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君と僕との

原作: その他 (原作:君の膵臓をたべたい) 作者: rokomoko
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その日は突然やってくる。

「ドサッ」
僕は床に落ちていた本を手にとって、見つめる。
「共病文庫…?」
ペラペラ
(膵臓。弱ってる。死にたくない。もうじき死んでしまう…)
内容を見た感じ誰かの病人の日記のようだ。それも重度の。
だけど、内容はあまり暗くは感じられなかった。
どちらかと言うと明るめな内容が多いように感じられた。
「あまり、他人のものを見るのもよくないな」
そう思った僕は、周りを見渡す。落とした本人が近くにいるはずだ……
「いない…。はぁ…。」
「カウンターにでも、置いておくか…」
早く学校に行きたかったが、この本を放っておくわけにもいかず。カウンターに歩きだそうと立ち上がった瞬間、
「まさか…君が持ってるなんて、驚きだね!」
その声は聞き覚えがある声だった。明るいというか、元気というか、僕とは正反対な性格の彼女の声。
(確か、この声はクラスの同級生の…)
「見ちゃった?(笑)それ私のなんだ。共病文庫って言うんだけど私が日記として毎日綴ってるんだ!」
「…」
「まさか、君に見られちゃうとはな(笑)
いろいろな場所探しても見つからないからどうしようかと思ってたら、君が見つけてくれた。」
「君は確かクラスメイトの?何君だっけ?」
「……志賀だよ」
(圧倒されるな、この雰囲気。)
「志賀くんかー」
「君は?」
「えー!覚えてくれてないの!?悲しいなー(笑)山内だよ!山内!結構クラスじゃ人気あるんだけどなー私!」
「…そっか、覚えておくよ。はい、これ。それじゃ、また」
「えっ、ちょっと待ってよ!これ見たんでしょ!?この本?」
「あぁ、うん。」
「何か言ってくれないの?大丈夫なの?とか大変だねとか!?」
「…別に。」
「…」
「プッ、プハハハ(笑)面白いね!君!私てっきり心配してくれると思った(笑)」
「病人だったら普通は心配するでしょ?(笑)」
「初めてだな、私。
病気のこと知っててそんな風に接してくる人って(笑)」
「別に僕が心配したところで君の病気は治らないだろ?」
「プッ(笑)、病気が治る治らない関係なしにそこは心配するでしょ?普通(笑)」
(早く会話を切り上げて、この場から離れたい…)
「今日君はどうしてここに?君ももしかして大変な病気だったりして?(笑)」
「別にただの風邪だよ。」
(面倒な事になる前にこの場を抜け出そう…)
「へー、そうなんだ。あっ、そうだ!この本読んじゃったんだったら、私から一つお願いがあるんだけどk…」
「それじゃ、僕午後の授業出ないといけないから。」
「えー!今大事な事言おうとしてたじゃん!」
「僕なんかとこんな無駄な時間を過ごすよりも、もっと大切な、君のしたい事をすることに時間を費やした方がいいと思うけど。」
「例えば誰と?」
「大切な友達とか、恋人とか。君を僕よりもっと知っている誰かとか。」
「ふーん。それじゃあさ、一緒に行こうよ。学k…」
「電車に間に合わなくなるから。それじゃ。」
いろいろ思うところはあったが、下手に首を突っ込まないほうがいい。僕が付き合える相手じゃない。彼女もそれを望んでいるはず…。

僕は、足早にその場を離れた。

だけど、彼女は…
「ねぇー!同じ学校でしょ?一緒に行こうよー!」
「方向だって一緒じゃん!電車だったら走ったら間に合うからー!待ってよー!」
「僕が君と一緒に学校へ行くメリットはないと思うけど…」
「私が一緒に行きたいからいいの!待ってってー!」
「…僕にこだわる必要ないだろ?」
「あっ、待ってってばー!むー!」
「ねぇ、そっち学校の方向じゃないよー!ねーってば!」
「こっちの方が近道なんだよ。それじゃ。僕は、ここで。」
「もー、わかったーよ。一緒に学校にいくのはヤメた。」
「でも、一つだけお願いしてほしいの。」
振り向いたその時の彼女は、先程の明るさは微塵もなく、怯えた小鹿のように震え、とても悲しそうな顔をして言った。
「この病気のことは誰にも言わないでほしいの。」
「学校の友達には誰にも言ってなくて。知ってるのは家族と多分君だけ。」
「私が死ぬまで、秘密にして欲しいの。」
「これで二人だけの秘密だねー(笑)」
「…わかったよ。別に言う友達もいないし。」
「君が、学校で誰かと喋ってるの見たことないもんね(笑)」
「いいだろ、別に。君には関係ないし。」
「もー、またそんなこと言ってー!」
「そんなんじゃ、いつまでたっても友達できないよ、君(笑)」
「僕は、会話をしたり仲良くしたりする友達はいらない。僕は、僕の頭の中で全て完結してるからね。」
「どーゆーこと??」
「僕は、人間観察が趣味なんだ。その人間が僕をどんな風に思っているか。考え想像することができる。」
「その考えが違うかもしれないじゃない」
「間違っていてもそれはそれでいいんだ。別にそれを間違っているのか、正解なのかを僕は、それを求めてはいないからね。」
「ふーん。(そーゆーことか…)」
「…何?」
「うーん!なんでもない。約束は守ってくれそうだし、大丈夫そうだね!」
「それじゃ、また後でね、志賀君」

なんで、彼女がまた後でと言ったのかはその日の放課後明らかになる。
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