戦う意味を
バーサーカーからの逃走を終えて、士郎の自室で二人が体を休めている。ようやくモードレッドが意識を取り戻す。
「シロウ…オレは負けたんだな」
「俺達が負けたんだ」
完膚なきまでに負けた。聖剣の力は凄まじく。応ずるも砕かれてしまったんだ。アーチャーの後ろ姿を覚えている。何より、最後に彼との繋がりが消える直前で結果を知った。
たった一騎で、あの最強の片腕を切り落としたんだ。
「アイツは強かったよ。おかげで戦える」
「隻腕の父上でも恐ろしい」
弱音を零しているのが嬉しい。不安はある。隻腕の騎士王と戦う。
それでも互角。勝てるかは分からない。下手をすれば敗北するだろう。
一度刻まれた絶望は根強い。幸せを求めたからこそ、二人の胸の内には重たい不安が渦巻いているんだ。
「なあシロウ」
不安と恐怖に震える声で、それでも譲れない願いを言葉にする。
「勝ちてえ。勝ちてえよ」
ようやく得られたんだ。許せたんだ。罪を抱えながら生きていくと思った。なのに駄目なのか。望めば得られるとは言わないさ。
それでも、ようやく幸せになりたいと願えたんだ。
「オレは色んな想いを踏みにじって、それでも良いのかな?」
何も言わずに抱きしめた。それだけで良かった。
「…ありがとう」
静かな部屋に互いの吐息だけが聞こえる。妙に気恥ずかしかった。相手との近さを感じる。良い匂いだ。惹かれ合っていく。鼓動が聞こえた。
愛おしさがあふれ出てきたのは、2人ともなのだろう。
「なあ、キス。その、えっと」
ぽろりと零れた彼女の言葉を受けて、士郎の我慢は限界を超えた。
「んっ」
そっと触れるような口づけ。情愛を伝えるには淡くて、消える様なキスをした。
2人の顔が真っ赤に染まる。自分の心を抑えられないなんて、初めての経験だったのだろう。愛するを許してくれる相手がいる。
とても幸せだった。許されるならば、子を成したい。
「えへへ。えっちじゃないのに、とっても幸せだ…」
その先を知っている。お互いに求めている。だからさ。幸せを知っているから、明日の決戦を超えずには至れない。
「勝ちたい。勝ちたいよ。シロウ、頑張るからさ」
もう一度抱擁する。柔らかく小さな体、モードレッドの弱さを包んで。
「信じてるぞ」
「オレもそうさ。シロウの信頼を信じてる」
だからこそ、これから待ち受ける戦いに挑めるんだ。熱く燃える信念の痛みを感じながらも、ただただ。
残された敵は一つ。バーサーカー陣営との戦いが待っている。
決意なく。得られたのはちっぽけな自己許容だけ。互いに幸せを恐れているからこそ、支え合いながら進んでいくんだ。
昨日は抱き合ったまま眠って、一緒に朝を迎える。
「えへへ。おはようシロウ」
愛おしそうに笑うモードレッドを見ると、一気に目が覚めた。
そのまま、一緒に朝食を作り始めた。彼女は相変わらず黒のスーツ姿だ。似合っている。モードレッドらしい。
「こうか?」
「そう。落ち着いて丁寧にやれば、難しくないだろう?」
「おう!」
楽しみながら2人で料理を作る。難しい品はない。彼女には豆腐を切ってもらったり、スクランブルエッグを焼いてもらったり。
意外にも手慣れた様子。聞いてみると。
「これでも騎士だからな。最低限の自炊は出来るぜ」
野営などの影響だろうか? 自慢げに笑う姿は可愛かった。
2人仲良く作った料理を並べて、声を合わせていただきます。
「やっぱりシロウのご飯は美味しい」
幸せそうに彼女が食べている。今日は大河は来ていない。少しだけ落ち着いた食卓であった。
「モードレッドが手伝ってくれたからだ」
誰かと料理するなんて初めての経験で、それが彼女だったから尚更大白かったのだ。
楽しそうに、ぎこちなく微笑む士郎を見て素直に言う。
「へへ。名前呼ばれるのって、なんか良いな。きゅんとくる」
「そういえば、丁寧な口調は捨てたのか?」
出会った頃は敬語だった。今の彼女を知っているから、ちょっと聞いてみたい。ギャップ萌えであった。
「ん~どっちもオレだけどよ。気を緩ませたのはこっちだ」
自然体で素の彼女は、今の振る舞いなのだろう。
そう言われれば自然で似合っている。
「嫌か?」
「好きだよ」
モードレッドの明るい笑顔は変わらない。照れた愛おしさも変わらない。だったら、何も文句はないのだ。
「…ずるい」
拗ねた様にご飯を食べるのが愛おしくて、今度は素直に微笑んだ。
「教会から指令が降りたんだったか」
決戦の場所と時刻を指定されている。今夜、最後の戦いに決着がつくんだ。受けて2人は落ち着いていた。
焦りと動揺は夜に終わらせて、戦いを待っているだけだ。
「あの男の裏を感じるんだよな」
丁度良く。バーサーカー陣営と戦力が釣り合っているんだ。あの男の意図を感じられた。
何が目的化は分からないが、綺礼に手出しは出来なかろうよ。
「逃げるわけにもいかねえさ」
「それはそうだ」
2人声を合わせてごちそうさまを言った。こんな日常が好きだ。続けたい。幸せを許し合いたいから、戦いに向けて心を整えていった。
