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いと哀れなり

原作: その他 (原作:鬼滅の刃) 作者: takasu
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15

普段は髪で隠されていたはずの左目があらわになってしまったことで不死川は驚きを隠せなかった。

決して綺麗とは言えない傷跡がのこされた左目は痛々しかった。

がしかし、それ以上に不死川に抱き上げられている事に驚いている彼女はひどく動揺して不死川の腕から降りようとあまり力の入っていない身体を動かした。

「お、ろしてくださっ…い…。風柱様にこれ以上…ご迷惑を…っ」

不死川「暴れんじゃねェ!」

「そういうわけにいきま…」

そう言いかけた所でフッと彼女は意識を失った。

不死川「矢神…?矢神ィっ…!」

死んでしまったのかと思うほど生気のない彼女に不死川は蝶屋敷へと急いだ。


不死川「胡蝶!頼む!助けてくれェ!」

ドンドンと蝶屋敷の門を叩くとしのぶが出てきた。

しのぶ「何ですか、不死川さん。こんな時間…っ!!ゆりえさんっ?!」

不死川「頼むっ…助けてくれェ…」

そう言った不死川の腕に力がこもった。

しのぶ「すぐに治療します。こちらへ。」

しのぶにそう言われて不死川はしのぶの後をついて行った。

言われた通りに彼女を寝かせるとその様子にしのぶも思わず顔をしかめた。

しのぶ「不死川さんは外で待っててください。」

そう言われて部屋を出たものの、不死川は自分のしてしまった間違いにただただ奥歯を噛み締めるしかなかった。

気が付けば朝日が登っていて、それと同時に部屋の扉が開かれた。

不死川「ゆりえはァ…!」

しのