四十四章 入り口
滅んだカルミラに残ったわずかな民は、地上で暮らすことを諦め、地中に穴を掘り、その中で暮らすことを選んだ。
結果、太陽の光に当たることができない為、平均寿命が極端に短くなり、また視力が極度に弱くなってしまっていた。
二十年も地中で暮らしていれば、ただの穴ではなく地中都市のように変化していく。
その入り口は以外にもかつての王宮近くにあった。
「あの日、逃げきれないと判断し、若い者たちを中心に王族用のシェルターに避難させた。実はこの王宮の地下は以外と進化していてな……」
とケイモスが話しながら、シェルターの入り口を探す。
なぜ探すのか、崩壊している王宮からかつての入り口を探すのは困難だったからだ。
「マリアンヌ様はご記憶にないだろうか。タリアは?」
実際に住んでいた者の方が記憶があるだろうと助けを求める。
しかし、ふたりは小さく首を横に振った。
すると黙って様子を傍観していたルモンドが前にでる。
「王宮にある隠れ部屋、地下室などはだいたい似たり寄ったりであろう。まず、誰を守る?」
タリアが「王では?」と答える。
「わかっているなら、あとは自ずと出てくるのではないか?」
しかしマリアンヌが首を横に振る。
「王の寝室、王がご愛用になっていた部屋にはそのようなものはありませんでしたわ。あの方があえてお教えしていないとも思えませんが」
すると今度はダジュールが意見する。
「ならば玉座はどうだろうか。我が国では何代も玉座の下に隠し部屋を作っていた」
ダジュールのこの言葉を聞き、マリアンヌがなにかを思い出す。
「神の棺、ですわ! 中から鍵をかけても外から鍵を開けることができる唯一の存在は神だとお話しされていたことがあります。あの頃はたしかに神であればできないことはないのだから当たり前のことをおっしゃっていると思っていましたけれど、でも、それはそういう意味ではないとしたら」
「それはどこですの、マリアンヌ様」
「王宮に神職しか入ることができない場所があります。そこに入れるのは神職のほか王だけであると。ですからわたくしも入ったことはありませんし、場所も実は知らないのです。ただ、そういった場所の多くは昔から神聖な場としてあげられていた場所なのでは? タリアならご存じなのでは?」
「そうは言われましても……」
ここで壁に当たってしまう。
平地にそのような場があればすぐに見つけられてしまっているはずである。
また鉱山なども同じで、これだけむき出しになっているということは、攻めてきた時に根こそぎ奪っていったからだろう。
王宮が崩壊しているのも王族が隠れていないかを徹底的に調べたから。
調べられずに済む場所、それは……
「海、じゃない?」
沈黙を破って発したのはクラウディア。
「ほら、わたしって元々怪盗だったでしょう? 人間が隠せる場所には限界があると思うの。空の中とか無理だし、地中の中も限界がある。水の中ってありえそうだけど以外と隠さないものみたいで。今までもなかった。どうしただろうって養父さんに聞いたことがあってね、一度自分で潜ってみればわかるって言われて潜ったら、息が続かないの。船の技術、飛行艇の技術は進化するのに、人が空を飛んだり、水中で自在に動けるようにしたりの技術の発展がないのは、人の力の限界なんだと思う。だとしたら、神にしかできないものって考えたら、海の中。この国は四方海に囲まれているでしょう? 他国に知られることなく特殊な方法でもあるのかなって。わたし、変なこと言ってる?」
クラウディアの意見にはじめは半信半疑でいた者たちも、次第にその説がもっともらしいと思えてきていた。
ひとりが記憶をたどりクラウディアの説をもう少しまともにしていく。
「姫様のその意見、そうバカにしたものでもないかもしれないな。というのはな、戦艦の技術の発展をよく思わないカーラ帝国に文句を言われなければいいのだと、生身の人間でも海中を自在に動けるなにかかがないだろうかって言ってた漁師がいた。大量に漁をしようとすると船はでかくしなきゃだし、魚の鮮度も保たなきゃならない。途中、襲われることもあるかもしれないから武器の積み込みもしたい。だけど疑われたら一貫の終わりだ。そこでだれもしなさそうなことをすれば、そもそもそんなことをしているなんて思わないんじゃないかって」
「そうだとして、それを実践したという話はあるのか?」
ケイモスもそんな話は聞いたことがないし、自信がスパイ行為で情報収集している時も聞いたことはなかった。
「期待させて悪いが、成功したとか実践したという話はない。だがな、ちょっと噂程度に聞いたことならある。代々神に仕える家系は人魚のように海の中でも自在だって話」
その情報にタリアが申し訳なさそうに挙手する。
「今更ですけれど、そういえば、軍人はかならず遠泳をさせられるのですけれど、その教官は元神職であるという噂がありましたわ」
神職は男女と共に生涯独身でなくてはならない。
身も心も神に捧げる職だからだ。
しかしそれではいつかは血筋が絶えてしまう。
そこで年頃になるとどちらかを選択できる。
神職を退き、新たな神職者になる命を生み出すことを選べば、子を産み育てることになり、また四方海に囲まれた国ゆえに、国民には泳げるようにしておくことを国として推奨していた。
それらの先生として第二第三の人生の役割として就くというのだ。
しかし、いずれも噂の域をでない。
