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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
目次

第7話


「……………………………………………………………………ごめん、なんだって?」
『じゃから『女の子を見るとぺろぺろしたくなる病気』にかかるのじゃ』
 なんだ、そのどうでもいい病気。
 正直、そんなウイルスだったら、別にいいんじゃないか?
『ところが、じゃ。ウイルスが心身を侵食していくにつれ、病状が悪化していくのじゃよ』
 あたしの考えていることを見抜いたように、シャルロットがそう言う。
「悪化?」
『うむ。詳しいことは、現在調査中じゃがな』
 肝心なことはわからないのか。
 神様ってのも、案外使えないんだな。
「……ともかく、翔平太を治すには、どうすればいい?」
『現状、方法はただ一つ。計画の首謀者を見つけ、ワクチンを手に入れることじゃろうな。もっとも、ワクチンなどが存在するかもわからんのじゃが……』
 すまぬ。そう小さく呟いたシャルロット。
「…………」
 ってことは、だ。
 翔平太を助けるには、シャルロットに協力しなきゃいけないってことだろ?
 ……くそっ!
「……ざけんな」
 翔平太の顔を見る。
 翔平太がこんなんじゃ、家事は誰がやるんだ?
 『食べ物天国』も、味わうことができない。
 朝、ちゃんと起きれないかもしれない。
 それ以前に――
「……ふっざけんなっ!」
 翔平太は、あたしの、たった一人の家族なんだ。
 両親が死んだときから、あたしたちは、二人で一人なんだ。
 そんな翔平太を、こんな目に合わせたやつを、あたしは、許さない!
『飛鳥』
 言って、シャルはブラジャーのフロントホックを弾き飛ばし、Tシャツの隙間から光の玉が出てくるとそれがシャルロットの形を成していく。
「はじをしょうちでたのむ! しゃるにちからをかしてはくれぬか。せかいのためにも!しょうへいたのためにも!」
 全裸のシャルロットが、土下座しながらあたしに頼んできた。
 それを見て、あたしの脳裏には一つの疑問が浮かんだ。
 ――どうして、シャルロットはこうも一生懸命なんだ?
 仕事だから、にしてはいささか真面目すぎる気がする。
 あたしは、翔平太のためという動機があるが、シャルにもそれがあるのだろうか?
「シャルロット」
「なんじゃ? てをかしてくれるのかの?」
「いや、さ。なんであんたはそんなに一生懸命なの? 仕事だから、にしてはちょっとおかしくない?」
「うむ……それにはいろいろとふかいじじょうがあっての。しゃるは――いや、これはあすかがしゃるにきょうりょくしてくれるといってくれたらはなすことにしよう」
 こいつ……っ。変なところで頭が回る。
「どうするのじゃ?」
「……わかったよ」
「ほ、ほんとか? ほんとなのか?」
「ああ。世界を救うのは無理だ。でも、そのモザイク化計画とやらの犯人、あたしがぶったおしてやるよ!」
「よくぞいった! にゃらば、さっそくけいやくじゃ!」
 よほどうれしかったのだろうか、『ならば』を『にゃらば』って噛んだことにも気づいてないらしい。


帰宅したあたしは、具現化したシャルロットが『魔法のマジックペンシル、略してマッキー(全然略してないけど)』で描いた魔法陣の中心にいた。
 シャルロット曰く、能力を得るには、こうして『契約』する必要があるのだと言う。
「では、よいか?」
「いつでも」
 契約の方法は、ごく簡単。
 悪魔のように、魂を支払うとかではない。

 ただ、キスすればいいのだ。

「めを、つむるのじゃ……」
 言って、シャルロットが顔を近づけてくる。
 大きなエメラルドの瞳に吸い込まれそうな感覚が、あたしを襲った。
 そんな感覚から逃れるように、あたしは目を瞑る。

 ――ちゅっ

 柔らかい触感。
 うわー、なんだこれ。
 なんて言うんだろう。
 き、気持ちいい?
 好奇心から目を開けると、間近にシャルロットの顔が。
「もう、いいぞ」
 囁くように言って、シャルロットは顔を離していく。
 少しだけ、名残惜しい感じがした。
「けーやくかんりょー、じゃ。これからは、『シャル』とよぶがよい」
 シャルがそう言うと、描かれていた魔法陣が、光の粒子となって消えていく。
 多分、契約とやらが完了したからなのかな。
「どうじゃ?」
 にやにやと笑みを浮かべながら、シャルロット……シャルが尋ねてきた。
「? なにが?」
「キスしたの、はじめてではないのか?」
「……二度目だよ」
「ほほう? ふぁーすときっすはだれとじゃ?」
「…………」
 遠い昔、幼馴染みと。
 なんて言えるわけがなかった。
「さて、と。シャルロット」
「しゃる、とよぶのじゃ」
「……シャル」
「なんじゃ?」
 にやにや顔のシャルに、あたしはこう告げる。
「さっきの約束、ちゃんと守ってよね」
「? やくそく?」
「なんでシャルは、そんなに一生懸命この事件を解決しようとしているのかって話」
「あ、ああ。そうじゃったな」
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