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蓮華草

原作: 銀魂 作者: iou
目次

秘密

「ひじかた、さ」

その日は、隊の話が終わり皆が足早に自室に戻って就寝する時間だった。
予定よりも早く終わったことに浮足立って、俺は土方さんの寝室の扉を開けた。

静かな部屋で一人煙草を吹かす男は、ふすまの先でゆらゆら揺れる水面の月を見ていた。
その寂しげな背中を見た時に、胸を抉られるような寂しさを感じて、掛けようとした声は途切れた。

目をそらせばいいのに、この現実から。

見なければいい。

嫌なことなんて。


自分の幸福と欲望だけを考えて、貪欲に突き進めばいい。


今まで生きてきて、出来ていたことだ。
この人に対してだって、きっとできる。


「土方・・・さん。」

あんたに気付かれないように腕を伸ばして、
驚いたあんたを見ないように
俺は静かに背中の暖かさに顔をうずめる。

あんたに本心を気付かれないように。


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蓮華草
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「総悟、大丈夫か・・・?」

「ハッ、いまさら・・っ」

内壁に感じる痛みを逃そうと腰をついつい浮かしてしまう。
「それも、そう、だな・・」

「ぅぐ・・っあ」
額にキスされて、痛みを逃すようにゆっくりと奥へ挿入されていく。
言葉にはされていないのに「大丈夫か」とても言うような、その微量のしぐさに胸が締め付けられる。

気付いてくれる優しさが、切なくも愛おしい。


「土方さん、」


隊にいるときには感じないこの優しさ。
本当に繊細な人なのだと思う。


「なんだ?」


汗ばんだ手が頬に触れ、俺の目の奥を探るように見つめる。

「なんでもない・・っ」

腕を伸ばして行為の催促をする。

いいんだ、俺の事は。
俺の中身には気づかなくていい。
上辺だけでいいから、俺を見てくれ。
痛くしてくれていいんだ。
何も考えられないように、冷たくしてくれていい。

「ん・・・っはっ」

ピストンが徐々に増して、思わず眉間が寄ってしまう。
「ぅ・・っ」

苦しい。わかっている。
この行為に対してだけじゃない。
わかってる。

「んんっあぁ・・!っあ、ひじかたさっ」


腰を打ち付けるスピードについていけなくなりそうになる。
背中に必死にしがみつく。
哀れで虚しい。

でも、俺を抱く時のあんたは、孤独から必死に逃れようとしている子供みたいで
この最中だけは必死に俺だけを求めて
俺の快楽に溺れているように見えて、堪らなくなる。


思わず微笑んでしまう。
やばい、嬉しいんだ。
俺は鬼の首を取ったかのように、誰にも見せない鬼の副長の悲しい姿をご馳走のように、俺は土方さんの情欲を頬張る。

俺の心も、この人の真実も知っているのは、俺だけだ。

「俺だけのもの・・。」

そう、この人は俺だけの男だ。
俺だけの。









_




「沖田さぁ~ん」

振り返るとガタイのいい原田が俺を追いかけてきていた。

「なんでぃ、原田。」

「いやぁ、さっきね、山崎と男のカッコイイとこについて話してて、」


山崎、か。


「で?」

「やっぱ俺は仕事できる男がかっこいいと思うんですよね。」

「ぉう。」

「ただ、山崎が、俺ら真選組は女にかっこいいとこ見せるタイミングねぇじゃないっすか。」

「まぁな。」

「キャバクラの視察とがガーンといって、かっこいいとこ一気に見せれたらいいのに」

「近藤さんと飲みに行くしかねぇな。」

「近藤さんと飲みに行くなら副長連れていった方が良い女がつきそうですね。
あの人、顔はめちゃくちゃ女に人気ありますからね。」

「まぁな。で、最近十番隊はどうだ?」


隊にいる時はご法度だ。
口が裂けても副長と関係しているなんて言えない。

あの人が女を抱いているかは知らないが、
男である俺を抱いているのは抱かれてる俺が一番知っている。







「え~、ですから」

だらだらと続く隊会議
ここのところは目立った案件がない。
平和は町にとってはいいことだが、そうなると俺たちの手柄は上がっていないことになる。

「~で、あるから」

話に飽きて、眠りそうになっている輩もでてきた。
原田も隊長ではあるが、うとうとし始めてる。
仕事ができる男がかっこいいってのは、こうゆうとこも含めてだぜ。

と、いう俺も集中力が切れ始めてる。


でも、やっぱり隊全体を仕切る男だ。
「お前ら、しっかり気を引き締めろよ。」
鬼の副長様は隙がねぇ。


「以上!解散!!」





「はぁ~」

「終わりましたね、沖田さん。」

今度は山崎だ。

監察でもある山崎はさすがに鋭い。
人の気付いてほしくないこと、秘密にしていることを見抜く力を持っている。

「最近、副長とはどうですか?」


山崎の目が光った気がした。
バレているわけではないと思う。まだ。



山崎を見つめる。
穴が開けばいい。

「山崎ィ。」

「それ以上聞いたらコロス。」



「ははは、相変わらず沖田さんは怖いなぁ。」と軽い乾いた笑いをする。
この乾いた悪いを交えた本音は山崎の掘ろうとしている時の癖だ。

「うるせぇ、俺があの人嫌いなの知ってんだろ。」


この監察相手にどこまで、ごまかせるか。



「そういえば、副長といえば今日はあの人と夜はサシ飲み行くみたいですね。

 なんでも、ここ数日は夜、飲みに出てるみたいですけど」


詰められた気がした。
背中がひやっと凍る。
突かれたくないことだ。忘れていたのに。


「お前は、隊の中まで嗅ぎまわって本当に悪趣味だな。」

「真選組の内部も監察しておかないと。裏切者が出ないように。」

そうゆうと山崎はふふふと笑った。

「そうだな。副長は特に要注意だな。」



喰えねぇヤツだ。












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