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ラブライブ!〜俺がμ'sのプロデューサー!?〜

原作: ラブライブ! 作者: プリズムの使者
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第16話「絵里、究極の一手!」

「ってことがあったんだ」

 そんな近況トークをμ'sのみんなに繰り広げていた。 

「海未ちゃんモテモテだね! 憧れちゃうね! ね、ことりちゃん」

 穂乃果が真っ先に食いついた。どことなく自己承認欲求大きめのチヤホヤされたい体質の穂乃果にとってこういう話は大好物だ。顔に羨ましいって書いてあるのが分かる。

「う、うん……」

「ことりちゃん?」

 ただまぁ、ことりちゃんは少し浮かない気分。ちょっと過剰サービスだったのが気に障ったのかな?

 そして、にこちゃんは相変わらずの部長ムーブ。

「それにしても良いファンサービスだったじゃない。部長として褒めて遣わすぞ」

「は、はぁ……」

 これには海未ちゃんも困った反応をする。

「それにしても絢瀬亜里沙ちゃんって言ったかなあの子。あの子もアイドルの素質あるよ」

「そうなんですか?」

 花陽が話に乗ってきた。こういう話、好きだもんな。

「なんかね、スタァ……って感じがしたんだ」

「スタァ?」

「ベイビィトウィンクルスタァ……って感じ」

 なんというか言葉に言い表せない良さがあった。

「どんな感じよ。抽象的過ぎて分からないわ」

 真姫ちゃんには分からなかったようだ。

「そうかな? 穂乃果はよく分かったよ」

「なんでよ」

「だって穂乃果は竜くんの幼馴染だもん。考えてることくらい分かるよ」

 穂乃果はそう言ってはにかんだ。

「なにそれ、意味分かんない!」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 そんなこんなで練習を終えた俺達は帰路につこうとしていた。トイレに寄った俺はそのまま帰ろうとしていたのだが。

「男がこんなところにいると邪魔なんだけど」

 そう真正面から声をかけられた。冷たい声だった。いたのは金髪のポニーテールの学生。前に会ったことある。生徒会長だ。

 ここは女子校だからそういうことを言われるのは想定内。この時の返しは頭の中でシミュレーション済みだ。

「ところがどっこい、俺は理事長から許可証をもらっててね。こんなのなけりゃ俺もこんなところに来ないよ。このご時世だしね」

「まぁ、それならそれでいいけど」

「じゃあ、これにて失礼します」

 理解が早い人で良かった……とはいかなかった。

「待ちなさい。まだ話があるわ」

 この人は俺にまだ話があったのだ。

「なんです?」

「あなた、絢瀬亜里沙っていう人を知ってるかしら?」

 なぜ亜里沙ちゃんのことを聞くのだ。

「えぇ、知ってますとも。μ'sのファンだってね。サインあげちゃいましたよ」

「やっぱり……」

 そういえばこの人、亜里沙ちゃんと若干ルックスが似てる気がする。まさか家族とか友人とかそういう間柄だったりするのだろうか。

 そういう疑問もあって問うてみる。

「お知り合いなんですか?」

「知り合いもなにも私はあの子の姉よ」

 姉。ド直球でありがちな回答。そういや会長の名前、絢瀬絵里って言ったっけ。なるほど、そういうことか。

「ほぇー、お姉さん。それはどうも」

 しかし、あのほんわかした亜里沙ちゃんの姉がこの冷たい目をした女とはな。お兄さんびっくりだよ。

「単刀直入に言うわ。あなた、亜里沙と関わるのはやめなさい」

「ほぅ、そりゃまたなんで? 俺は人畜無害な男ですぜ」

「この前1年生の子と痴話喧嘩してたくせによくもまぁそんなこと言えるわね」

「よくご存知で。誰から聞いたんですか? 副会長ですかい?」

「そうよ。あなた、希まで巻き込んで何を企んでるの?」

 しかし、ひどい言われようだ。まるで全部俺のせいにされているみたいじゃないか。

「あの、何でもかんでも俺のせいにするのやめてもらえます? 希さんに関しては向こうから関わってきたんでしょう」

「そうなのね……」

 自分の思惑が外れたのか渋い顔を見せる会長。俺はここぞとばかりに聞きたいことを聞いてみることにした。

「穂乃果から聞きましたよ。μ'sの邪魔ばっかりするんですってね。なんでそんなに目の敵にするんです?」

 会長は一度ため息をつく。そして呆れたような顔をしてこちらに語りかけた。

「そんなの簡単よ。あんなレベルの低いものを皆の前でやられちゃたまったもんじゃないの。つまり学校の恥ってことよ」

「レベルが低い……μ'sが?」

 少なくとも俺には彼女らのレベルが低いとは到底思えなかった。

 もしかしたら俺がスクールアイドルのことを、というかアイドルのことをよく知らないだけかもしれない。会長の目が肥えているだけかもしれない。

「μ'sも、そしてスクールアイドルそのものがね。あなた達がリスペクトしてるA-RISEだってそう。素人にしか見えないわ」

 しかし、この会長は目が肥えてるとかそんなもんじゃなかった。スクールアイドルを全否定してきたのだ。なんて奴だ。

「なかなか言ってくれるじゃないですか」

「だからあんな品のないもの、今すぐやめるべきなのよ!」

「品のないもの……」

 元来、アイドル文化に代表されるサブカルチャーは品のないものとして扱われてきた過去がある。それは今も変わらない。

 この扱いには新しい文化だからとかそういう理由があるが、だとしてもこのような物言いは文化の形成に携わってる自分としてはいかんせん遺憾の念を示すのが筋というもの。

 しかし、それをまっすぐ彼女にぶつけたって意味ないことも分かっていた。だから、おとなしく彼女の言い分を聞いてみることにした。

「あんなの見て楽しんでいる連中も同じよ! 皆下劣だわ!」

「ってことはアンタの妹も下品で下劣ってことになるよね。そこんとこいいのかい?」

「うっ……それは……」

 会長は言葉が詰まる。そりゃあそうだ。さっきの発言から妹を大切に思っているのは間違いない。だが、さっきの論調ではその妹を否定しかねない。

「それに、確かにスクールアイドルは高尚なもんじゃないだろうが、時代が求めてるのはそれなんだ。そこんとこ分かってるかい?」

「うぅ……」

「っていうかさ、実はアンタがμ'sの華々しい活躍に嫉妬してるだけなんじゃないのかい?」

 会長は俺の言葉を聞いて目に涙を浮かべた。やばい、やっちまった。言い過ぎたのだ。

 向こうがあまりにキツい論調だったのでついついカッとなってしまったが、相手はまだまだ純粋な未成年の女の子。ここまで畳み掛けられて無事でいられるわけがない。

「もうバカっ! 知らない! もう二度と学校に来ないで!!」

 会長はそう言うと俺に食ってかかった。そして、俺の胸に付いていた許可証を引きちぎって奪い、そのまま走り去ってしまった。
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