよ」
ん?
「なんなのよ一体」
「斉藤清六風にいうとなんなんなんなのよ」
あれ?
言うのそれ?
斎藤清六風に言っちゃうんだ?
その瞬間、世界が変わった。
何かがガチッと噛み合って、歯車が回り出すのを感じた。
斎藤清六。
それ風の言い方。
オレのお気に入りのギャグだけど、それをなぜこの子がいうのか。
絶対言わないと思っていたのに。
転校生ネタも、世間一般ではマイナーな方かも知れない。だけどオレの中では充分メジャーな鉄板ネタ。
だから、転校生は、まあ許す。
でも斎藤清六は違う。
だって今の女の子が知ってるようなネタじゃないんだもの。関わり合うのが嫌だってんで未だに女の子の方を向いてないけど声の調子で言えばユカコとかいうこの女の子は女子高生くらいか。
年齢的に斎藤清六なんて知るワケない。
それに、斎藤清六自体が、言っちゃなんだけど今の世代まで届くほどメジャーじゃない。あ、斉藤さんなんかすみません。
偶然とは思えないネタかぶり。
──『偶然とは思えない』
ん?
って事は、偶然じゃない?
だとしたら必然?
その時、何かに撃たれたように突然頭に浮かんだ。
「コレはなるべくしてなったことなんだ」
「必然性があってこうなったんだ」
そう、偶然じゃないならそれは必然。
たまたま巻き込まれたと思ってたこの状況。
「なんでオレがこんな目に」と思ってたこの異様な今。
これは偶然じゃない。
オレの「運命」なんだ。
オレ達の「必然」なんだ。
なぜかハッキリとそう確信した。
オレは斎藤清六で運命を確信した。
何なんだコレは
斎藤清六風に言うと、
って言わないよ。
ここで言うほど野暮じゃない。
ああ、そうそう。彼女は言ったね
「斉藤清六風にいうとなんなんなんなのよ」
間違ってるね。
『なん』が1個多い。
正確に言うと、
「斉藤清六風にいうとなんなんなのよ」
『・』があってもなくてもどっちでもいいように、『なん』が1個多いかどうかも、どっちでもいいことなんだけどね。
このへんはオレの勝ち。
「何の意味もない」と思っていたこと、「話の流れで偶然そうなった」と思っていたこと、それが後になって振り返ってみると、「実はそうじゃなかった」
「アレはなるべくしてなったことだったんだ」、「必然性があってああなったんだ」
って、そういうふうに気づく。
不思議だよね、アレ。
その時は全く何とも思わないのに、気づいた後になると「なんであの時に気付かなかったんだろう?」って思う。
全く気付かなかった「気付く前のオレ」と、なぜ気づかなかったのかと不思議に思う「気づいた後のオレ」
「気づいた後」からすると、あの時のオレ…「気付く前」のオレは違う人のよう。
同じオレなのに、オレじゃない。そんな気分。
オレが二人いるような気分になる。
オレがお前でお前もオレで、って。
転校生かよ。
…アレは本当にオレだったのかな?
もしかしたら本当に別人だったんじゃないのかな?
オレなんだけど、ちょっと違うオレじゃない誰か。
そんなものがこの世にあるのかどうかなんてわからないけれど、
もし仮にそんなものがあるんだとしたら?
だとしたら
じゃあ「本物のオレ」はどっちなのかな?
オレの名前は『フェイク・ニュース』
しつこいようだけど『・』をとって『フェイクニュース』でもいい。
『・』があってもなくてもどっちでもいいんだけど、「じゃあ本当のオレはどっちなの?」って思う時もあるよね。
今回はそんな話。
多分。
「コーイチ?あんたコーイチなの?
どーしたのその体!」
「ユカコ…?ユカコーーーッ!」
目の前には体中の骨が折れた大男、後ろには特に根拠はないんだけどなんかヤバそうな女の子。
前門の虎、後門の狼。
あるよね、そんな言葉。
直感的にそんな言葉が浮かんだけど、オレは思ったね。
ジャスト、それ。
マジ、ヤバい。
ホントそんな気分。
目の前にいる大男。体中の骨がバキバキに折れてる。両手と言わず両足と言わず体中が変な方向に曲がっていて、顔なんて180度後ろ向いてる。そんなヤツが痛がりもしないで普通に大声で喋ってる。
うん。間違いない。
どう考えてもおかしい。
だろ?
