超高校級ネットワーク
不二咲千尋フジサキチヒロ:超高校級のプログラマー
新郷映シンゴウアキラ:超高校級のゲームクリエイター
植崎竜司ウエザキリュウジ:超高校級の園芸家
不破弾駆フワダンク:超高校級のバスケット選手
放課後の教室には僕と新郷映君だけが居た。他の皆は部活動だったり、自分の寮に帰ったりで教室の中には居ない。今日は整美委員会の仕事で居残りを少しだけしている。
「ふーん。校内限定のSNSかあ」
超高校級のゲームクリエイターの映君はそう呟きながら、アプリケーションのダウンロードが終わった携帯端末で、それを開いた。
「うん。映君がアイディア不足で困ってるって言ってたのを思い出して。皆がSNSで自由に会話している所から何かアイディアが生まれるかもしれないと思って」
「どーかな。作っておいてもらって悪いけど、何か望み薄って感じ」
そう言いながらも、映君は早速校内限定SNSで「にっばーん」と呟いた。このSNSはついさっき校長に認めてもらったばっかりで、存在を知っているのは、まだ僕と映君と先生達だけ。
「ううん。既存のSNSを参考にして作ったから、そんなに大変じゃなかったし、作るのって楽しいから」
「そう」
映君はあんまり興味がなさそうにそう言い、ゆっくりと気怠そうに立ち上がった。
「じゃちょっとポスター作ってくる」
「ポスター?」
整美委員会の仕事の中で、ポスターを作る予定は無い。
「お前のSNSを知ってもらわなきゃ宝の持ち腐れになるし。花壇のレイアウト宜しく」
「ええー」
「ええー、ってな。お前の為を思って働いてやろうという俺に対しては有難うだろ?」
「だって、レイアウトとかよく分からないし……」
整美委員として、学園の中にある花壇にどんな花をどんな配置で植えるかを考えなければならないのに、映君は逃げようとしている、と思う。
「俺も分かんないし。適当に決めとけ」
「ちょっとお」
映君は僕に背中を向けながら右手を振って、教室から出て行ってしまった。
「どうしよう……」
「ああ、僕も使ってるよ、それ」
結局、僕は花壇のレイアウトを決める事が出来なくて、翌々日の放課後に超高校級の園芸家の植崎竜司君に助けを求めていた。アドバイスを受ける中で、僕が作ったSNSの話になっていた。
「どう?」
「うーん。普通かな」
褒め称えられることを期待していた訳じゃない。素直な意見が聞けて良かった。でも、多分ちょっとはがっかりしているんだと思う。
竜司君は携帯端末を取り出して、そのSNSを立ち上げた。
「そっかあ。頑張って改良してみるね」
「意欲的だ。僕なんか、呟くこと無くて愚痴っていうか、後ろ向きっていうか。はは」
竜司君は諦めにも似た笑いを僕に見せた。
「そうなんだ」
ちょっとだけ竜司君の携帯端末の画面を覗こうとすると、竜司君は私にも見える様に携帯端末の画面を僕の方に向けてくれた。
「不破弾駆って知ってる?」
「えーっと、確か、超高校級のバスケット選手、だよね?」
「そう。彼にバスケのチームに誘われたんだけどさ、足引っ張ってばかりで。はは」
「そうなんだ……」
竜司君のSNSアカウント画面には、既に三つほどバスケに関する意気込みの投稿があった。その中の一つに、「誰か一緒に練習してくれないかな」というものがあって、僕は頭で考えるよりも早く言葉にする。
「僕と一緒に練習しない?」
「えっ?」
「全然やった事ないけど、恩返ししたいから」
「いつ恩を売ったかな?」
「花壇のレイアウト一緒に考えてくれたから」
「そんなの別にいいのに」
「……僕じゃ駄目かな?」
「いいや。……まあ、じゃ、練習するか」
そう言って竜司君はSNSの投稿画面を開いた。そして、メッセージの宛先に僕が知らないIDを選択する。察してくれたのか、竜司君が説明してくれる。
「いっつも体育館に居る奴が居て、そいつに何処の体育館なら空いてるか聞いてみるよ。有効活用です」
「良かった。じゃあ、体育着取ってくるね」
「了解」
SNS上の会話のやり取りを見て空いている体育館を把握し、体育館2Dに入ってから約十分で、僕はワックスの効いた床の上でカレイごっこをする事になってしまった。座っているのでさえ、疲れ切った僕にはちょっとだけ辛かった。
「はっはっはっ」
竜司君は僕の事を笑った後、シュートするけど、ボールはバックボードの縁に当たって明後日の方向に飛んでいってしまう。僕も何度かシュートの練習をしてみたけど、手を離すタイミングがよく分からなくてボールは余り飛ばず、シュートしたボールの高さが足りなくてダメだった。
「やっぱり、上手な人に教わらないとダメだよね」
「そんな事は無い」
明後日に向かったボールを拾い、竜司君はゴールの前に立って、もう一度シュートした。
ボールはバックボードに一度当たって、上からゴールの縁に当たり、大きく上に跳ねながらゆっくりと僕の方に向かって飛んでくる。
起き上がってそのボールを手に取ると、僕は自分に「もっと頑張れ」と言い聞かせながら立ち上がり、ゴールに近付いた。
「勉強だって、頭の良い人に教わるからテストの点数が良くなる訳じゃないでしょ? 誰かと一緒に頑張れるってだけで、楽しいし、やる気が出るよ」
「それなら……よかったかな」
邪魔になっているんじゃないかと思っていた僕は、思わず笑みを零した。
そして、精一杯に頑張ってボールを放り投げるけれども、そのボールはネットの先に触れるだけで、やっぱり届かなかった。
「はっはっはっ」
竜司君はそう笑いながら、ボールを取りに行く。
