剣の少年と愉快な冒険者たち(後編)③
二人の調査を待っている間、暇なクランがザグルに話しかけた。
「ねえ、あのゴブリン。足が速いからどこかのマニアへ売ったら結構なお金にならない?」
「かもな……」
ザグルも退屈だったため、大きな欠伸をしている。
「なに? 興味ないの?」
「だって、傭兵だもん」
背中から剣を取り出し、今度は素振りを始めた。
それ以上、なにかを話す気分にはならなかったのだ。
「もう~、話しを盛り上げてよ」
「だって、あのゴブリンには腹が立っているから、傭兵として斬りたくってしょうがないんだ」
職業として斬ろうとするのは完全に後付けで、個人的な感情で斬りたかった。
「なに? あのゴブリンの事知っているの?」
クランが興味を持ったのか、話しを更に聞く。
「ああ、知っている。嫌になるくらいに」
ザグルはルーの街外れで出会った、ヒーローマニアのゴブリン達を思い出した。
あんなに疲れる魔物に会えば会ったで、斬り捨てたいが、あまり会いたくは無かった。
だから間違えであって欲しかったけど、背中の文字と足の速さでそうはいかなかった。
だから、結果、斬りたいと言う感情が強くなったのだ。
「スッゴい!」
クランが感情のままに抱きついた。
「だから抱きつくなって」
ザグルは無理矢理抜け出す。
「じゃあ、ホッペにチューにする?」
クランにとってザグルだったら、それも構わないとずっと思っている。
本当にザグルのことが好きなのだ。
「もっと嫌!」
「じゃあ、いいじゃない? 私なりの愛情よ」
(ぜってー、ズレてる)
顔で泣き、心で突っ込んでいた。
そんな漫才を繰り広げていると、ルミアとロベリーが部屋から出てきた。
「待たせたな」
「それでどうだったの?」
代表して聞いたのはクランだった。
「ダメ~。なにをやっていたのか~。全く分からなかった~」
ゴブリンが出入りしていただろう、小さな穴らしきものはあったが、それだけだった。
しかも、暗視能力があるゴブリンと違い、いくら盗賊でも闇に目が慣れていない人間が、他の魔物に気付かれないように、少しの灯りで調べるのは一苦労だと、続けて言った。
「んたく、宝の一つや二つ隠しておけよ」
「あのゴブリンがそんな事するわけねーじゃん」
ザグルは早くあのゴブリン達を剣の錆にしたかった。
「あっ、あのゴブリンが噂の?」
「うん……」
苦い顔をし首を縦に振った。
「よし、作戦変更だ! あのゴブリンを生け捕り、その後、高値で売る。いいか?」
「反対!」
ザグルが手を挙げた。
「えーと、ザグル以外は?」
「無いでーす」
ここでもクランが代表で言った。
「よし、じゃあ、行くか!」
拳をぎゅっと握り、一気に気合を入れた。
「おい、どうして無視する!」
「いや、だって言う事決まってるじゃん! ワンパターンはよくないぜ」
ルミアがザグルを諭すように言う。
「ワンパターンって、なにがしたいか分かっているのか?」
「うん『ゴブリンを潰す! ぶった斬る』だろう?」
「うっ、うん」
図星だったので言葉を無くした。
「ほら、言った通りだ。だけど、俺達は泣く子も黙る冒険者……」
「この面子で『泣く子も黙る』はどーだろう」
ザグルは面白くない顔をして突っ込みを入れた。
確かにそうだ。
少年好きな女戦士。
研究好きな女僧侶。
瞑想好きな大男魔法使い。
そして甲斐性無い青年盗賊……。
更に言えば魔法の使えない、小柄で迫力に欠ける傭兵もいる。
キャラとしては充分濃いが『泣く子も黙る冒険者』とはかけ離れていた。
「変な事で突っ込みを入れるな! ともかく、傭兵のお前とは違い、夢と金の為に動く、それが冒険者だ。みんな行くぞ!」
ルミアは手を挙げ、ザグル以外のパーティは全員気合をいれて、歩き始めた。
「おい! なんだよ。なんだよ……。オレがいる意味あんのか!」
ザグルは力一杯に叫んでいた。
ゴブリンは間抜けな事に泥だらけの足で動き回っていたのか、走った時の足跡を残していた。
靴を履いていないから、いつも泥だらけだけど……。
それを手掛かりに五人はゴブリンを追った。
「やっぱし、お前が話した通りマヌケだな。考えてみたら普通に会話もしていたし」
(考えなくても分かるだろうが……)
ザグルにとっては、ルミアも充分間抜けだと思った。
「もっと、捕まえたくなったぜ!」
ルミアが目を輝かせ更に気合を入れる。
「勝手にしてくれ、オレはなにがなんでも斬るから」
最早、ザグルはルミアに雇われているのを忘れており、命令違反もいいところである。これでも一応、傭兵なのだから、傭兵としては失格である。
ゴブリンが辿った先には無駄に広いだけの部屋があった。
足跡はそこで途絶えている。
ルミアはとっさに罠チェックをしたが、なにも反応がない。
だが、ここにゴブリンがいそうな気配はした。
「どうやら、なにごともなく入れそうだな」
ルミアの指示で他の四人は広い部屋に入り、横並びになる。
ただ、いつでも戦闘態勢がとれるように、それぞれ準備はしていた。
いくら、知性が低い弱小のゴブリンでも、数が多くて油断すれば負けてしまう可能性があるからだ。
