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黄泉比良坂

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: strojam11
目次

黄泉比良坂

宇宙は滾る氷と絶対零度の炎が出来ているという。
昼行灯のアカウントが彼の珍説を象徴している。感染症者が増え続ける都内で撮影強行する事の是非で混沌している。
そこにコアファンと撮影関係者が加わってログが追えない状況だ。当の本人は発信に徹して投稿者同士が殴り合ってる。
そんなさなか、河口付近でゲリラロケが敢行された。場所の漏洩は当然のこと対策も万全だ。何しろゾンビ映画。
日時は事欠かない。ガタゴトと貨車が駆け抜ける下で得体の知れない男女が蠢いている。
前半の山場、時空自粛警察官の赤城が水死体を実況見分している。このシーンは凄惨な光景だった。
「ひいいい」
「うげえええ」
「ぎゃああああ」
など視聴者が嘔吐するシーンの連続である。しかしこれは序章に過ぎない。
ゾンビ映画の常として、登場人物は次々に殺されていくのだ。
そして最後は主人公だけが残り、エンディングを迎えるという訳だ。
さすがにこの展開には視聴者も驚いた。まさかここまでやるとは思わなかった。
だがここで終わらなかった。エンドロールに流れるスタッフクレジット。その最後にこんなテロップが流れたからだ。監督:
黄泉比良坂
脚本:
赤根理恵
制作プロデューサー:
黒谷有吾
キャスト:
森美雪 川井正樹 田中康郎 高梨玲奈 宮永恭平 大河原将人 渡辺拓海 天瀬マユカ 他 それは驚くべき名前であった。
この作品は、監督の黄泉比良坂と脚本家の森美雪が共同で作った作品なのだ。
黄泉比良坂の名は知っていたが、森美雪の名前は初めて知った。
それだけではない。この作品の制作過程は、かなり特殊なものであった。
まず、黄泉比良坂監督が、テレビ局のプロデューサーから依頼され、一話完結のサスペンスホラーを撮ることになった。
企画書によれば、ジャンルはSFホラーということであったが、詳しい内容は明かされていない。
次に、森美雪が、テレビ局のドラマ部門の依頼により、連続テレビドラマの脚本を書くことになった。
内容についての詳細は分からないが、ミステリーらしい。
さらに、二作品は同時期に撮影された。
つまり、両作とも最初は単発の企画であり、それが徐々に合同企画になっていったのである。
そして、二つの作品の撮影は並行して行われた。ちなみに、この企画の発端となったテレビのプロデューサーというのは、黄泉比良坂監督とは旧知の仲らしく、彼が黄泉比良坂に頼み込んで実現したそうだ。
なぜそんなことをしたのか? おそらく、自分の思い通りにならない連続ドラマを作るより、短編連作的な演出のほうが面白そうと思ったのではないかと推測される。
つまり、長編化を想定した上での演出ではなく、短期集中型の作品を目指してのことだったと思われる。
しかし、結果的には、これが大当たりし、両作の視聴率争いに火がつくことになるのだから、世の中面白いものである。
ところで、私は、放送当時この両作品を観たのだが、正直言ってよく分からなかった。
そもそもSFなのかホラーなのかさえはっきりしない感じだった。
ただ一つ言えることは、どちらの作品にも共通する強烈な個性があったということである。
それは、徹底したリアリズムと現実感、そして圧倒的な迫力ある映像である。
これらの要素によって、我々は強い恐怖を覚え、同時にその世界観に取り込まれてしまうのだ。
私自身、こんな不思議な体験は初めてのことであり、今なおその余韻が残っているほどである。
とにかく、この両作品は凄い! 間違いなく傑作だ!!