後ろにいる(はず。きっと。)声だけ聞こえる女の子。
顔も見えないしどんな服着てるいるかも分からない。けど声の調子で分かるね。
やっぱ、コイツ、マジ、やばい
すごい気が強そう。
そして強引。
強引ってことは人の話を聞かないし、聞いても譲らない。「自分の思い通りにならないなんて、そんなことは認めない」ってヤツって事。そんなヤツだから人の気持ちなんて考えない。むしろ逆撫でする。
そこへ持ってきてすごい気が強いってことは、必然、人とぶつかるし、って事はトラブルの元になる。
すぐ人とぶつかってトラブル起こして、挙げ句謝らないし人を怒らせる。そんなヤツと関わって良い事があるわけない。関わりたくない。
骨がバキバキの大男の事、「どーしたの?」って言ってるけど、字面だけ追うと心配してる風に思えること言ってるけど、全然心配していない。
「お前がそんな状態だと私が困るんだよ」
「なんなんだよそのザマは」
「斉藤清六風にいうとなんなんなんだよ」
心の中で言ってるのはきっとそういうところ。
斉藤清六は言わないと思うけどね。
見るからに瀕死の状態で(なぜかピンピンしてるけど)、普通だった完全に死んでるヤツを見て、しかもそれが自分の知り合いで、考えてるのが「お前のせいで私が困る」
普通そんなこと思うかね。
前門の虎は生物的にヤバい。
後門の狼は人間的にヤバい。
そんな二人に挟まれてるオレ。
ああ、マジ、ヤバい。
どう考えてもここから良い事が起きるとは思えない。
なんて思ってると案の定、
「ちょっとアンタ」
来たよ。
「アンタよアンタ」
話しかけてきた。
「そこの私ことユカコとコーイチを結ぶラインを遮るようにボーッと突っ立ってるアナタ」
ああ、やっぱオレなのね。
もしかしたらオレを通り越して目の前の大男に話しかけてるのかなって期待したけど、嫌な予感ばっかりよく当たるなあ。
当たったところでちっとも嬉しくない。
「邪魔なのよね、さっきから。聞いてる?」
聞いてるけど話したくない。
だってほらこの言い方。
初対面なのになんでこんなに好戦的なんだよ。
「そこにアンタが立ってるとさ、コーイチと話すたんびにアンタが視界に入るのよ。そうすると、コーイチと話してるのにアンタと話してるような気分になるのよ」
「聴覚はコーイチなのに、視覚には見知らぬアンタが浮かんでくるわ。どっちがどっちがわからなくなるじゃない」
「アンタがコーイチでコーイチがアンタで、って転校生かよ」
ん?
「なんなのよ一体」
「斉藤清六風にいうとなんなんなんなのよ」
あれ?
言うのそれ?
斎藤清六風に言っちゃうんだ?
その瞬間、世界が変わった。
何かがガチッと噛み合って、歯車が回り出すのを感じた。
斎藤清六。
それ風の言い方。
オレのお気に入りのギャグだけど、それをなぜこの子がいうのか。
絶対言わないと思っていたのに。
転校生ネタも、世間一般ではマイナーな方かも知れない。だけどオレの中では充分メジャーな鉄板ネタ。
だから、転校生は、まあ許す。
でも斎藤清六は違う。
だって今の女の子が知ってるようなネタじゃないんだもの。関わり合うのが嫌だってんで未だに女の子の方を向いてないけど声の調子で言えばユカコとかいうこの女の子は女子高生くらいか。
年齢的に斎藤清六なんて知るワケない。
それに、斎藤清六自体が、言っちゃなんだけど今の世代まで届くほどメジャーじゃない。あ、斉藤さんなんかすみません。
偶然とは思えないネタかぶり。
──『偶然とは思えない』
ん?
って事は、偶然じゃない?
だとしたら必然?
その時、何かに撃たれたように突然頭に浮かんだ。
「コレはなるべくしてなったことなんだ」
「必然性があってこうなったんだ」
そう、偶然じゃないならそれは必然。
たまたま巻き込まれたと思ってたこの状況。
「なんでオレがこんな目に」と思ってたこの異様な今。
これは偶然じゃない。
オレの「運命」なんだ。
オレ達の「必然」なんだ。
なぜかハッキリとそう確信した。
オレは斎藤清六で運命を確信した。
何なんだコレは
斎藤清六風に言うと、
って言わないよ。
ここで言うほど野暮じゃない。
ああ、そうそう。彼女は言ったね
「斉藤清六風にいうとなんなんなんなのよ」
間違ってるね。
『なん』が1個多い。
正確に言うと、
「斉藤清六風にいうとなんなんなのよ」
『・』があってもなくてもどっちでもいいように、『なん』が1個多いかどうかも、どっちでもいいことなんだけどね。
このへんはオレの勝ち。
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