「ねえ、あのゴブリン。足が速いからどこかのマニアへ売ったら結構なお金にならない?」
「かもな……」
ザグルも退屈だったため、大きな欠伸をしている。
「なに? 興味ないの?」
「だって、傭兵だもん」
背中から剣を取り出し、今度は素振りを始めた。
それ以上、なにかを話す気分にはならなかったのだ。
「もう~、話しを盛り上げてよ」
「だって、あのゴブリンには腹が立っているから、傭兵として斬りたくってしょうがないんだ」
職業として斬ろうとするのは完全に後付けで、個人的な感情で斬りたかった。
「なに? あのゴブリンの事知っているの?」
クランが興味を持ったのか、話しを更に聞く。
「ああ、知っている。嫌になるくらいに」
ザグルはルーの街外れで出会った、ヒーローマニアのゴブリン達を思い出した。
あんなに疲れる魔物に会えば会ったで、斬り捨てたいが、あまり会いたくは無かった。
だから間違えであって欲しかったけど、背中の文字と足の速さでそうはいかなかった。
だから、結果、斬りたいと言う感情が強くなったのだ。
「スッゴい!」
クランが感情のままに抱きついた。
「だから抱きつくなって」
ザグルは無理矢理抜け出す。
「じゃあ、ホッペにチューにする?」
クランにとってザグルだったら、それも構わないとずっと思っている。
本当にザグルのことが好きなのだ。
「もっと嫌!」
「じゃあ、いいじゃない? 私なりの愛情よ」
(ぜってー、ズレてる)
顔で泣き、心で突っ込んでいた。
そんな漫才を繰り広げていると、ルミアとロベリーが部屋から出てきた。
「待たせたな」
「それでどうだったの?」
代表して聞いたのはクランだった。
「ダメ~。なにをやっていたのか~。全く分からなかった~」
ゴブリンが出入りしていただろう、小さな穴らしきものはあったが、それだけだった。
しかも、暗視能力があるゴブリンと違い、いくら盗賊でも闇に目が慣れていない人間が、他の魔物に気付かれないように、少しの灯りで調べるのは一苦労だと、続けて言った。
「んたく、宝の一つや二つ隠しておけよ」
「あのゴブリンがそんな事するわけねーじゃん」
ザグルは早くあのゴブリン達を剣の錆にしたかった。
「あっ、あのゴブリンが噂の?」
「うん……」
苦い顔をし首を縦に振った。
「よし、作戦変更だ! あのゴブリンを生け捕り、その後、高値で売る。いいか?」
「反対!」
ザグルが手を挙げた。
「えーと、ザグル以外は?」
「無いでーす」
ここでもクランが代表で言った。
「よし、じゃあ、行くか!」
拳をぎゅっと握り、一気に気合を入れた。
「おい、どうして無視する!」
「いや、だって言う事決まってるじゃん! ワンパターンはよくないぜ」
ルミアがザグルを諭すように言う。
「ワンパターンって、なにがしたいか分かっているのか?」
「うん『ゴブリンを潰す! ぶった斬る』だろう?」
「うっ、うん」
図星だったので言葉を無くした。
「ほら、言った通りだ。だけど、俺達は泣く子も黙る冒険者……」
「この面子で『泣く子も黙る』はどーだろう」
ザグルは面白くない顔をして突っ込みを入れた。
確かにそうだ。
少年好きな女戦士。
研究好きな女僧侶。
瞑想好きな大男魔法使い。
そして甲斐性無い青年盗賊……。
更に言えば魔法の使えない、小柄で迫力に欠ける傭兵もいる。
キャラとしては充分濃いが『泣く子も黙る冒険者』とはかけ離れていた。
「変な事で突っ込みを入れるな! ともかく、傭兵のお前とは違い、夢と金の為に動く、それが冒険者だ。みんな行くぞ!」
ルミアは手を挙げ、ザグル以外のパーティは全員気合をいれて、歩き始めた。
「おい! なんだよ。なんだよ……。オレがいる意味あんのか!」
ザグルは力一杯に叫んでいた。
ゴブリンは間抜けな事に泥だらけの足で動き回っていたのか、走った時の足跡を残していた。
靴を履いていないから、いつも泥だらけだけど……。
それを手掛かりに五人はゴブリンを追った。
「やっぱし、お前が話した通りマヌケだな。考えてみたら普通に会話もしていたし」
(考えなくても分かるだろうが……)
ザグルにとっては、ルミアも充分間抜けだと思った。
「もっと、捕まえたくなったぜ!」
ルミアが目を輝かせ更に気合を入れる。
「勝手にしてくれ、オレはなにがなんでも斬るから」
最早、ザグルはルミアに雇われているのを忘れており、命令違反もいいところである。これでも一応、傭兵なのだから、傭兵としては失格である。
ゴブリンが辿った先には無駄に広いだけの部屋があった。
足跡はそこで途絶えている。
ルミアはとっさに罠チェックをしたが、なにも反応がない。
だが、ここにゴブリンがいそうな気配はした。
「どうやら、なにごともなく入れそうだな」
ルミアの指示で他の四人は広い部屋に入り、横並びになる。
ただ、いつでも戦闘態勢がとれるように、それぞれ準備はしていた。
いくら、知性が低い弱小のゴブリンでも、数が多くて油断すれば負けてしまう可能性があるからだ。
※会員登録するとコメントが書き込める様になります。