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上司と一緒に犯人を捕まえたゆりは戻って来るなり疲れた顔をしていた。
退庁時間間際だというのに今回の件について報告書をまとめたり、犯人の処置を考えなければいけないのだ。
降谷は黙々と仕事を進める彼女を横目で見たが視線は交わることはなく、自分の仕事を終えて帰宅しようとしたときだった。
上司達が何やら楽しそうに言い合っていた。
A「ははっ!悪ぃ悪ぃ!嫁さんには俺からも言っとくからさ!」
B「ったくよー!頼むぜー?お前のせいなんだからなー?」
「「はははははっ」」
楽しそうな会話が聞こえて来てからゆりの手はピタリと止まり、突然立ち上がり口元を押さえて急いで部屋を出て言ったのだ。
降谷はそれを不審に思いながらも帰り支度をしていた。
暫くして心配そうな顔をしたあやりと、大人しく苦笑いを浮かべるゆりが戻って来た。
あやり「ねぇ、本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫^^…あ、あやりちゃんもう上がりだよね?お疲れ様^^」
あやり「…」
「ほんと、ただの生理痛だから^^;何か大げさにしちゃってごめんね?」
あやり「何かあったらいいなよ?」
「ありがと^^…気をつけて帰ってね^^」
あやり「お疲れ様…」
あやりはそのまま浮かない顔をして警察庁を後にした。
そして降谷も暫くして帰り支度を済ませると帰ろうと席を立った時だった。
「お疲れ様です」
降谷「あぁ、お疲れ様。」
何時もなら軽い話を挟んだお疲れ様が、今は一線を引いたような、そんな挨拶になってしまった。
あの日のことを謝ろうにも降谷はプライドが邪魔して素直になれないでいた。
この先、それを後悔するなんて知らずに。
それから暫くして、徐々に組織の仕事へも復帰していった降谷は以前のように落ち込んだ姿を見せることはなくなっていた。
水沢夫妻と飲みに行く元気も出て来たくらい降谷の心は回復していた。
そんな時、更に事件は起きてしまうもので。
上司「そろそろ降谷と椿には一緒に行動してもらう。…同じ組織に潜入する身として単独行動よりもいいと判断した。」
降谷「同じ組織に潜入?!…椿をですか?!」
上司「あぁ、降谷には言ってなかったな。…椿には降谷より前から組織に身を置いてもらっている。…最近になって聞かされることはなかったか?…"ストレガ"…という酒の名前」
降谷「ストレガ…!!」『組織のNo.2!!』
上司「そうだ。椿は…」
降谷「今すぐ彼女をこの案件から外して下さい!!彼女は…!」『ゆりが組織になんて危険すぎる!!』
『やっぱり私とは行動したくないか…それなら…』「すみません、やはり単独行動の方がいいかと思います。降谷さんも嫌がっているようですし、このまま別で動きましょう。…万が一どちらかがNOCとバレた場合、共倒れになりかねません」
上司「成る程…それも一理あるが…」『最近の椿はいつ倒れてもおかしくないほどだ…強制的に休みを取らせても組織の方の仕事を増やしている…このままよりは降谷と…』
「私と近くにいるということはそれだけ降谷さんへの負担も危険も増します。このまま単独行動させて下さい。」
降谷「!!」
上司「そこまで言うのならもう少しこのまま様子を見よう。」『心配だがそれもそうか…』
「ありがとうございます。…では、私は仕事に戻ります。失礼いたします。」
降谷と目を合わせる事なく会議室を出て言ったゆりはそのままトイレへと駆け込んだ。
「…っケホッ…ケホッ…ぅっ…ケホッケホッケホッ…」
先程の降谷の態度や、自分で発言したこととはいえ、やはり葬儀の時の言葉がトラウマになってしまっていた。
"お前のせいだ"
"お前と居ると皆が死んでしまう"
その言葉に激しい胃痛とほとんど食事のとっていない為か出てくるのは血液だけで、その量も吐血する度に日に日に増えていた。
個室に入る余裕もなく洗面台で激しく咳き込んでいた。
そんな時に見つかってしまうのはいつもあやりだった。
あやり「ゆり…?」
「ケホッ…あ…あやりちゃん…ぅっ…ケホッケホッケホッ…」
あやり「ゆりっ!血がっ…!」
ゆりが落ち着くまでなにも言わずにあやりはゆりの背中をさすった。
「ごめんね…^^汚いもの見せちゃった…」
あやり「そんな事気にしてる場合じゃないでしょ!なにがただの生理痛よ!嘘ついてっ!…病院には行ったの?!」
「あはは…大した事ないの…本当に…」
あやり「ちょっと、最近頑張りすぎなのよ!!」
「そんなこと…ないよ…^^」
あやり「ふざけないで!!こんなになるまで仕事して!バカじゃないの!!」
「ごめんごめん、本当に大丈夫なの^^」
あやり「どこが大丈夫よ!!ゆりはいつも…!!」
あやりがそう言いかけた時、ゆりはずるずるとその場にしゃがみ込んでしまった。
あやり「え、ちょっと、ゆりっ…?大丈夫?」
「大丈夫、ごめんね、迷惑かけてばかりで」
しゃがみ込んで俯いているゆりの顔は見えないが必死に心配をかけまいと口角を上げようとしている弱々しい姿にあやりはもう怒れなかった。
あやり「ごめん…怒鳴って。…とりあえず座れるところ行こっか。」
「部屋まで戻りたいんだけど…いいかな…?」
なにを言っても聞きそうにないゆりにあやりはゆりを支えながら部屋に戻ることにした。
