原村和 展開 2
思うに色欲を司っている天は、もちろん俺に味方しなかったようだ。
「ん? どうしたんですか? すがくーん♡」
茜さす空き教室に、夕陽と同じぶんだけ紅潮した原村和が現れた。
〓〓〓
紅潮している顔貌、咲が突然した変態行動。この状況で導かれる答えはひとつしかない。だが、無駄だと半ば知りながら、俺は一縷の希望に懸けて原村に問いかけた。
「なあ原村……。どうしてここに?」
「そんなの決まってるじゃないですか♡ すがくんが魅力的だからですよ♡」
文法上、この会話文はいくらの変調もきたしていない。だが会話の意味論上、これは破綻しているとしかまったく判断できない。要するに原村は咲と同じ病魔に侵されているのだろう。
ちなみに、ここにいる理由が君が魅力的だがらというのは、現代において多くパンツ脱いだ変態おじさんがJKに突撃する理由に用いられる。
「うーん魅力的っていうか......高ぶるんですよねぇ♡ 今朝から始まったんですよね、この気持ちは。私の友達も皆様子がおかしくなっちゃいました」
「まあ、そんなことは、いま私が抱えているすがくんへの深い愛のまえにはどうでもいいことです♡ 今まで咲さんにしかこのほわほわっとした気持ちは感じてなかったんですけど、今朝からはすがくんに感じています♡」
一瞬、その言葉を聞いて俺は世界から消されてしまいそうな大罪(レズへの境界侵犯)を犯したような気がした。
「引き攣ったような顔をして、どうかしましたか? でも、そんな顔もかわいいですよ♡
それでここからが本題なんですけど、すがくんってチ◯ポ大きいですよね?」
「は?」
原村から発してはならない言葉を聞いた気がした。えっ、チ◯ポ?
咲は狂乱、加えて世界の変異した空気感に酔っていたから、チ◯ポとかいっても仕方ないだろう。
だが、たとえ原村も、この世界が急変して、咲のように酔ってしまったとしても、だとしても、清楚を崩して欲しくはなかった。チ◯ポとかいって欲しくなかった。
「ほら男の子って大きい胸が好きじゃないですか? —あ、ごめんなさい。こんな唐突じゃ、意味わからないですよね」
この時にはまだ予想だにしていなかった、“これ”、がこんなにやばい代物だったとは。
〓〓〓
「—ことの始まりは今朝の出来事です。私ちょっと早く家を出てて、朝の7:40くらいには教室にいたんですよ」
「日が満ちた静謐な教室でした。音といえば私のほかに人が三人いたんですけど皆自席で本を読んでまして、それくらいですかね。」
「そのうちで、“あの出来事”は起こりました。最初は背すじにぴんと電気が流れたような気がして、おかしいなって思ったんですけど特に異常はなかったから、別段意識していませんでした」
「この異常が浮き彫りになったのは一時間目が終わって休み時間に入った時です。私の友達が駆けつけて、私に小声で、ねちゃねちゃと、背徳を犯してしまう人間のあの甘い堕ちきった声音で言ったんです」
「『あの人、あの教卓の前から三列目にいる人勃起してる、チ〇ポおおきいよ』って」
「彼女はもう大興奮といった感じでしたよ。彼女は私に制服のズボンの上から彼のチ◯ポがいかにデカくて魅力的だったかを真摯に力説してくるんですよ。」
「で、ですね。いつもの私なら『あ、あなた、ちょっとおかしくなってますよ』と言って彼女をなだめるはずです。いつもの私なら絶対にそうしますし、客観的に彼女の言葉はおかしいはずですし、ね? そうですよねすがくん」
「でもですね。その時は私なーんにもおかしいなんて思わなかったんです。その時のわたしはですね、根本的にその事実に興奮してしまったんです、なにかの力によってせざるをえなったかのような感覚もしましたけど」
「それで、彼女の話を聞いて私はある思いを胸にいだいたのです。以前咲さんに抱いてたようなあの甘酸っぱいほわほわ感とはちがうほわほわ感が急に襲ってきてですね。なんといえばいいのでしょう。端的にいえば『肉体に根差した』とか『なまなましい』とかですかね」
「私も彼女も、その感覚に酔いしれてしまいました。いまでもおもいだすだけでゾクっときちゃいます」
「そんなこんなの興奮の中で、二人話していると、その話を聞いたクラスのほかの子までも、顔を赤らめてですね。こっちへ寄ってくるんですよ。それで、どうしてこっちへ寄ってきたかを聞いてやると、『私も彼の勃起したチ〇ポ気になってたの』と言い出すんですよ」
「それからはもうパレードですね。その女の子の言葉をきいて触発されたクラス中の女子たちが、一気呵成に性話題に関する声を荒げました。シュプレヒコールみたいに、あるいは勝鬨ですかね」
「教室中淫語まみれ、さながら淫語パラダイスです」
「そして、このインモラルな状態は、授業中になっても続いたんですよ。なぜだと思います? すがくん。だって授業が始まったら先生がくるじゃないですか。すがくんの顔にも『先生がきたらその地獄終わるだろ』と書いてあります。ところがどっこい、そうはならなかった。その時間、国語の授業の先生は<女性>だったんですよ」
「ん? どうしたんですか? すがくーん♡」
茜さす空き教室に、夕陽と同じぶんだけ紅潮した原村和が現れた。