――(以下略)
――
(引用終わり)
------……というわけでして、この文章を書いた時点では、私の目にはどちらも似たような印象しか残っていなかったのですね。でもまあ確かに言われてみれば、両方ともホラーなんだけど……、うーん……? って、なんか納得できない気分になるんですね。
なので今回も例によって『小説家になろう』様での検索機能を利用してみましたところ、やはり「どっちも同じじゃねえか」とか、「どっちかといえばホラーだよ!」といった意見がたくさん見つかりまして……。……はい! というわけで今回は、両作を徹底的に比較検討したいと思います!……えっ!? だって、どうせまた「どっちかといえばホラーだよ!」っていう意見が出るんでしょ!? はいはい分かってますよ! でももういい加減、そういう反応には飽きてきたので、今日はあえて無視します!……ええっとそれではまず最初に、それぞれのタイトルを見ていきましょう。
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【あらすじ】
西暦2034年4月23日。東京都西東京市・ひばりが丘団地に住む主婦、加藤恵美子は、夫の大輔と共に買い物に出かける。
ところがその途中、謎の集団に襲われる。彼らは恵美子たちを襲い、拘束する。
一方、同じ日の夕方、警視庁捜査一課の刑事、川井正樹は、相棒の田中康郎とともに、事件現場の調査に向かう。
するとそこで、死体を発見する。それは、つい先ほどまで生きていた人間の死体だった。
しかしなぜか、頭部だけが消えていた。そしてその死体には、何かに噛まれたような傷跡が残っていた。
こうして、事件は始まる。【登場人物】
主人公:
加藤
恵美子 年齢:37歳
職業:専業主婦
夫:
川井
大輔 40代前半 警察官 田中 康郎 30代後半 川井の同僚 警察犬訓練士 川井の妻:

美雪 38歳 川井の母 警察関係者 その他:
謎の男
年齢:不明
職業:不明
謎の一団のリーダー 川井と田中を襲った犯人 川井の友人:
渡辺 拓海 35歳
川井の後輩 田中の同期 その他の人物:
時空自粛警察の警官:
赤城
聡 年齢:24歳
川井の部下 時空自粛警察の責任者 時空自粛警察のメンバー:
時空自粛捜査官
時空自粛警察官 タイムスリップ能力者:
黄泉比良坂
年齢:50代半ば
職業:映画監督
森美雪のパートナー 森美雪 28歳 脚本家 黄泉比良坂のパートナー 黄泉比良坂 50代半ば 映画監督 森美雪のパートナー ----
はい、まずは主人公の加藤恵美子と、その夫の川井正樹が、謎の集団に襲われているところからスタートです。…………あれ? なんだか妙に普通の日常パートから始まっているようですね。これはちょっと意外かも? 続いて、そのシーンの続きを見ていきましょう。
ここで、場面が変わって、謎の集団に襲われた加藤夫婦のアパートの中になります。
そしてそこには、頭のない人間の胴体が転がっていて、それを見つめる二人の人物がいます。
まずは、謎の男のほうから見ていきましょう。彼は、手にした銃のようなものを使って、その女性の身体を撃ち始めます。
しかし、銃弾は彼女の肉体を貫くことなく、弾かれて床に落ちてしまいます。
男は舌打ちをして、今度は女性に向かってナイフを突き刺そうとしますが、それも彼女には通じません。女性はため息をつくと、男の腹に強烈な蹴りを入れます。
続けて彼女は、倒れ込んだ男に馬乗りになって、何度も殴りつけます。
そして最後に、男はぐったりとして動かなくなりました。
次は、もう一人の男性である川井正樹の視点に移ります。川井は、目の前で起こった出来事に唖然としながらも、なんとか声を振り絞って叫びます。
「お、おい! あんたら何やってんだ!!」
すると、女性がこちらを向いて、話しかけてきます。
「大丈夫ですか?」
「だ、誰だお前は!?」
「私は森美雪と言います」
「そ、それは見れば分かるけど……」
「では、あなたは? あなたの名前はなんというのでしょうか?」
「わ、私は、川井正樹といいますが……、あの、それより、いったい何をしているのでしょう? なぜこんなことを?」
