15
風見はついて行きたくないとばかりに剛田から報告書を数枚奪い取るといそいそとパソコンに向かった。
喫煙所に着くなり美弥妃はライターの火をつけた。そしてジェイにもらった紙をそれに近づけていた。
降谷「いいんですか。」
降谷が後ろから声をかけるも美弥妃はなんのためらいも見せずにそのまま紙に火をつけた。
「…彼らはもう死んだことになっています。彼らの生きている証拠は消さなければいけませんから。…それが例え彼らとの唯一の接点だとしても。…こんな紙切れより、彼らがたしかに生きているという事実の方が大切です。」
美弥妃は紙が燃え切るのを見届けると降谷の隣を通り過ぎて本部へ向かおうとした。
が、降谷に腕を掴まれて「えっ」と声を漏らして振り返った。
降谷「どこに行くつもりですか?」
「本部に…」
降谷「何しに?」
「報告書ともろもろの仕事を…」
降谷「ダメです。帰りますよ」
「いや、でも仕事が」
降谷「まだ痛むでしょう。その傷。」
降谷はそう言いながら彼女の足を見た。
「大丈夫です」
そうきっぱり言い返す彼女に降谷は大きなため息をついた。
降谷「言って聞く人じゃないか…」
そう呟くと諦めたと言わんばかりに降谷は彼女の後ろを歩いた。
美弥妃は本部に戻るなりパソコンを開くと一通のメールに釘付けになった後、集中モードに入り脚を汚していたことも忘れたのか傷口が思い切り机の角に当たるのも御構い無しにカタカタと何かを打ち込み始めた。
剛田「矢神さん、ほ、報告書おわり…ました…」
剛田はげっそりした様子で報告書を彼女の元に持ってきた。
「ん。ありがとうございます。そこ、置いててください。お疲れ様です」
剛田「はい…お疲れ様です…」
剛田はそう言いながらフラフラと本部を出ていった。報告書よりも降谷のお説教がこたえたのだろうか。
風見「矢神さん、こちらも終わりました。ここに置いておきますね。」
「ん。ありがとうございます。お疲れ様です。」
風見「お疲れ様です。………降谷さん」
風見はすぐに風見に次の仕事の指示をもらおうとしたが今日は帰っていいと言われて風見は心労もありすんなりと帰ることにした。
そして本部には降谷と美弥妃の2人だけが残った。
いつ帰らせようかと降谷は時折美弥妃の方を見るが集中が切れる様子はなかった。
…が
ふと美弥妃がいつものウィダーインゼリーを取ろうとデスクの引き出しを開けた時に包帯に血が滲んでいたのを見て降谷は迷わず彼女の方にずかずかと向かった。
そしてゼリーの蓋をぱきっと開けようとした彼女の腕を掴むなり怒鳴りつけた。
降谷「何してるんですか?!」
「え?」
いきなり腕を掴まれて怒られた美弥妃は訳がわからないとばかりに首をひねったが集中力が切れたのか突然顔を歪めた。
「痛い。」
そう言ってマイペースにも降谷腕から自分の腕を引っこ抜くと足の傷の包帯をはずし始めた。
予備の包帯を持ち合わせていたのか痛々しい傷口に包帯を巻き始めた。
降谷はその様子を黙って見ていたがあまりにも不器用なので手を貸すことにした。
降谷「貸してください。」
「あ。ありがとうございます」
降谷に包帯を巻かれている間美弥妃はさっき奪われかけたゼリーを食べ始めた。
降谷「全く…集中しすぎて机の角に傷口をあてたまま仕事するなんてどんな神経してるんですか!」
手当を終えて立ち上がるなりガミガミと怒る降谷をよそに美弥妃はウィダーインゼリーを咥えたまま降谷のことをじっと見ていた。
降谷「大体またそんなゼリーばかり食べて。ちゃんと食事はとっているんですか?!」
「ゼリーたべてます。あとコーヒーとか紅茶とか」
降谷「それは食事のうちに入りません。きちんと栄養のあるものをバランスよく食べないと傷も治りませんよ?!」
降谷がそういうと美弥妃は突然考え込んだ。
「あ。お母さんだ」
咥えていたゼリーを口から離すとぽろりとそんなことをこぼす彼女に降谷は「は?」と一言。
「降谷さんってお母さんみたいですよね!よく言われませんか?」
降谷「言われません…!!」
降谷は拳を握りしめ青筋を立てて心底イライラした様子だった。
「お母さんって呼んでもいいですか?」
降谷「お断りします!!」
「そういうと思ってました」
美弥妃はそういうとハハっと笑った。
降谷「くだらないこと言ってないで帰りますよ」
「これだけ終わらせたら帰ります」
降谷「明日でも間に合うでしょう。」
再び仕事を始めようとした美弥妃の腕をつかむと降谷はパソコンの電源を素早く落とした。
「あと少しだったのに…」
残念がる美弥妃の腕をひき、彼女の荷物を持つと降谷は扉の方へと歩いて行った。
降谷の愛車の前に着くと美弥妃は荷物をかえしてくれと言い出した。
降谷「あなたどうせ病院からタクシーでここに来たんでしょう。送ります。早く乗って下さい」
降谷はそういって助手席に彼女を押し込むと運転席に乗り込み車を発進させた。
「すみません。手間かけちゃって。降谷さんの帰る時間が遅くなっちゃいましたね。」
