弐話 "味方か敵か"
「先生!先輩!皆!!」
「勘右衛門!!無事で良かった!!」
「いや、ちゃっかり怪我してるから」
久々知が尾浜の側へ行く。
同輩と再会出来た喜びで笑顔になる。
「――――良い仲間と出会えていて良かったな…」
黒狐の存在に気付き、一斉に向く。
近くに居たのに気配を全く感じなかったのだ。
「貴方は…?」
土井が問う。
と同時にふところに手を入れ、戦闘体制に入る。
「私は…!ゲホッ、ゲホッ!!」
黒狐が咳き込む。
「や、やっぱりクナイの毒が!!」
「いや、違う、天照の反動だ…気にする事はない…」
尾浜が駆け寄ろうとするのを制止する。
「天照…あの黒い炎の事か…」
仮面の二人組を焼き尽くした黒い炎。
焼き尽くすまで決して威力が弱まらなかった黒い炎。
恐ろしすぎて思い出すだけで鳥肌が立ってくる。
「文次郎!黒い炎が出たのか!?」
「小平太…空気を読めよ…で、天照ってヤツはそんなに反動とかいうのが大きいのか?」
詰め寄ってくる七松を何とか抑えながら食満は黒狐に問う。
「本来は目からの出血程度だ…だがこの世界に来てから初めて出した所為もあって…ここまで大きくなったと思う」
それよりも、と黒狐は尾浜の所に向かう。
尾浜、潮江、食満以外が戦闘体制に入る。
「そんなに警戒しなくても良い…手当をするだけだ…」
「いや、僕よりも繊月さんの方を…!!ガハッ!」
直後、尾浜の口から大量の血が出る。
黒狐は「やはりな」と彼の鳩尾に手を当てる。
「リョクの術が埋め込まれていたか…気付くのが遅れて済まなかった…」
ぽうっと手の周りが緑色に光る。
黒狐以外全員、息を呑んだ。
「その光は…?」
善法寺が問う。
医療に携わっている彼には気になって仕方なかった。
「医療忍術、掌仙術だ…これで大体の傷は癒えるだろう」
もう良いだろう、と手を離す。
尾浜は「痛くない…」と呟いた。
「取り敢えず学園に帰るとするか…」
「山田先生!」
黒狐を置いて行くのかと尾浜は呼び止めようとする。
「繊月、と言ったか…貴方も付いて来て欲しい」
「これは肯定以外の選択肢は無さそうだな」
山田は行くぞと走っていく。
その後に続いて皆が走る。
「――――先に待っている」
黒狐がそう言ったのを誰も聞く事は無かった。
「山田先生」
山田の後ろを走る土井が呼ぶ。
「あの黒狐…奴は本当に我々の味方なのでしょうか?」
尾浜が隣まで走ってくる。
「繊月さんは僕達の味方です!!」
「確かに奴は味方だと言っていた…だか、それが嘘という事もあり得るんだぞ?」
潮江の言う通りである。
だが、尾浜には黒狐が嘘を付いているようには思えなかった。
自分の方が怪我が重い筈なのに尾浜を優先し、
尚且つ"気付くのが遅れた"と謝ってきたのだ。
尾浜は絶対に味方だと信じていた。
「勘右衛門、さっき"天照"の話が少し出てたけど…それって何なの?」
不破が思い出したかのように問いかけた。
「そうだぞ文次郎!留三郎!黒い炎!!黒い炎が出たのか!?」
小平太も話に入ってくる。
反応こそ示さないが、他の者も気になってはいるようだ。
「天照…奴がそう言った直後に仮面の二人組の体に黒い炎が出たんだ」
「発火する素振りも無しにだ…しかも二人組が燃え尽きるまで勢いが止まらなかった…」
今思い出しても身震いすると留三郎は言う。
「ほう…発火させる事なく黒い炎を出しただと…?」
火器を扱う立花は黙ってはいられなかったようだ。
「あぁ…しかも、口から火を出してたし…」
「口から火!?妖術もを使うのか!?」
これには流石の立花も驚く。
お前の見間違いでは無いのかと疑ってしまう。
本当だってと必死で潮江は言う。
「それは僕も見ました…豪火球…とか何とか言ってましたね…」
尾浜がそう言うなら事実かと立花は呟く。
俺の言う事は信じられないのかよと潮江はため息つく。
「兎に角…うちの生徒を助けてくれたんだ…話は聞いても良いかとは思っている」
「山田先生!?」
「聞いた方が良いかもしれません!目的を阻止するとも言っていましたし…!」
ますます謎になってくる黒狐に不信を抱きながらも一行は足早に忍術学園へと向かっていった。
「…待ったぞ…」
忍術学園に…黒狐が先に着いていた。
「な!?あり得ん!!我々よりも後に出たというのに!?」
安藤が指をさす。
「暗部の移動速度は桁違いだ」
黒狐はそう言い、ため息つく。
「こちらだと私の位は里長の次なんだがな…まさか指をさされるとは…」
そして再び尾浜の所に行く。
「傷と毒は大丈夫か?」
「お陰様で良くなりました!それよりも貴方のキズの方が…」
心配無い、待ってる間に治しておいたと答え、他の皆の方を向く。
「ここの責任者に会わせてもらえないだろうか…」
「貴様!学園長先生のお命を「安藤夏之丞先生」…!何故私の名を!?」
安藤の反応を無視して話し続ける。
「この学園が狙われているんだ…どうか会わせていただきたい…!」
"学園が狙われている"
黒狐は確かにそう言った。
仮にも本当の事なら、放ってはおけない。
「付いて来なさい」
山田は黒狐の言葉を信じてみる事にした。
「勘右衛門!!無事で良かった!!」
