原村和 展開 4
「だから、私は泪をこらえて、必死に思想したんです。具体から抽象をへて論理の型にあてこむ作業を、短い間で幾万と繰り返しました。麻雀で培った論理性と創造力がこのような場所で発揮されるとは、夢にもおもいませんでしたね」
「そうしてこの決死の苦行のおかげで、私はこの座談会の皆さんを納得させうるであろう、渾身の思想をおもいつきました」
「それはプラトンのいうイデア的であり、しかしアリストテレスのプラトン批判のように、イデアと現実の物体が離れているというわけではない、つまり現実と理想が共和的な状態であること。イデアとヒュレーが渾然一体とした始祖たるアルファ。つまりすがくんの今あなたの股間にぶら下がっているチ〇ポこそが、私たちが求めて止まなかったチ◯ポの美だったというわけです」
「え? 意味が分からない? 簡単にいえば、すがくんのチ〇ポが魅力的ということ、それ自体が哲学になると確信したんですよ」
「この哲学が思い至った暁には、私は彼女らの遠大なチ〇ポ美学論争に負けないよう、熱弁を奮いました」
「彼女らは固唾を飲んで私の思想に耳を傾けていました。すがくんのチ〇ポという現実物体を媒介にして、チ〇ポイデアを作り出す過程。我ながら見事にできたとおもいます。まるで創成期の天地創造をこの目に収めているようだ、と。まるで己の論の優位性を誇示しているみたいで申し訳ないのですが、ある座談会員は仰っていましたね」
「彼女らチ〇ポ美学家たちは、見事な美学を作り出した私を称賛しました。君こそがチ〇ポ美学の巨人、あるいはチ〇ポ神」
「はい? 『なぜ原村が俺のアソコのことを知っているんだ?』ですって? 覚えていないんですか?」
「まあ、いいです。説明しましょう。私がいつ、すがくんのチ〇ポを魅力的だったか知ったかというと、初対面のときです。私はあの時のことを鮮明におぼえていますよ。なぜならすがくんはその当時の私の心に深い傷を残したんです、すがくんはさっきの反応から覚えていないようですけど」
「少しそれを説明しましょうか」
「まず、私の普通の男の人は、出あったときわたしの胸を凝視します。それだけなら、まあいつものことですし、たいして気に留めないのですけれども」
「すがくんは其れとはぜったいにぜったいにちがいましたね?」
「ああっ♡ ぴくりと肩を動かしてほんとかわいいですね。思い出しましたか? そう、あなた、すがくんは私の胸を見て、私に見せびらかすようにそのズボンにテントを作って見せたのです」
「あ、いえいえ、あやまる必要はないですよ。そのことに関してはもう気にしないでください」
「確かに“あの出来事”が起こるまでは、すがくん、あなたという、雄々しい男性の象徴をまざまざとみせつけられて、しかも私の目の前でどうどうと、あまりに大胆で厚顔無恥なのだけれども、男性的で暴力的なバイタリティにあふれていて、わたしはそんな男性の性欲を間近に受けてしまったものですから、軽いPTSDを罹ってしまったのです」
「それは結構つらい日々でしたよ?」
「でも、これが最も重要なことなんですけど、“あの出来事”があってから私はその事に一切の忌避感をもち合わせなくなったんです。なぜなら“あの出来事によって”私は男性の如き性欲をその身に宿しましたから、その時のすがくんの感情が理解できるのです」
「ですから、もう全然きにしてないですし、いまの私は、その時のすがくんに感情移入してその事さえ愛おしくおもうことができます」
「ちょっとわかりづらかったですかね、もう少し解説を加えましょう。この体験は私にとって過去の私の心に深く刻みつけられたトラウマ、自らの女性性に対立する男性性だったんです。自分にとって理解のないもの、しかも私と正反対にある暴力的なものを見せつけられるって、怖いことですよね?」
「すがくんが私のまえで思いっきり勃起してみせたことは、私に未知の――理解のないものを見せつける――暴力的な男性性を提示することでした」
「こわくてこわくてたまらない。背すじが震える、恐怖に身悶えする。ですがね、私はこれを理解するという形で飲み下すことも、また拒絶するという形で吐き出してしまうことも、できなかった」
「それは私が男性性にたいして無知だったからです。――ほら麻雀部はすがくんを除いて女性がいないでしょう――それに今に至るまで私は男性との関わりが少なかった、だから私にはこの体験を感情内で浮遊させることしかできなかったんです」
「嫌悪や恐怖に対して何の手段も取れないというのは、私の心を蝕むのに十分でした。少しずつ身を焼かれているような気分でしたよ」
「ですが、“あの出来事”のおかげで、私の悩みは完全になくなりました。世界がもたらしたあの甘美な酔いしれる感覚。女性性を男性性的なものに変化させたことは、私に安らぎを与え、ひいては男性性に対しての理解を与えてくれたのです」
「そしていま、先ほどお話せせていただいたチ〇ポ美学的なイデアと現実のすがくんのチ〇ポが融合しようしているんです。美学的な象徴と、過去の私にとってのトラウマが反転した、つまり、すがくんの憎さ余って可愛さ百倍のチ〇ポのことですが――が私の目のまえにある」
「これは、見ざるをえない、いや、見なければならない。神さまのためにも、私自身の努力の精髄としても」
「世界の倫理が何といっても、たとえすがくんが拒否したとしても、私はみなければならない」