「シロウ…オレは負けたんだな」
「俺達が負けたんだ」
完膚なきまでに負けた。聖剣の力は凄まじく。応ずるも砕かれてしまったんだ。アーチャーの後ろ姿を覚えている。何より、最後に彼との繋がりが消える直前で結果を知った。
たった一騎で、あの最強の片腕を切り落としたんだ。
「アイツは強かったよ。おかげで戦える」
「隻腕の父上でも恐ろしい」
弱音を零しているのが嬉しい。不安はある。隻腕の騎士王と戦う。
それでも互角。勝てるかは分からない。下手をすれば敗北するだろう。
一度刻まれた絶望は根強い。幸せを求めたからこそ、二人の胸の内には重たい不安が渦巻いているんだ。
「なあシロウ」
不安と恐怖に震える声で、それでも譲れない願いを言葉にする。
「勝ちてえ。勝ちてえよ」
ようやく得られたんだ。許せたんだ。罪を抱えながら生きていくと思った。なのに駄目なのか。望めば得られるとは言わないさ。
それでも、ようやく幸せになりたいと願えたんだ。
「オレは色んな想いを踏みにじって、それでも良いのかな?」
何も言わずに抱きしめた。それだけで良かった。
「…ありがとう」
静かな部屋に互いの吐息だけが聞こえる。妙に気恥ずかしかった。相手との近さを感じる。良い匂いだ。惹かれ合っていく。鼓動が聞こえた。
愛おしさがあふれ出てきたのは、2人ともなのだろう。
「なあ、キス。その、えっと」
ぽろりと零れた彼女の言葉を受けて、士郎の我慢は限界を超えた。
「んっ」
そっと触れるような口づけ。情愛を伝えるには淡くて、消える様なキスをした。
2人の顔が真っ赤に染まる。自分の心を抑えられないなんて、初めての経験だったのだろう。愛するを許してくれる相手がいる。
とても幸せだった。許されるならば、子を成したい。
「えへへ。えっちじゃないのに、とっても幸せだ…」
その先を知っている。お互いに求めている。だからさ。幸せを知っているから、明日の決戦を超えずには至れない。
「勝ちたい。勝ちたいよ。シロウ、頑張るからさ」
もう一度抱擁する。柔らかく小さな体、モードレッドの弱さを包んで。
「信じてるぞ」
「オレもそうさ。シロウの信頼を信じてる」
だからこそ、これから待ち受ける戦いに挑めるんだ。熱く燃える信念の痛みを感じながらも、ただただ。
残された敵は一つ。バーサーカー陣営との戦いが待っている。
決意なく。得られたのはちっぽけな自己許容だけ。互いに幸せを恐れているからこそ、支え合いながら進んでいくんだ。
昨日は抱き合ったまま眠って、一緒に朝を迎える。
「えへへ。おはようシロウ」
愛おしそうに笑うモードレッドを見ると、一気に目が覚めた。
そのまま、一緒に朝食を作り始めた。彼女は相変わらず黒のスーツ姿だ。似合っている。モードレッドらしい。
「こうか?」
「そう。落ち着いて丁寧にやれば、難しくないだろう?」
「おう!」
楽しみながら2人で料理を作る。難しい品はない。彼女には豆腐を切ってもらったり、スクランブルエッグを焼いてもらったり。
意外にも手慣れた様子。聞いてみると。
「これでも騎士だからな。最低限の自炊は出来るぜ」
野営などの影響だろうか? 自慢げに笑う姿は可愛かった。
2人仲良く作った料理を並べて、声を合わせていただきます。
「やっぱりシロウのご飯は美味しい」
幸せそうに彼女が食べている。今日は大河は来ていない。少しだけ落ち着いた食卓であった。
「モードレッドが手伝ってくれたからだ」
誰かと料理するなんて初めての経験で、それが彼女だったから尚更大白かったのだ。
楽しそうに、ぎこちなく微笑む士郎を見て素直に言う。
「へへ。名前呼ばれるのって、なんか良いな。きゅんとくる」
「そういえば、丁寧な口調は捨てたのか?」
出会った頃は敬語だった。今の彼女を知っているから、ちょっと聞いてみたい。ギャップ萌えであった。
「ん~どっちもオレだけどよ。気を緩ませたのはこっちだ」
自然体で素の彼女は、今の振る舞いなのだろう。
そう言われれば自然で似合っている。
「嫌か?」
「好きだよ」
モードレッドの明るい笑顔は変わらない。照れた愛おしさも変わらない。だったら、何も文句はないのだ。
「…ずるい」
拗ねた様にご飯を食べるのが愛おしくて、今度は素直に微笑んだ。
「教会から指令が降りたんだったか」
決戦の場所と時刻を指定されている。今夜、最後の戦いに決着がつくんだ。受けて2人は落ち着いていた。
焦りと動揺は夜に終わらせて、戦いを待っているだけだ。
「あの男の裏を感じるんだよな」
丁度良く。バーサーカー陣営と戦力が釣り合っているんだ。あの男の意図を感じられた。
何が目的化は分からないが、綺礼に手出しは出来なかろうよ。
「逃げるわけにもいかねえさ」
「それはそうだ」
2人声を合わせてごちそうさまを言った。こんな日常が好きだ。続けたい。幸せを許し合いたいから、戦いに向けて心を整えていった。
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