「ああ、それは、こいつらが突然襲いかかってきたので、返り討ちにしてやったんですよ。だから、安心してください。殺してはいないので。まあ、しばらくは目を覚まさないかもしれませんが」
「そうですか……。いや、しかし、それにしてもすごい力ですね。この男がこうも簡単にやられてしまうなんて。一体どんなトリックを使ったのでしょうね。私にも教えてもらえると嬉しいのですが。ぜひ今後の参考にしたいのですよ。……おっと失礼。申し遅れました。私は、こういう者でして」
そう言って川井は、自分の名刺を差し出します。
「はあ、なるほど。『小説家』さんでいらっしゃいましたか。……それで、小説のネタのために、この男と戦われたと。そういうことなのですね。……はあ、しかしそれなら、わざわざこのような危険な真似をしなくても、どこかの公園で、普通に戦ったほうがよかったのではないでしょうか。そうすれば、もっと安全に取材ができたはずなのに。どうしてわざわざ、私たちを巻き込んでしまったのですか? 本当に危なかったじゃないですか!」
「いえ、別にそういうわけではないのですよ。私はただ純粋に、『戦う』ということをやってみたかっただけなのですよ。だから、相手が誰でも構わなかったので。そこにたまたま、この男たちがいたというだけです。でもまさか、ここまで弱いとは思いませんでしたが。いやはや、驚きました。正直、拍子抜けしてしまいましたよ。……まあ、でも、とりあえずこれで目的は達成できたので、よしとしましょう。さて、もうここには用はありませんし、私たちはすぐにここを立ち去ることにします。……ところで、この人たちの処理はどうすればよいのでしょうか? 警察に通報した方がいいのかしら? それともこのまま放っておく? もし良かったら、私に任せてくれれば、後始末をしておくけれど」
「そうですね……。まあ、私としては、警察に連絡するのが一番だと思うのですが……。しかし、どうしましょうか。あなたにお願いするのも悪くはないのでしょうね。正直、私は今、あまり時間もないし、これ以上ここに長居をするわけにもいかないし。どうしたものか……。……あっ! そうだ! この人のポケットの中に携帯があるかもしれない。」
刑事たちは、彼女の言う通りにすることにした。確かにそれしかない。もし、携帯がなければ手掛かりは何も残らないだろうが、可能性はゼロではない。
僕は急いで、彼女のズボンを調べた。幸いなことに、携帯電話を発見した。彼女は僕たちに向かって言った。
「ちょっと待ってください!」
森さんが声を上げた。どうしたんだろうと思って見ていると……、
「あの……、今の話ですけど、私は脚本を書いただけであって、実際に映像を撮影したのは私ではありません」
と否定していた。確かに彼女の言うとおりだと思った。
だが、「それなら誰が撮ったのか?」
という問いに対して答えてくれる人は誰もいないだろう。
いやむしろ「そんな人がいる訳がない」と言って笑い飛ばすかもしれない。そう、私だって未だに信じ切れていないのだ。
ただこれだけははっきり言える。あの作品が撮影されたのは、私の記憶の中では、紛れもなく夏だったということだけは……。私の家は山の中にあり、周りは全て竹林に囲まれている。そのため、夜になると物凄く静かである。
だが最近、夜に騒ぐ音が聞こえる。最初は虫か何かだと思っていたのだがどうやら違うようだ。私は好奇心旺盛なので気になり始めてしまった。ただの好奇心ではなく恐怖心というおまけつきで。そうして私は勇気を振り絞って見に行ってみた。するとそこには、一人の少年がいた。年格好的に小学四年生ぐらいだろうか。その子は、地面に座り込みながら空を見上げていた。星を見るのに夢中なのかなと思いしばらく見ていたのだが一向に動く気配がない。流石に少し怖くなり帰ろうとしたその時、「ねえ」とその子に声をかけられた。心臓が飛び出るほどびっくりした。今まで一度も喋ったことがなかったからである。「なんですか?」と答えると、男の子はまた「君の名前を教えて欲しいんだけど。ちなみに僕は、黄泉比良坂」と名乗った。私は素直に従った「名前は森美雪よ。」