ブレーメンの音楽隊①
~新選組屯所~
沖田「なんですか?土方さん」
土方「俺たちが演劇するのが今回で終いになったそうだ」
沖田「とうとう苦情が抱えきれなくなったんですか?
まあそうですよね。子供たちぽかんと口を開けてみてましたし」
土方「原作と違うだの子供が真似するって苦情が特にな。
今回で最後だ、配役はお前に任せるって事になった。変な配役にするんじゃねぇぞ」
沖田「はいはい、分かりましたよ。一番変な役は全部土方さんにします」
~開演~
ある男がロバを飼っていました。
このロバは疲れ知らずに、麦の袋を背中に担いでは全速力で小屋まで運んでいく働き者でしたが近頃力がなくなってきたのかその仕事が熟せなくなってきました。
そんなロバを見ていた主人は餌を減らすのが一番いいと考えます。
そんな不穏な空気を呼んだロバは一目散に逃げていきました。
永倉「(主人公だって言われて来て見りゃロバの役…)」
ロバはブレーメンの街中をトボトボと歩いていると、途中で猟犬がぐったりと道の横で横たわっているのが見えてそちらに近寄ってみました。
永倉「おい平助どうした。お前あれほど筋トレしようって言ったのにしねぇからだぞ」
藤堂「新八さん俺今犬役なんだけど…毎日猟の時に追いかけまわされて疲れちゃったんだよ。そしたら主人が餌を減らすっていうんで逃げてきたんだ」
永倉「平助…お前もか…!ったく主人って奴は何処の奴も一緒だな。ロクな奴がいねぇ!」
ロバと猟犬はお互いに今までの苦労を分かち合いながら、これからどうするか一緒に考えることにしました。街中と言えど2匹だけでは何もできません。
藤堂「そういやさっき街中に「音楽隊」のチラシがあったぜ、新八さん。ロバと犬でもそれくらいなら出来るんじゃねぇかな」
永倉「お前ロバと犬の身体でどうやって楽器鳴らせってんだよ。せいぜい鼻先で太鼓叩くくらいだろうが」
藤堂「新八さんはティンパニを叩けばいいさ、僕はリュートを弾く」
永倉「お前自分の手見たことある?」
藤堂「いいからいいから」
猟犬は不安そうなロバを後押しして街の中心部へと進んでいきました。
まもなくして今度は猫に会います。猫は浮かない顔をして道の端に座っていました。
永倉「今度はお前か、どうしたんだよ斎藤」
斎藤「…ああ、実は暖炉傍においてあった毛糸を思わず本能に負けて転がしていたら家からつまみ出されてしまってな。俺は長年家猫としか生活して来なかった故どうしたらいいかわからぬ」
永倉「お前も災難だったな斎藤…なら一緒にブレーメンに入ろうぜ。お前なら真面目な性格だし音楽家として生きていけるだろうよ。太鼓叩くか?」
斎藤「それはいいな。しかし太鼓はあまり好かぬ他の楽器にしよう」
永倉「その手で何の楽器が奏でられるってんだ?」
猫を入れた3匹で街を歩いていると農家の庭に着きました。
そこでは雄鶏が門の上に止まっていて声の限りに鳴いていました。
それを見ていた3匹は雄鶏の方へと歩いていきます。
藤堂「なんだ、今度は土方さんかよ。どうしたんだよこんなところで」
土方「どうしたもこうしたもねぇ!総司の野郎俺の衣装に鳥もちなんてくっつけやがって…!」
そう言って雄鶏の指さした背中の方を見ると確かにべったりと付けられた鳥もちに、何か紙がひっついていました。そこには彼の句集の一節が小馬鹿にされたように貼られていました。
しかし雄鶏は鳥もちを剥がすのに夢中でそれには気付いていません。
猫はさり気なく「お手伝いします」と雄鶏の背中に回るとその紙をみれないくらいの細切れに千切ると向こうでケラケラ笑っている茶髪に向かって全力投球しました。
何やら悲鳴が聞こえましたが猫はお構いなしです。
斎藤「衣装の方は後程総司の奴に洗わせましょう」
土方「そうだな。ありがとな斎藤。ったく…やっぱりアイツに台本書かせたのは間違いだった」
永倉「土方さんが頼んだのかよ。おかげで俺らロバならロバらしくって顔にも茶色い着色されたんだからな」
土方「俺の顔見て言ってんのか?俺なんて雄鶏の顔は赤いよねとか言って赤チン塗られたんだぞ」
※赤チンとは昔の消毒液の名前だよ。本来は昭和に出来たものだけどここでは既にあるものとして登場。分からない子はお母さんかお父さんに聞いてね!
藤堂「土方さんのそれ消毒剤かよ…そんな塗りたくって大丈夫なのか?」
画面の半分が茶色で覆われ、4分の1は紅白で埋め尽くされた状況に、ひとり「着色剤が手に入らなかったからごめんね一君」と言われた猫は安堵のため息を吐きました。
きっと自分が他の毛色の猫であったら今頃彼らと同じ状態になっていたことでしょう。
土方「で、お前らはここで何してんだ?」
藤堂「今から町の中心部まで行くんだよ。俺たちで音楽家になろうって話でさ。土方さんも来るだろう?あんなとこに居たらまた総司に鳥もち投げられるぜ」
土方「仕方ねぇな…行くしかねぇだろ」
雄鶏は渋々でありながら彼らと一緒に行くことに決めました。
こうして4匹は音楽隊になるべく、歩き始めたのです。
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