「いや、ちゃっかり怪我してるから」
久々知が尾浜の側へ行く。
同輩と再会出来た喜びで笑顔になる。
「――――良い仲間と出会えていて良かったな…」
黒狐の存在に気付き、一斉に向く。
近くに居たのに気配を全く感じなかったのだ。
「貴方は…?」
土井が問う。
と同時にふところに手を入れ、戦闘体制に入る。
「私は…!ゲホッ、ゲホッ!!」
黒狐が咳き込む。
「や、やっぱりクナイの毒が!!」
「いや、違う、天照の反動だ…気にする事はない…」
尾浜が駆け寄ろうとするのを制止する。
「天照…あの黒い炎の事か…」
仮面の二人組を焼き尽くした黒い炎。
焼き尽くすまで決して威力が弱まらなかった黒い炎。
恐ろしすぎて思い出すだけで鳥肌が立ってくる。
「文次郎!黒い炎が出たのか!?」
「小平太…空気を読めよ…で、天照ってヤツはそんなに反動とかいうのが大きいのか?」
詰め寄ってくる七松を何とか抑えながら食満は黒狐に問う。
「本来は目からの出血程度だ…だがこの世界に来てから初めて出した所為もあって…ここまで大きくなったと思う」
それよりも、と黒狐は尾浜の所に向かう。
尾浜、潮江、食満以外が戦闘体制に入る。
「そんなに警戒しなくても良い…手当をするだけだ…」
「いや、僕よりも繊月さんの方を…!!ガハッ!」
直後、尾浜の口から大量の血が出る。
黒狐は「やはりな」と彼の鳩尾に手を当てる。
「リョクの術が埋め込まれていたか…気付くのが遅れて済まなかった…」
ぽうっと手の周りが緑色に光る。
黒狐以外全員、息を呑んだ。
「その光は…?」
善法寺が問う。
医療に携わっている彼には気になって仕方なかった。
「医療忍術、掌仙術だ…これで大体の傷は癒えるだろう」
もう良いだろう、と手を離す。
尾浜は「痛くない…」と呟いた。
「取り敢えず学園に帰るとするか…」
「山田先生!」
黒狐を置いて行くのかと尾浜は呼び止めようとする。
「繊月、と言ったか…貴方も付いて来て欲しい」
「これは肯定以外の選択肢は無さそうだな」
山田は行くぞと走っていく。
その後に続いて皆が走る。
「――――先に待っている」
黒狐がそう言ったのを誰も聞く事は無かった。
「山田先生」
山田の後ろを走る土井が呼ぶ。
「あの黒狐…奴は本当に我々の味方なのでしょうか?」
尾浜が隣まで走ってくる。
「繊月さんは僕達の味方です!!」
「確かに奴は味方だと言っていた…だか、それが嘘という事もあり得るんだぞ?」
潮江の言う通りである。
だが、尾浜には黒狐が嘘を付いているようには思えなかった。
自分の方が怪我が重い筈なのに尾浜を優先し、
尚且つ"気付くのが遅れた"と謝ってきたのだ。
尾浜は絶対に味方だと信じていた。
「勘右衛門、さっき"天照"の話が少し出てたけど…それって何なの?」
不破が思い出したかのように問いかけた。
「そうだぞ文次郎!留三郎!黒い炎!!黒い炎が出たのか!?」
小平太も話に入ってくる。
反応こそ示さないが、他の者も気になってはいるようだ。
「天照…奴がそう言った直後に仮面の二人組の体に黒い炎が出たんだ」
「発火する素振りも無しにだ…しかも二人組が燃え尽きるまで勢いが止まらなかった…」
今思い出しても身震いすると留三郎は言う。
「ほう…発火させる事なく黒い炎を出しただと…?」
火器を扱う立花は黙ってはいられなかったようだ。
「あぁ…しかも、口から火を出してたし…」
「口から火!?妖術もを使うのか!?」
これには流石の立花も驚く。
お前の見間違いでは無いのかと疑ってしまう。
本当だってと必死で潮江は言う。
「それは僕も見ました…豪火球…とか何とか言ってましたね…」
尾浜がそう言うなら事実かと立花は呟く。
俺の言う事は信じられないのかよと潮江はため息つく。
「兎に角…うちの生徒を助けてくれたんだ…話は聞いても良いかとは思っている」
「山田先生!?」
「聞いた方が良いかもしれません!目的を阻止するとも言っていましたし…!」
ますます謎になってくる黒狐に不信を抱きながらも一行は足早に忍術学園へと向かっていった。
「…待ったぞ…」
忍術学園に…黒狐が先に着いていた。
「な!?あり得ん!!我々よりも後に出たというのに!?」
安藤が指をさす。
「暗部の移動速度は桁違いだ」
黒狐はそう言い、ため息つく。
「こちらだと私の位は里長の次なんだがな…まさか指をさされるとは…」
そして再び尾浜の所に行く。
「傷と毒は大丈夫か?」
「お陰様で良くなりました!それよりも貴方のキズの方が…」
心配無い、待ってる間に治しておいたと答え、他の皆の方を向く。
「ここの責任者に会わせてもらえないだろうか…」
「貴様!学園長先生のお命を「安藤夏之丞先生」…!何故私の名を!?」
安藤の反応を無視して話し続ける。
「この学園が狙われているんだ…どうか会わせていただきたい…!」
"学園が狙われている"
黒狐は確かにそう言った。
仮にも本当の事なら、放ってはおけない。
「付いて来なさい」
山田は黒狐の言葉を信じてみる事にした。
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