喫煙所に着くなり美弥妃はライターの火をつけた。そしてジェイにもらった紙をそれに近づけていた。
降谷「いいんですか。」
降谷が後ろから声をかけるも美弥妃はなんのためらいも見せずにそのまま紙に火をつけた。
「…彼らはもう死んだことになっています。彼らの生きている証拠は消さなければいけませんから。…それが例え彼らとの唯一の接点だとしても。…こんな紙切れより、彼らがたしかに生きているという事実の方が大切です。」
美弥妃は紙が燃え切るのを見届けると降谷の隣を通り過ぎて本部へ向かおうとした。
が、降谷に腕を掴まれて「えっ」と声を漏らして振り返った。
降谷「どこに行くつもりですか?」
「本部に…」
降谷「何しに?」
「報告書ともろもろの仕事を…」
降谷「ダメです。帰りますよ」
「いや、でも仕事が」
降谷「まだ痛むでしょう。その傷。」
降谷はそう言いながら彼女の足を見た。
「大丈夫です」
そうきっぱり言い返す彼女に降谷は大きなため息をついた。
降谷「言って聞く人じゃないか…」
そう呟くと諦めたと言わんばかりに降谷は彼女の後ろを歩いた。
美弥妃は本部に戻るなりパソコンを開くと一通のメールに釘付けになった後、集中モードに入り脚を汚していたことも忘れたのか傷口が思い切り机の角に当たるのも御構い無しにカタカタと何かを打ち込み始めた。
剛田「矢神さん、ほ、報告書おわり…ました…」
剛田はげっそりした様子で報告書を彼女の元に持ってきた。
「ん。ありがとうございます。そこ、置いててください。お疲れ様です」
剛田「はい…お疲れ様です…」
剛田はそう言いながらフラフラと本部を出ていった。報告書よりも降谷のお説教がこたえたのだろうか。
風見「矢神さん、こちらも終わりました。ここに置いておきますね。」
「ん。ありがとうございます。お疲れ様です。」
風見「お疲れ様です。………降谷さん」
風見はすぐに風見に次の仕事の指示をもらおうとしたが今日は帰っていいと言われて風見は心労もありすんなりと帰ることにした。
そして本部には降谷と美弥妃の2人だけが残った。
いつ帰らせようかと降谷は時折美弥妃の方を見るが集中が切れる様子はなかった。
…が
ふと美弥妃がいつものウィダーインゼリーを取ろうとデスクの引き出しを開けた時に包帯に血が滲んでいたのを見て降谷は迷わず彼女の方にずかずかと向かった。
そしてゼリーの蓋をぱきっと開けようとした彼女の腕を掴むなり怒鳴りつけた。
降谷「何してるんですか?!」
「え?」
いきなり腕を掴まれて怒られた美弥妃は訳がわからないとばかりに首をひねったが集中力が切れたのか突然顔を歪めた。
「痛い。」
そう言ってマイペースにも降谷腕から自分の腕を引っこ抜くと足の傷の包帯をはずし始めた。
予備の包帯を持ち合わせていたのか痛々しい傷口に包帯を巻き始めた。
降谷はその様子を黙って見ていたがあまりにも不器用なので手を貸すことにした。
降谷「貸してください。」
「あ。ありがとうございます」
降谷に包帯を巻かれている間美弥妃はさっき奪われかけたゼリーを食べ始めた。
降谷「全く…集中しすぎて机の角に傷口をあてたまま仕事するなんてどんな神経してるんですか!」
手当を終えて立ち上がるなりガミガミと怒る降谷をよそに美弥妃はウィダーインゼリーを咥えたまま降谷のことをじっと見ていた。
降谷「大体またそんなゼリーばかり食べて。ちゃんと食事はとっているんですか?!」
「ゼリーたべてます。あとコーヒーとか紅茶とか」
降谷「それは食事のうちに入りません。きちんと栄養のあるものをバランスよく食べないと傷も治りませんよ?!」
降谷がそういうと美弥妃は突然考え込んだ。
「あ。お母さんだ」
咥えていたゼリーを口から離すとぽろりとそんなことをこぼす彼女に降谷は「は?」と一言。
「降谷さんってお母さんみたいですよね!よく言われませんか?」
降谷「言われません…!!」
降谷は拳を握りしめ青筋を立てて心底イライラした様子だった。
「お母さんって呼んでもいいですか?」
降谷「お断りします!!」
「そういうと思ってました」
美弥妃はそういうとハハっと笑った。
降谷「くだらないこと言ってないで帰りますよ」
「これだけ終わらせたら帰ります」
降谷「明日でも間に合うでしょう。」
再び仕事を始めようとした美弥妃の腕をつかむと降谷はパソコンの電源を素早く落とした。
「あと少しだったのに…」
残念がる美弥妃の腕をひき、彼女の荷物を持つと降谷は扉の方へと歩いて行った。
降谷の愛車の前に着くと美弥妃は荷物をかえしてくれと言い出した。
降谷「あなたどうせ病院からタクシーでここに来たんでしょう。送ります。早く乗って下さい」
降谷はそういって助手席に彼女を押し込むと運転席に乗り込み車を発進させた。
「すみません。手間かけちゃって。降谷さんの帰る時間が遅くなっちゃいましたね。」
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