新郷映シンゴウアキラ:超高校級のゲームクリエイター
植崎竜司ウエザキリュウジ:超高校級の園芸家
不破弾駆フワダンク:超高校級のバスケット選手
放課後の教室には僕と新郷映君だけが居た。他の皆は部活動だったり、自分の寮に帰ったりで教室の中には居ない。今日は整美委員会の仕事で居残りを少しだけしている。
「ふーん。校内限定のSNSかあ」
超高校級のゲームクリエイターの映君はそう呟きながら、アプリケーションのダウンロードが終わった携帯端末で、それを開いた。
「うん。映君がアイディア不足で困ってるって言ってたのを思い出して。皆がSNSで自由に会話している所から何かアイディアが生まれるかもしれないと思って」
「どーかな。作っておいてもらって悪いけど、何か望み薄って感じ」
そう言いながらも、映君は早速校内限定SNSで「にっばーん」と呟いた。このSNSはついさっき校長に認めてもらったばっかりで、存在を知っているのは、まだ僕と映君と先生達だけ。
「ううん。既存のSNSを参考にして作ったから、そんなに大変じゃなかったし、作るのって楽しいから」
「そう」
映君はあんまり興味がなさそうにそう言い、ゆっくりと気怠そうに立ち上がった。
「じゃちょっとポスター作ってくる」
「ポスター?」
整美委員会の仕事の中で、ポスターを作る予定は無い。
「お前のSNSを知ってもらわなきゃ宝の持ち腐れになるし。花壇のレイアウト宜しく」
「ええー」
「ええー、ってな。お前の為を思って働いてやろうという俺に対しては有難うだろ?」
「だって、レイアウトとかよく分からないし……」
整美委員として、学園の中にある花壇にどんな花をどんな配置で植えるかを考えなければならないのに、映君は逃げようとしている、と思う。
「俺も分かんないし。適当に決めとけ」
「ちょっとお」
映君は僕に背中を向けながら右手を振って、教室から出て行ってしまった。
「どうしよう……」
「ああ、僕も使ってるよ、それ」
結局、僕は花壇のレイアウトを決める事が出来なくて、翌々日の放課後に超高校級の園芸家の植崎竜司君に助けを求めていた。アドバイスを受ける中で、僕が作ったSNSの話になっていた。
「どう?」
「うーん。普通かな」
褒め称えられることを期待していた訳じゃない。素直な意見が聞けて良かった。でも、多分ちょっとはがっかりしているんだと思う。
竜司君は携帯端末を取り出して、そのSNSを立ち上げた。
「そっかあ。頑張って改良してみるね」
「意欲的だ。僕なんか、呟くこと無くて愚痴っていうか、後ろ向きっていうか。はは」
竜司君は諦めにも似た笑いを僕に見せた。
「そうなんだ」
ちょっとだけ竜司君の携帯端末の画面を覗こうとすると、竜司君は私にも見える様に携帯端末の画面を僕の方に向けてくれた。
「不破弾駆って知ってる?」
「えーっと、確か、超高校級のバスケット選手、だよね?」
「そう。彼にバスケのチームに誘われたんだけどさ、足引っ張ってばかりで。はは」
「そうなんだ……」
竜司君のSNSアカウント画面には、既に三つほどバスケに関する意気込みの投稿があった。その中の一つに、「誰か一緒に練習してくれないかな」というものがあって、僕は頭で考えるよりも早く言葉にする。
「僕と一緒に練習しない?」
「えっ?」
「全然やった事ないけど、恩返ししたいから」
「いつ恩を売ったかな?」
「花壇のレイアウト一緒に考えてくれたから」
「そんなの別にいいのに」
「……僕じゃ駄目かな?」
「いいや。……まあ、じゃ、練習するか」
そう言って竜司君はSNSの投稿画面を開いた。そして、メッセージの宛先に僕が知らないIDを選択する。察してくれたのか、竜司君が説明してくれる。
「いっつも体育館に居る奴が居て、そいつに何処の体育館なら空いてるか聞いてみるよ。有効活用です」
「良かった。じゃあ、体育着取ってくるね」
「了解」
SNS上の会話のやり取りを見て空いている体育館を把握し、体育館2Dに入ってから約十分で、僕はワックスの効いた床の上でカレイごっこをする事になってしまった。座っているのでさえ、疲れ切った僕にはちょっとだけ辛かった。
「はっはっはっ」
竜司君は僕の事を笑った後、シュートするけど、ボールはバックボードの縁に当たって明後日の方向に飛んでいってしまう。僕も何度かシュートの練習をしてみたけど、手を離すタイミングがよく分からなくてボールは余り飛ばず、シュートしたボールの高さが足りなくてダメだった。
「やっぱり、上手な人に教わらないとダメだよね」
「そんな事は無い」
明後日に向かったボールを拾い、竜司君はゴールの前に立って、もう一度シュートした。
ボールはバックボードに一度当たって、上からゴールの縁に当たり、大きく上に跳ねながらゆっくりと僕の方に向かって飛んでくる。
起き上がってそのボールを手に取ると、僕は自分に「もっと頑張れ」と言い聞かせながら立ち上がり、ゴールに近付いた。
「勉強だって、頭の良い人に教わるからテストの点数が良くなる訳じゃないでしょ? 誰かと一緒に頑張れるってだけで、楽しいし、やる気が出るよ」
「それなら……よかったかな」
邪魔になっているんじゃないかと思っていた僕は、思わず笑みを零した。
そして、精一杯に頑張ってボールを放り投げるけれども、そのボールはネットの先に触れるだけで、やっぱり届かなかった。
「はっはっはっ」
竜司君はそう笑いながら、ボールを取りに行く。
※会員登録するとコメントが書き込める様になります。