「よろしくね美雪ちゃん」彼は満面の笑みを浮かべていた。そこで私は、彼の服装がかなりボロボロになっていることに気づいた。服だけではなく靴もだ。そして極め付けは首にかけているペンダントだ。「そのペンダントはどうしたの?」私は聞いてみると、彼はとても嬉しそうな顔をして「これか。実は俺の大切な人がくれたんだ」と答えた。「へぇー、大切にしないとね」と返すと彼は急に真剣な顔になって「美雪ちゃん、君のお父さんはどこにいるか知ってるかい? 」と問いかけてきた。いきなりだったので私は戸惑ったが、すぐに冷静になり答える。「ううん、知らない。そもそも私が知っている限り、あなたのお母さんしか見たことがないから」
「そうか…………」と彼が残念そうにしていると後ろから足音が聞こえた気がしたので振り返ってみると母の姿があった。母は私を見ると駆け寄ってきて抱きしめてくれた。「美雪〜心配したんだよ」と言い続けた後に「そちらの方々はどちら様ですか?」
「美雪を助けてくれた方々です。命の恩人でございます」と丁寧に答えてくれた。すると母はすぐに「ご迷惑をおかけしました。この子は体が弱いのでどうかよろしくお願いいたします」と頭を下げた。「いえ、大丈夫ですよ。困っている子を助けるのは当然のことですから」
黄泉比良坂君は照れくさそうに言っていた。その後黄泉比良坂くんがお世話になりましたと言い、帰っていった。「ねぇ、美雪。あの方はどういう方なの?」私は聞いた。
「えっと……分からない。ただ一つだけ確かなことは……あの方の目はとても寂しそうだった……」
「寂しそう……?」「そう、すごく寂しそう……まるで、迷子の子供みたいに」
彼は何を求めているのだろう? 彼は何を待っているのだろう?
「もしかしたら、いつか……」
〜数年後〜 私は中学三年生になった。中学生になってからは受験が忙しくなってなかなか彼に会うことはできなかった。
そんなある日、学校からの帰り道に、ふと彼のことを考えてしまう時があった。そして、つい無意識に「会えないかな」

「話したい」
「一緒に遊びたい」と呟いてしまっていた。
そんな日が何週間か続いたある日のことだった。いつものように帰り道を歩いていると、
「こんにちは、美雪ちゃん。元気にしてたか?」
と声をかけられたので驚いて振り返ってみると、そこに彼が立っていた。
「黄泉比良坂君!」私は思わず彼に抱きついた。「どうして? どうしてここが分かったの?」
「いや、それは……美雪ちゃんが寂しがってるかと思ってさ……」
「ありがとう! 大好き!」
私はさらに強く彼を抱きしめた。
「あぁ、苦しいよ。離してくれ〜」
彼は苦しそうにもがいていた。
「あ、ごめんなさい」
私は慌てて離れた。
「ところで今日は何しに来たの?」
「ああ、それは……美雪ちゃんに会いたくてさ……」
「本当!?」私はまた嬉しくなった。でも……もうそろそろ帰った方がいいのでは? と思い 、 提案してみる。すると彼は……
一瞬悲しい表情を見せた後、笑顔に戻り、こう言った。
―――――俺はもう行かないと。じゃあね。また明日。
とだけ言い残して消えていった。
私は急いで彼の後を追いかけたが、もうそこには誰一人いなかった。
そして次の日から、彼は姿を消した。
あれから数年経った。私は高校二年生になっていた。彼と最後に別れてからずっと彼のことを探していたが結局見つけることができなかった。そして今でも私の胸には、彼への思いが残り続けている。もしもう一度会うことができたら絶対に伝えようと思っていることがある。
――私はあなたのことが好き。と 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。いかがでしたでしょうか? この作品を通して、読者の皆様に少しでも楽しんで頂けたのなら、これ以上嬉しいことはありません。もしよろしければ、感想を聞かせてください。今後の参考にさせて頂きます。
それでは、またどこかでお会いしましょう。
平成22年3月某日
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