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いと哀れなり

原作: その他 (原作:鬼滅の刃) 作者: takasu
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実弥は玄弥に先になるように伝えるとゆりえを呼びに廊下に出た。

実弥「そこで寝るくらいなら別の空き部屋で寝ろォ。それも嫌なら俺達がいても部屋の中の方がマシだろォ。」

「いえ。睡眠も普段からとっておりませんので大丈夫です。」

実弥「は?」

「寝る暇があるなら鍛錬をしなければなりませんでしたから。今は…あれ…。あ、そうです。申し訳ありません。私は今から鍛錬をしなければなりませんでした。」

そう言って立ち上がろうとするゆりえの手を実弥は強く掴んだ。

実弥「鍛錬なんてそんなにしなくても強ェだろォ。」

「いえ。私は…誰かに弱いと言われ、確かに弱いですし、鍛錬をしろと多くの人に言われ…それで…私は…………どうやって両立していたのでしょう…。」

実弥「っ…」

「鍛錬をしなければいけないので、もし何かご用がありましたら…えっと…」

クロ「カァ!戻った!戻ったゾ!ユリエ!」

「あぁ、そうです、クロ、お願いします。この鎹烏のクロに伝言をお願いします。すぐに戻りますので。」

クロ「ユリエ!マテ!ユリエ!」

クロが言うのもお構いなしに素早く実弥の腕からぬけると一瞬で姿を消してしまった。

そしてその翌朝彼女はいつの間に揃えたのか昨日実弥から借りた服とタオルと同じものを買い揃えて帰ってきていた。そして着替えて来たのか自分の着物であろう物は何度も縫い直された後のあるボロきれにちかいものだった。

朝食の準備も万全で、まるで女中として長年働いていた者かのように完璧だった。

「昨日はお借りしてしまい申し訳ありませんでした。新しいものです。」

そう言ってまた土下座をしながら言われたもので、実弥は「気にするなァ」の一言しか出てこなかった。

そして二人が朝食を取り終えると鎹烏が声をあげていた。

鎹烏「カァ!柱合会議!緊急柱合会議!正午より始メル!」

その声に玄弥は立ち上がり家を出ようとした。

玄弥「ゆりえさん、ありがとうございます。大変な時にこんな事言うのは不謹慎かもしれませんけど…ゆりえさんのおかげで兄ちゃんとこうして普通にすることができたので!ありがとうございます!」

「お礼を言っていただけるようなことは私は何もしておりません。寧ろご迷惑をおかけしてもうしわけありませんでした。…では、お気をつけて。」

そう言って玄弥にも昨日と今日のお礼と言って水菓子を渡していた。


そして玄弥を見送った後実弥と二人になったゆりえはまた手際良く実弥の出かける準備を始めた。

実弥「俺が出かけている間くらい少しは休んどけェ。」

「気を使わせてしまって申し訳ありません…」

実弥「っ…」

何を言うにも謝罪をするゆりえに実弥はどうしていいかわからずいつもより早めに家を出ることにした。

「お気をつけていってらっしゃいませ。」

完璧すぎるほどの女中ぶりとゆりえの自己肯定感の低さにそうしてしまった自分を恨むことしかできず、浮かない顔で実弥は家を出た。

柱合会議には皆話の内容がわかっていたのか早すぎるほどに集まっていた。

しのぶ「不死川さん。ゆりえさんの様子はどうでしたか?」

不死川「…っ。相変わらず休もうともしねェ…」

しのぶ「…」

そんな会話をしているとお館様が姿を現した。その隣にはいつもと違ってゆりえの鎹烏のクロもいた。

いつもの挨拶をしているお館様もどこか浮かない顔をしている。


お館様「ゆりえは記憶に少し問題があるみたいだね。…皆は少し気付くのが遅すぎたかもしれないね…。そして私も助けるのが遅すぎた。…ゆりえの鎹烏…クロからゆりえが今までどうしていたのか詳しく聞いたよ。」

クロ「オ前タチノセイダ!許サナイ!ユリエハオ前タチノセイデ身モ心モ傷メタ!」

クロの言葉に誰一人として返答出来なかった。

お館様「…今のゆりえの状態を見たのはしのぶと実弥だけだったね…。悪化してしまったのを見たのは実弥だけかな。」

しのぶ「悪化…?」

お館様「クロ、悪いけどゆりえをいまからここに連れてきてくれるかな?」

クロ「…ワカッタ!」

お館様「ゆりえが来るまで少しゆりえの過去の話をしようか。」

そしてお館様が話し始めた内容に柱達は自分達の過ちがどれほど大きなものだったかを思い知った。

親から捨てられ引き取られた所は彼女を道具のように扱い死んだと思い川に捨て、生きていた彼女は命からがら自分で生きてくしかなく、その後も自分の存在価値がないものと思い続け奴 れいとして、道具として生き、それが当たり前の事だと思い、その上人の役に立って死ぬために鬼狩りも続け、柱になってからは柱の仲間達との日常に初めて幸せを覚えたとお館様に報告に来るほど喜んでいた事。それと同時に鍛錬を怠らず足を引っ張らないようにと頑張り続けたが陥れられ柱達からの暴言、暴行にも誰一人責める事なく自分が悪いと思い続け幸せを望んだことを悔い、自分を痛めつけるように働き続けることでしか自分は存在しては行けない者だったともう一度思い込んで鬼狩りをしていたこと。そしてそのせいで体に不調を抱えてしまった事。

お館様はいつも通り穏やかに話しながらも穏やかでないのは一目瞭然だったほどだった。
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