「だからすがくん、チ〇ポ、見せてくれませんか?」
「そうしてこの決死の苦行のおかげで、私はこの座談会の皆さんを納得させうるであろう、渾身の思想をおもいつきました」
「それはプラトンのいうイデア的であり、しかしアリストテレスのプラトン批判のように、イデアと現実の物体が離れているというわけではない、つまり現実と理想が共和的な状態であること。イデアとヒュレーが渾然一体とした始祖たるアルファ。つまりすがくんの今あなたの股間にぶら下がっているチ〇ポこそが、私たちが求めて止まなかったチ◯ポの美だったというわけです」
「え? 意味が分からない? 簡単にいえば、すがくんのチ〇ポが魅力的ということ、それ自体が哲学になると確信したんですよ」
「この哲学が思い至った暁には、私は彼女らの遠大なチ〇ポ美学論争に負けないよう、熱弁を奮いました」
「彼女らは固唾を飲んで私の思想に耳を傾けていました。すがくんのチ〇ポという現実物体を媒介にして、チ〇ポイデアを作り出す過程。我ながら見事にできたとおもいます。まるで創成期の天地創造をこの目に収めているようだ、と。まるで己の論の優位性を誇示しているみたいで申し訳ないのですが、ある座談会員は仰っていましたね」
「彼女らチ〇ポ美学家たちは、見事な美学を作り出した私を称賛しました。君こそがチ〇ポ美学の巨人、あるいはチ〇ポ神」
「はい? 『なぜ原村が俺のアソコのことを知っているんだ?』ですって? 覚えていないんですか?」
「まあ、いいです。説明しましょう。私がいつ、すがくんのチ〇ポを魅力的だったか知ったかというと、初対面のときです。私はあの時のことを鮮明におぼえていますよ。なぜならすがくんはその当時の私の心に深い傷を残したんです、すがくんはさっきの反応から覚えていないようですけど」
「少しそれを説明しましょうか」
「まず、私の普通の男の人は、出あったときわたしの胸を凝視します。それだけなら、まあいつものことですし、たいして気に留めないのですけれども」
「すがくんは其れとはぜったいにぜったいにちがいましたね?」
「ああっ♡ ぴくりと肩を動かしてほんとかわいいですね。思い出しましたか? そう、あなた、すがくんは私の胸を見て、私に見せびらかすようにそのズボンにテントを作って見せたのです」
「あ、いえいえ、あやまる必要はないですよ。そのことに関してはもう気にしないでください」
「確かに“あの出来事”が起こるまでは、すがくん、あなたという、雄々しい男性の象徴をまざまざとみせつけられて、しかも私の目の前でどうどうと、あまりに大胆で厚顔無恥なのだけれども、男性的で暴力的なバイタリティにあふれていて、わたしはそんな男性の性欲を間近に受けてしまったものですから、軽いPTSDを罹ってしまったのです」
「それは結構つらい日々でしたよ?」
「でも、これが最も重要なことなんですけど、“あの出来事”があってから私はその事に一切の忌避感をもち合わせなくなったんです。なぜなら“あの出来事によって”私は男性の如き性欲をその身に宿しましたから、その時のすがくんの感情が理解できるのです」
「ですから、もう全然きにしてないですし、いまの私は、その時のすがくんに感情移入してその事さえ愛おしくおもうことができます」
「ちょっとわかりづらかったですかね、もう少し解説を加えましょう。この体験は私にとって過去の私の心に深く刻みつけられたトラウマ、自らの女性性に対立する男性性だったんです。自分にとって理解のないもの、しかも私と正反対にある暴力的なものを見せつけられるって、怖いことですよね?」
「すがくんが私のまえで思いっきり勃起してみせたことは、私に未知の――理解のないものを見せつける――暴力的な男性性を提示することでした」
「こわくてこわくてたまらない。背すじが震える、恐怖に身悶えする。ですがね、私はこれを理解するという形で飲み下すことも、また拒絶するという形で吐き出してしまうことも、できなかった」
「それは私が男性性にたいして無知だったからです。――ほら麻雀部はすがくんを除いて女性がいないでしょう――それに今に至るまで私は男性との関わりが少なかった、だから私にはこの体験を感情内で浮遊させることしかできなかったんです」
「嫌悪や恐怖に対して何の手段も取れないというのは、私の心を蝕むのに十分でした。少しずつ身を焼かれているような気分でしたよ」
「ですが、“あの出来事”のおかげで、私の悩みは完全になくなりました。世界がもたらしたあの甘美な酔いしれる感覚。女性性を男性性的なものに変化させたことは、私に安らぎを与え、ひいては男性性に対しての理解を与えてくれたのです」
「そしていま、先ほどお話せせていただいたチ〇ポ美学的なイデアと現実のすがくんのチ〇ポが融合しようしているんです。美学的な象徴と、過去の私にとってのトラウマが反転した、つまり、すがくんの憎さ余って可愛さ百倍のチ〇ポのことですが――が私の目のまえにある」
「これは、見ざるをえない、いや、見なければならない。神さまのためにも、私自身の努力の精髄としても」
「世界の倫理が何といっても、たとえすがくんが拒否したとしても、私はみなければならない」
「だからすがくん、チ〇ポ、見せてくれませんか?」
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