退庁時間間際だというのに今回の件について報告書をまとめたり、犯人の処置を考えなければいけないのだ。
降谷は黙々と仕事を進める彼女を横目で見たが視線は交わることはなく、自分の仕事を終えて帰宅しようとしたときだった。
上司達が何やら楽しそうに言い合っていた。
A「ははっ!悪ぃ悪ぃ!嫁さんには俺からも言っとくからさ!」
B「ったくよー!頼むぜー?お前のせいなんだからなー?」
「「はははははっ」」
楽しそうな会話が聞こえて来てからゆりの手はピタリと止まり、突然立ち上がり口元を押さえて急いで部屋を出て言ったのだ。
降谷はそれを不審に思いながらも帰り支度をしていた。
暫くして心配そうな顔をしたあやりと、大人しく苦笑いを浮かべるゆりが戻って来た。
あやり「ねぇ、本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫^^…あ、あやりちゃんもう上がりだよね?お疲れ様^^」
あやり「…」
「ほんと、ただの生理痛だから^^;何か大げさにしちゃってごめんね?」
あやり「何かあったらいいなよ?」
「ありがと^^…気をつけて帰ってね^^」
あやり「お疲れ様…」
あやりはそのまま浮かない顔をして警察庁を後にした。
そして降谷も暫くして帰り支度を済ませると帰ろうと席を立った時だった。
「お疲れ様です」
降谷「あぁ、お疲れ様。」
何時もなら軽い話を挟んだお疲れ様が、今は一線を引いたような、そんな挨拶になってしまった。
あの日のことを謝ろうにも降谷はプライドが邪魔して素直になれないでいた。
この先、それを後悔するなんて知らずに。
それから暫くして、徐々に組織の仕事へも復帰していった降谷は以前のように落ち込んだ姿を見せることはなくなっていた。
水沢夫妻と飲みに行く元気も出て来たくらい降谷の心は回復していた。
そんな時、更に事件は起きてしまうもので。
上司「そろそろ降谷と椿には一緒に行動してもらう。…同じ組織に潜入する身として単独行動よりもいいと判断した。」
降谷「同じ組織に潜入?!…椿をですか?!」
上司「あぁ、降谷には言ってなかったな。…椿には降谷より前から組織に身を置いてもらっている。…最近になって聞かされることはなかったか?…"ストレガ"…という酒の名前」
降谷「ストレガ…!!」『組織のNo.2!!』
上司「そうだ。椿は…」
降谷「今すぐ彼女をこの案件から外して下さい!!彼女は…!」『ゆりが組織になんて危険すぎる!!』
『やっぱり私とは行動したくないか…それなら…』「すみません、やはり単独行動の方がいいかと思います。降谷さんも嫌がっているようですし、このまま別で動きましょう。…万が一どちらかがNOCとバレた場合、共倒れになりかねません」
上司「成る程…それも一理あるが…」『最近の椿はいつ倒れてもおかしくないほどだ…強制的に休みを取らせても組織の方の仕事を増やしている…このままよりは降谷と…』
「私と近くにいるということはそれだけ降谷さんへの負担も危険も増します。このまま単独行動させて下さい。」
降谷「!!」
上司「そこまで言うのならもう少しこのまま様子を見よう。」『心配だがそれもそうか…』
「ありがとうございます。…では、私は仕事に戻ります。失礼いたします。」
降谷と目を合わせる事なく会議室を出て言ったゆりはそのままトイレへと駆け込んだ。
「…っケホッ…ケホッ…ぅっ…ケホッケホッケホッ…」
先程の降谷の態度や、自分で発言したこととはいえ、やはり葬儀の時の言葉がトラウマになってしまっていた。
"お前のせいだ"
"お前と居ると皆が死んでしまう"
その言葉に激しい胃痛とほとんど食事のとっていない為か出てくるのは血液だけで、その量も吐血する度に日に日に増えていた。
個室に入る余裕もなく洗面台で激しく咳き込んでいた。
そんな時に見つかってしまうのはいつもあやりだった。
あやり「ゆり…?」
「ケホッ…あ…あやりちゃん…ぅっ…ケホッケホッケホッ…」
あやり「ゆりっ!血がっ…!」
ゆりが落ち着くまでなにも言わずにあやりはゆりの背中をさすった。
「ごめんね…^^汚いもの見せちゃった…」
あやり「そんな事気にしてる場合じゃないでしょ!なにがただの生理痛よ!嘘ついてっ!…病院には行ったの?!」
「あはは…大した事ないの…本当に…」
あやり「ちょっと、最近頑張りすぎなのよ!!」
「そんなこと…ないよ…^^」
あやり「ふざけないで!!こんなになるまで仕事して!バカじゃないの!!」
「ごめんごめん、本当に大丈夫なの^^」
あやり「どこが大丈夫よ!!ゆりはいつも…!!」
あやりがそう言いかけた時、ゆりはずるずるとその場にしゃがみ込んでしまった。
あやり「え、ちょっと、ゆりっ…?大丈夫?」
「大丈夫、ごめんね、迷惑かけてばかりで」
しゃがみ込んで俯いているゆりの顔は見えないが必死に心配をかけまいと口角を上げようとしている弱々しい姿にあやりはもう怒れなかった。
あやり「ごめん…怒鳴って。…とりあえず座れるところ行こっか。」
「部屋まで戻りたいんだけど…いいかな…?」
なにを言っても聞きそうにないゆりにあやりはゆりを支えながら部屋に戻ることにした。
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