ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
目次

人格

「ん~、それは人によると思う。なにかのきっかけで別の人格がでる場合は、基本の人格が主導権を持っていて、別の人格はそのきっかけ以外では出てこられない。もしくは、それぞれの人格が認め合い、分担して現れるってこともある。朔夜の場合は後者かもしれない。パパを引き出すなら、きっかけが必要ってことね」
「きっかけ……ですか。私は彼らのことをよく知らないので、あちらの世界の方の協力が必要ってことですね」
「そうなるわね」
「となると、雛河くんのホロの出来具合待ちってところかな」
「雛河くん、頑張っているわよ」
「無理していなければいいんだけど。頼んだ私が言うのもなんだけど」
「彼は嬉しいんじゃないかな。朱ちゃんに頼りにされて。なんか、今の一係もいい感じよね。一時はどうなるかと思ったけど」
 そう言った唐之杜の視線の先に、狡噛慎也がいた。
「そのようだな。ひっかきまわし、裏切った俺がいうのもなんだが、うまくいっているようで安心した」
「ほんとよ。慎也くんはさ、もう少し、朱ちゃんに感謝した方がいいんじゃない?」
「今回の件、解決に向けて協力をする。それで勘弁してくれっていうのはむしが良すぎるか」
「そうね。上層部出し抜いて海外出国させるっていうんだから、バレたら朱ちゃん、クビくらいじゃすまないわよ」
 などと脅す。
「ああ、いえ。その辺は大丈夫ですから。狡噛さんはホロが出来次第、捜査に加わってください」
「了解した」

 雛河の頑張りでホロが仕上がったのはその翌日のこと。
 四体分のホロが仕上がり、朱はそのデータを入れた簡易型の通信機を持ち、自分のマンション部屋へと戻り、そこで待っていた三人を連れて再び公安局に戻ったのは、夕方近くだった。

 三人を迎えに行ってくるといって出て行ったきり半日、連絡も途切れ途切れ、なにをするために戻るのが遅くなるのかも言わずにいたため、戻ったとたん、待ちかまえていた宜野座に怒鳴られてしまう。
「まったく、今度から執行官を必ずひとり、連れて歩いてくれ。おまえの留守を預かり待つ者のことも少しは考えてくれ。で、なにをやっていたんだ? 聞く権利はあると思うが?」
 と問う宜野座の態度に、ふたりの狡噛が、
「おいギノ。あからさまに無視するな!」
 と突っかかってくる。
「いいたいことがあるなら言え。というか、なんで俺たちは女装なんだ?」
 つまり仕上がったホロは男女各ニ体ずつ、その女版は問答無用で狡噛にわたっている。
 朱が意図として渡したわけだが、ケダモノをみる、または見下したような視線で見られながらも存在を無視してやろうとする宜野座の態度に不満なのだ。
 まだ笑われた方がいい。
「狡噛慎也だと知られないようにするためだろう。常守がおまえを守るために考えたことだ。それに俺はなんとも思ってはいない」
 といいながらも、見る目はそうは言っていない。
「まあ、なにもそこまで女女しなくても……とは思うが」
 とりあえず、狡噛慎也からは想像もできないほどのかわいらしい女の格好をしているとだけ言っておく。
 狡噛慎也であると知られるとマズいことは、当人たちがよく自覚をしている。
 これ以上は脱線で、場の雰囲気を悪くするだけだと、いいたい言葉を飲み込むことにした。
 場が落ち着いたのを確認した朱は、
「三人にこちらの東金財団が取得した医療関係の特許、医学技術などでの成功例などのデータを見てもらいました。公安にある資料だけでは厳しいと思ったので、医学に特化したデータベースを保管しているところに行っていました」
「それで、収穫はあったのか?」
「それなりにありました。医学のことはよくわかりませんが、別世界を知る三人の見解をまとめると、ある程度の技術まではどこの世界でも発展していくが、あるラインが上はその世界のあり方などが左右されるそうです。たとえば体外受精が認可され当たり前の世界もあれば、認可はするが許可を得るまでが大変であったり、認可されていてもほとんど利用しようとは思わないなど。そこで、東金財団が持っている特許については……」
 そこからは僕が話そう……と、槙島が挙手した。
「いくつもある世界のざっくり説明は常守監視官の説明で十分なんだけどね、今回の、ここと僕らの世界に限ってだけをいえば、僕たちの世界で認可されていない、または奨励が表に出ていない医学を使用した形跡がある。ことクローンに関して、試験管ベイビーに関してと、かなり偏っている。クローンはこちらでも認められていないようだが、ところどころ名称をかえ説明を濁らせてはいたが、こちらで手にしている縢のクローン記録と酷似している方法が残されていたね。それともうひとつ、記憶の移植とでもいえばいいのかな、クローンの体に記憶を乗りかえさせる。もしくは、人格すら造り上げた人を造るというのもあったね。あと、興味深いものがひとつ。人格を植え付けるというものがあったよ。それって、東金朔夜のことじゃないのかな?」
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。