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初恋課の天使

ジャンル: コメディー 作者: 渚
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初恋課の天使

「人間の初恋ってなんなのよ!もう人間て生き物って本当に面倒くさいわね。
恋愛なんて1回目だろうと2回目だろうと、何回やたって別に変わらないじゃない。
人間ってなんで面倒な事ばっか考えているのかしら。」

社会人天使1年目の私がやっている仕事は、初恋を量産して人間を幸福にする事。
超がつくほど就活難の天界でやっと仕事にありつけたと思ったら、人間の幸福を増やす仕事ですって。別に人間が勝手に幸せになってくれれば良いのに、なんで天使の力を借りなくちゃいけないのかしら。人間て本当に面倒な生き物ね。

なんとか就職して恋愛課の初恋部門に配属された初級天使の私は、まだまだ仕事に慣れなくて毎日失敗ばかり。私の教育係をしている先輩は毎回なんなくノルマをクリアしているのに、私は昨日も3度目の恋を初恋申請で出しちゃって今結構面倒な事になってる。
私が見つけた人間の男の初恋申請を出したんだけど、その人間たら好きになった相手に一直線になりすぎて、人間界でいうところの不倫?だか浮気?だかなんだかっていうのになっちゃったらしいの。それでよくわからないけど、“シュラバ”とか呼ばれてた。
“シュラバ”ってなんなのかしら?
とにかく、その“シュラバ”にならないように不倫申請と浮気申請もしなくちゃならないんだけど、そのやり方が難しくって。どっちかの申請が通らないとすぐに“シュラバ”ってのになっちゃうらしいの。
まぁ、天使の私には関係ないけどね。

「またあんたは!
だから、未初恋の人間は頭の上には☆が付いてないんだからわかりやすいっていつも言ってるでしょ。なんで☆持っている人間に初恋申請出しちゃうかなぁ。」

「だって、あんな☆小さくて見えにくいんですもん。」

「あんた、最初に支給された☆鑑定グラスどうしたの?」

「あ~・・・あれはですね・・・
確か、家の机の引き出しの中に、あったよ~な~・・・」

「今すぐ探して来なさい!!!!」

「はひぃ~!!(涙)」

恋愛課の初恋部門で最初に必ず支給される☆鑑定グラスは、対象の人間がどれだけの恋愛を経験してきたのかを判別する専用の道具。☆鑑定グラスにある二つの穴を同時に覗いて人間を見ると、その人間の頭の上に小さな☆が見えてくる。
その数によって受け持つ課が変わるってことで、私が担当している初恋課は☆なしの人間を探し出して☆を1個付けるように促すのが仕事ってわけ。ちなみに☆鑑定グラスは人間界に似たものがあるらしいく、“ソウガンキョウ”とか呼ばれてたかな。

あったあった。
これがあってもあんなに小さい☆を見分けるなんて難しいのは変わらないってのに。また先輩に起こられる前に今日の☆なし人間を早く探しに行かないと。今回は先輩がせっかく紹介してくれた案件だからどんな人間か心配になるけど。
え~っと、どこにいるのかなぁ~・・・・
あ、いた。

今日のターゲットは、高橋俊樹さんね。年齢は・・・36歳!?
なんでこんな歳まで初恋すらしてないのよ。
とりあえず先輩からもらった資料によると・・・ふむふむ、人間同士の色々な関係がかなり複雑なようね。でも、折角ノルマを1件譲ってもらったから、この仕事はちゃんとやらないと。まずは、本当に☆がないかチェックしておかないと。
どれどれ~・・・

私は☆鑑定グラスで高橋俊樹という人間の男の頭の上をチェックしたけど・・・
?なんで☆が半分しかないの?
これってどうなってるんだっけ?
マニュアルマニュアルっと。

私は、支給されているスマホを使ってマニュアルのPDFファイルをチェック。どうやら☆が半分しかない人間は、恋愛対象が人間じゃないみたい。でも人間じゃないってどういうことかしら?
人間は人間を好きになるから初恋が成立するのに、人間じゃない相手を好きになってどうやって恋愛するのかしら。よくわからないけど、とりあえず初恋申請は出しても問題なさそうね。じゃぁ、ちゃっちゃと初恋申請を出しに行くとしましょう。

初恋申請は、☆の付いていない人間を見つけたとき、その人間の生涯フィルムに恋愛感情を増幅する恋心加算の精神助成をする為の申請で、この申請をされた人間は恋をしたくてしたくてたまらない状態になるの。それで、人間界でいうところの一目惚れって状態へ強制的にさせるってわけ。
元々恋愛感情に加算が必要ないくらいの人間もいるけど、☆が付かないほど恋愛に対して前向きになれない人間にもなんとか幸せになってもらわないといけないのです。だって、算定結果で私の給料とかボーナスとかが大きく変わってくるから私活問題なんですもん!

さてさて、高橋さんの生涯フィルムを取り出さなくっちゃ。
え~っと、フィルムは頭の中だから、そ~っと後ろから近づいて・・・・
え?

「え?」

「こ、こんにちは~。今日は良い天気ですね~。
はは、ははは・・・」

「君は!!
僕の理想の人だ!というか、この次元に存在していたなんて!
なんて奇跡なんだ!僕の目の前に天使が舞い降りた!」

「え!あんた私が天使だってなんでわかったのよ!」

「だってそのコスは、僕が大好きな暴言天使エンジェルハートのミシェミシェたんのコスじゃないか!そんなの一目でわかるさ!だって君は、僕の初恋の人なんだから!」

「は?」

「こんなことって本当にあるんだね。もう運命としか言いいようがないほど完璧に作られたコスじゃないか。これは君が作ったの?それともどこかで売っているのかい?
もし買ったモノなら、是非製造元もしくは制作者のペンネームなどを教えて欲しいのだがどうだろうか?」

「え?」

「いやいや、え?、じゃ・・・なくて・・・・
はぁーーーー申し訳ございません!見ず知らずの男から急に話しかけられたら迷惑ですよね。キモいですよね。本当にすみません。またどこかのイベントで出会えたら嬉しいです。それでは失礼します。」

こいつヤバい奴だわ。こんなよくわからないヤツと関わったらろくなことにならない。
は~ぁ・・・次のターゲットを早く探しに行かないと。
それにしても、先輩から紹介されるターゲットってろくなヤツいない気がするけど、何でかしら?
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