真実なのか審判はマリアンヌに託された。
結果、太陽の光に当たることができない為、平均寿命が極端に短くなり、また視力が極度に弱くなってしまっていた。
二十年も地中で暮らしていれば、ただの穴ではなく地中都市のように変化していく。
その入り口は以外にもかつての王宮近くにあった。
「あの日、逃げきれないと判断し、若い者たちを中心に王族用のシェルターに避難させた。実はこの王宮の地下は以外と進化していてな……」
とケイモスが話しながら、シェルターの入り口を探す。
なぜ探すのか、崩壊している王宮からかつての入り口を探すのは困難だったからだ。
「マリアンヌ様はご記憶にないだろうか。タリアは?」
実際に住んでいた者の方が記憶があるだろうと助けを求める。
しかし、ふたりは小さく首を横に振った。
すると黙って様子を傍観していたルモンドが前にでる。
「王宮にある隠れ部屋、地下室などはだいたい似たり寄ったりであろう。まず、誰を守る?」
タリアが「王では?」と答える。
「わかっているなら、あとは自ずと出てくるのではないか?」
しかしマリアンヌが首を横に振る。
「王の寝室、王がご愛用になっていた部屋にはそのようなものはありませんでしたわ。あの方があえてお教えしていないとも思えませんが」
すると今度はダジュールが意見する。
「ならば玉座はどうだろうか。我が国では何代も玉座の下に隠し部屋を作っていた」
ダジュールのこの言葉を聞き、マリアンヌがなにかを思い出す。
「神の棺、ですわ! 中から鍵をかけても外から鍵を開けることができる唯一の存在は神だとお話しされていたことがあります。あの頃はたしかに神であればできないことはないのだから当たり前のことをおっしゃっていると思っていましたけれど、でも、それはそういう意味ではないとしたら」
「それはどこですの、マリアンヌ様」
「王宮に神職しか入ることができない場所があります。そこに入れるのは神職のほか王だけであると。ですからわたくしも入ったことはありませんし、場所も実は知らないのです。ただ、そういった場所の多くは昔から神聖な場としてあげられていた場所なのでは? タリアならご存じなのでは?」
「そうは言われましても……」
ここで壁に当たってしまう。
平地にそのような場があればすぐに見つけられてしまっているはずである。
また鉱山なども同じで、これだけむき出しになっているということは、攻めてきた時に根こそぎ奪っていったからだろう。
王宮が崩壊しているのも王族が隠れていないかを徹底的に調べたから。
調べられずに済む場所、それは……
「海、じゃない?」
沈黙を破って発したのはクラウディア。
「ほら、わたしって元々怪盗だったでしょう? 人間が隠せる場所には限界があると思うの。空の中とか無理だし、地中の中も限界がある。水の中ってありえそうだけど以外と隠さないものみたいで。今までもなかった。どうしただろうって養父さんに聞いたことがあってね、一度自分で潜ってみればわかるって言われて潜ったら、息が続かないの。船の技術、飛行艇の技術は進化するのに、人が空を飛んだり、水中で自在に動けるようにしたりの技術の発展がないのは、人の力の限界なんだと思う。だとしたら、神にしかできないものって考えたら、海の中。この国は四方海に囲まれているでしょう? 他国に知られることなく特殊な方法でもあるのかなって。わたし、変なこと言ってる?」
クラウディアの意見にはじめは半信半疑でいた者たちも、次第にその説がもっともらしいと思えてきていた。
ひとりが記憶をたどりクラウディアの説をもう少しまともにしていく。
「姫様のその意見、そうバカにしたものでもないかもしれないな。というのはな、戦艦の技術の発展をよく思わないカーラ帝国に文句を言われなければいいのだと、生身の人間でも海中を自在に動けるなにかかがないだろうかって言ってた漁師がいた。大量に漁をしようとすると船はでかくしなきゃだし、魚の鮮度も保たなきゃならない。途中、襲われることもあるかもしれないから武器の積み込みもしたい。だけど疑われたら一貫の終わりだ。そこでだれもしなさそうなことをすれば、そもそもそんなことをしているなんて思わないんじゃないかって」
「そうだとして、それを実践したという話はあるのか?」
ケイモスもそんな話は聞いたことがないし、自信がスパイ行為で情報収集している時も聞いたことはなかった。
「期待させて悪いが、成功したとか実践したという話はない。だがな、ちょっと噂程度に聞いたことならある。代々神に仕える家系は人魚のように海の中でも自在だって話」
その情報にタリアが申し訳なさそうに挙手する。
「今更ですけれど、そういえば、軍人はかならず遠泳をさせられるのですけれど、その教官は元神職であるという噂がありましたわ」
神職は男女と共に生涯独身でなくてはならない。
身も心も神に捧げる職だからだ。
しかしそれではいつかは血筋が絶えてしまう。
そこで年頃になるとどちらかを選択できる。
神職を退き、新たな神職者になる命を生み出すことを選べば、子を産み育てることになり、また四方海に囲まれた国ゆえに、国民には泳げるようにしておくことを国として推奨していた。
それらの先生として第二第三の人生の役割として就くというのだ。
しかし、いずれも噂の域をでない。
真実なのか審判はマリアンヌに託された。
※会員登録するとコメントが書き込める様になります。