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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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緊急事態発生!

 公安局全体に緊急事態発生の一報が届いたのは、朱たちが別世界に向かった直後だった。
 霜月美佳が公安局に戻るとすぐに禾生局長から呼び出しを受けた。

「霜月監視官。常守監視官が拉致されたというのは本当かね?」
「はい。当時、常守監視官と捜査していた執行官、須郷が目の前で起きたと証言しております」
「しかしだね。数刻前に出て行ったのは、その須郷執行官と霜月監視官、きみたちふたりだけなんだが?」
「実は、事件はもっと前におきていました。監視官拉致など、知られては恥と思いまして、できるだけ一係だけで片づけようと動いていたところ、犯人らしき人物から連絡があり、相手の指示通り、監視官、執行官ひとりずつで向かいました。ですが、要求は事件そのものを公安が知らないことへの苛立ちと脅しでした。常守監視官の命を最優先と考え、犯人の要求を聞き入れ、こうして一報を入れました」
「……ふむ。もろもろ不可思議なところはあるが、考えられないこともない範囲だな。だが、そもそも拉致をされた瞬間を執行官はみていたのだろう? なぜドミネーターを使わなかった?」
「須郷がいうには、東金朔夜と出たため、躊躇したとのことです。また追跡をしなかったのは、監視官不在での単独捜査は規律違反であるため、致し方なく……と」
「ほう、なかなかまじめな執行官のようだな、その須郷という人物は。だが、問題にすべき件はそこではないな。東金朔夜、本当に彼だったのか?」
「外見は別人だったと言っていました。ホロで姿を誤魔化していたようです。そこで、我々としては東金財団を調べたいと思っています。閲覧権限が入っている事項を解放していただけないでしょうか」
「なぜ、そこまで?」
「死んだはずの東金朔夜が生きていたというのであれば問題です。医療に特化している東金財団なら、死者を蘇らせることもできるのでは? と考えています」
「ばかばかしい。死者を生き返らせるだと?」
「今のところ、それくらいしか思いつきません。ただ、もうひとつ可能性がなくもないのですが」
「なんだ、もったいぶらずに言ってみなさい」
「バカげていると思うのですが、クローンなら死者を蘇らせるより現実的かと。そのため、研究施設もろもろ、すべに対し捜査できるよう取りはからってください」
「研究施設は部外者立ち入り禁止、政府で管轄しているものもある。私の一存で簡単に決定はできない。考えさせてくれ」
「……わかりました。では、東金家の個人宅はどうでしょう」
「好きにしたまえ。ただし、拒まれない証拠を提示することが条件だ。常守監視官を連れ去った人物が東金朔夜だという証拠は?」
「あります。音声データが」
「それを提出したまえ。返答はその後だ」

※※※

 局長室を出た美佳はどっと疲れが押し寄せ、ふらふらと壁にもたれ掛かる。
 シビュラの姿を知る少ない人物であるが、彼女は朱と違い、みていないことにすると約束をすることで生きていることができていた。
 とはいえ、それは東金朔夜とその母親が単独でしたことなので、ほかのシビュラの一部はどう思っているのかはわからない。
 彼女が真実を口外しないかぎり、手を下すつもりはないというところは一致しているようだ。
 分析室に戻り、おおむねなんとか朱のたてた作戦通りになっていることを報告。
 当然、一報を入れたのでほかの部署でも監視官拉致の事実を知ることになる。
 しかし局長が出した結論は内々に捜査をすることだった。
 研究施設への捜査許可が下りたのは、それから数刻たってからのこと。
 この処置を朱ならどう勘ぐっただろうか。
 美佳は深読みすることなく、
「じゃあ、先輩のたてた計画通りに、適当に捜査して」
「適当って、霜月、それでは怪しまれてしまうぞ」と宜野座。
「局長から、内々にと言われています。それと、犯人が東金朔夜であることに関して箝口令がでました。知っているのは録音を聞いた綿々と禾生局長だけで、それ以外に知らせる必要はないのことです。だから、東金朔夜を調べていると知られるのはダメです」
「だが、東金は調べるんだろう?」
「そうです。それに関しては内通があったということにしてあります」
「しかし、それと拉致との関係性がなさすぎる」
「だから、さらに二手にわかれます。六合塚さんと須郷は私と東金に関してを。宜野座さんはほかの係から助っ人がきますのでそちらに合流、そちらの監視官の管轄下で先般の捜査をしてください。かき乱してください。それが狙いなんですから」
 真実を知っているからこそ、かき乱せるのだ。
 宜野座は短く「わかった」とだけ返した。
「それと、狡噛だっけ? 面倒なことはしないでよね」
「了解している。だが、東金の情報共有はしてほしい」
「おとなしく、私の指示にしたがっている内は好きにして」
「それも了解だ」
「それでは、行動してください。えっと、私たちは東金の研究施設に行きます。朔夜が作られた場所はどこですか?」
「それなら、もうだしてあるわよ」と唐之杜。
「ではそこに行きます」
 美佳を先頭に、六合塚、須郷に扮した狡噛が分析室を出て行った。
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