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紅潮している顔貌、咲が突然した変態行動。この状況で導かれる答えはひとつしかない。だが、無駄だと半ば知りながら、俺は一縷の希望に懸けて原村に問いかけた。
「なあ原村……。どうしてここに?」
「そんなの決まってるじゃないですか♡ すがくんが魅力的だからですよ♡」
文法上、この会話文はいくらの変調もきたしていない。だが会話の意味論上、これは破綻しているとしかまったく判断できない。要するに原村は咲と同じ病魔に侵されているのだろう。
ちなみに、ここにいる理由が君が魅力的だがらというのは、現代において多くパンツ脱いだ変態おじさんがJKに突撃する理由に用いられる。
「うーん魅力的っていうか......高ぶるんですよねぇ♡ 今朝から始まったんですよね、この気持ちは。私の友達も皆様子がおかしくなっちゃいました」
「まあ、そんなことは、いま私が抱えているすがくんへの深い愛のまえにはどうでもいいことです♡ 今まで咲さんにしかこのほわほわっとした気持ちは感じてなかったんですけど、今朝からはすがくんに感じています♡」
一瞬、その言葉を聞いて俺は世界から消されてしまいそうな大罪(レズへの境界侵犯)を犯したような気がした。
「引き攣ったような顔をして、どうかしましたか? でも、そんな顔もかわいいですよ♡
それでここからが本題なんですけど、すがくんってチ◯ポ大きいですよね?」
「は?」
原村から発してはならない言葉を聞いた気がした。えっ、チ◯ポ?
咲は狂乱、加えて世界の変異した空気感に酔っていたから、チ◯ポとかいっても仕方ないだろう。
だが、たとえ原村も、この世界が急変して、咲のように酔ってしまったとしても、だとしても、清楚を崩して欲しくはなかった。チ◯ポとかいって欲しくなかった。
「ほら男の子って大きい胸が好きじゃないですか? —あ、ごめんなさい。こんな唐突じゃ、意味わからないですよね」
この時にはまだ予想だにしていなかった、“これ”、がこんなにやばい代物だったとは。
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「—ことの始まりは今朝の出来事です。私ちょっと早く家を出てて、朝の7:40くらいには教室にいたんですよ」
「日が満ちた静謐な教室でした。音といえば私のほかに人が三人いたんですけど皆自席で本を読んでまして、それくらいですかね。」
「そのうちで、“あの出来事”は起こりました。最初は背すじにぴんと電気が流れたような気がして、おかしいなって思ったんですけど特に異常はなかったから、別段意識していませんでした」
「この異常が浮き彫りになったのは一時間目が終わって休み時間に入った時です。私の友達が駆けつけて、私に小声で、ねちゃねちゃと、背徳を犯してしまう人間のあの甘い堕ちきった声音で言ったんです」
「『あの人、あの教卓の前から三列目にいる人勃起してる、チ〇ポおおきいよ』って」
「彼女はもう大興奮といった感じでしたよ。彼女は私に制服のズボンの上から彼のチ◯ポがいかにデカくて魅力的だったかを真摯に力説してくるんですよ。」
「で、ですね。いつもの私なら『あ、あなた、ちょっとおかしくなってますよ』と言って彼女をなだめるはずです。いつもの私なら絶対にそうしますし、客観的に彼女の言葉はおかしいはずですし、ね? そうですよねすがくん」
「でもですね。その時は私なーんにもおかしいなんて思わなかったんです。その時のわたしはですね、根本的にその事実に興奮してしまったんです、なにかの力によってせざるをえなったかのような感覚もしましたけど」
「それで、彼女の話を聞いて私はある思いを胸にいだいたのです。以前咲さんに抱いてたようなあの甘酸っぱいほわほわ感とはちがうほわほわ感が急に襲ってきてですね。なんといえばいいのでしょう。端的にいえば『肉体に根差した』とか『なまなましい』とかですかね」
「私も彼女も、その感覚に酔いしれてしまいました。いまでもおもいだすだけでゾクっときちゃいます」
「そんなこんなの興奮の中で、二人話していると、その話を聞いたクラスのほかの子までも、顔を赤らめてですね。こっちへ寄ってくるんですよ。それで、どうしてこっちへ寄ってきたかを聞いてやると、『私も彼の勃起したチ〇ポ気になってたの』と言い出すんですよ」
「それからはもうパレードですね。その女の子の言葉をきいて触発されたクラス中の女子たちが、一気呵成に性話題に関する声を荒げました。シュプレヒコールみたいに、あるいは勝鬨ですかね」
「教室中淫語まみれ、さながら淫語パラダイスです」
「そして、このインモラルな状態は、授業中になっても続いたんですよ。なぜだと思います? すがくん。だって授業が始まったら先生がくるじゃないですか。すがくんの顔にも『先生がきたらその地獄終わるだろ』と書いてあります。ところがどっこい、そうはならなかった。その時間、国語の授業の先生は<女性>だったんですよ」
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