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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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白昼に晒されて

 チェ・グソンの爆弾ネタは瞬く間に世界中に拡散、各国のニュースでも取り上げられるようになるのに、一日もかからなかった。
 その情報がでたことで、征陸は乳母の親戚関係、そして関わった弁護士から話を聞くことができるようになる。
 弁護士の方は青柳検事が働きかけてくれたこともあり、トントン拍子にことが進む。
「槙島一派は敵に回すと厄介ね」と青柳。
「でも、味方だとこんなにも心強いとは……検事としてはやりにくい相手だわ」
「それは刑事も同じだよ。今回は助かった。なにも聞かずに協力してくれたこと、いつか返す」
 征陸は苦笑いを浮かべながら言う。
「いいわよ。私は前にしてもらったことへのお礼返しのつもりだったし。それに、縢と東金の件は前々から引っかかっていたのよ。これで一掃できるとは思わないけど、今、東金美佐子は拘留中でしょう? 警察上層部はほどほどで適当に処理をしろといえなくなり、徹底的に調べるしかなくなるわ。問題は縢家ね。当主不在なのよ。留守を預かっている使用人も行き場所は知らないらしいわ」
 その当主というのが東金朔夜だろうと征陸は思った。
 だが、それはあえて青柳には言わなかった。
 言ったところで、別世界にいる朔夜を連れ戻せるのは限られた者たちだけで、今もなお別世界に行くことができるなど、一般人には知られるわけにはいかない。
 勝手に行くのは違法となった今では……

 征陸のところに朗報が届いたのはネットに流れてから三日目のこと。
 警察組織あげて東金財団の一斉捜査が行われ、厳重にロックのかかったデータの解析に成功したというものだった。
 サイバー対策に力を入れること数十年、今では腕利きのハッカーやクラッカーたちの就職先として人気のサイバー対策部署である。
「その中になにがあったんてす?」とチェ・グソン。
 彼としてはここまで動かすほどのネタの提供をしてくれたのだ、もったいぶるのは失礼だろう。
 征陸はひとこと、「縢秀星のクローン成功までの観察記録だ」といった。
 そのデータのコピーを手に入れたことも付け加えた。
「嬢ちゃん、これであっちの世界に行き、すべてを明るみにして解決ができる。観察記録にはな、動画の記録もあってな、それがこの世界にはないものが映っていた。見知った者ならそれがどこの世界で撮られたものか一目瞭然だ。確認するか?」
「いいえ。私は征陸さんを信じています。行きましょう、シビュラの世界に」
「そうだな。だが、刑事の俺は誰かを連れて飛ぶことはできない。チェ・グソン、頼まれてくれないか?」
「いやですね。もとよりそのつもりでしたよ。だって、狡噛さんを連れ戻すのが任務でしたから。ただ、これだけの人数を一度には……」
「ならば僕も行こう」と槙島。
「え? ちょっとそれは……シビュラの世界はマズいのでは?」
「大丈夫だよね、常守監視官。そっちにはホロがある、僕にも貸してくれるでしょう?」
 とニコリ微笑まれては朱も無碍にはできない。
 もとより、仲間は大いにことしたこがないし、知っている者がいるというのも心強い。
 なにより、今、槙島をこちらの世界に置いていく方が危険だろう。
 例のネタの提供者が槙島本人だとは誰も知らない。
 ゆえに、渦中の東金美佐子同様、槙島聖護も捜査対象で、現在行方を追われ、近々指名手配されることになっていた。
「東金朔夜、縢秀星を連れ帰らないと、僕の無実は証明できないからね。なりふり構っていられないよ」
 といいながらもヘラヘラしている。
 危機を感じているらしいけれど、そうは見えない。
「東金美佐子との密談映像、モザイクなしで公開したんですよね……しかも、前後の会話はあえて流さなかったから、あれだけみれば槙島さんも共犯ですよ。なぜ?」
「インパクトが大事、今回は東金財団に警察の捜査を入れることが目的。まあ、このあとのことは征陸刑事ががんばってくれると思うから、とりあえずほとぼりがさめるまで、そっちの世界に逃避させてもらうってことで、よろしくね」

 こうして、征陸は単身で、チェ・グソンは朱と須郷を、そして槙島は狡噛慎哉を担当してシビュラの世界へと飛んだ。
 ほぼ同時に、ほぼ同じ場所に入り口を開き飛んだので、出口もそう離れた場所ではないはずだということだった。
 ただ、征陸の住居から飛んだので、シビュラの世界でその場所がどこになるのかはわからない。
 運頼みの移動だったが……

「ここは?」
 朱と須郷とチェ・グソンが同時に無事飛び越えることができた。
「えっと、私の部屋、です」
「へえ、あっちの征陸さんの部屋とこっちの常守監視官の部屋が繋がってるのですか、興味深いですね」
「あ、ははははっ。でも、私の部屋でよかったです。室内にこもっていれば街頭スキャナにはひっかかりません」
「たしかにそうですが、男が女性の部屋に長居というのは……」と居心地が悪そうな須郷。
 そこに、やや遅れて征陸が。
 続いて槙島と狡噛慎哉が無事到着する。
 それぞれ時間差がでたのは飛ぶときに使った鍵の性能だったらしい。
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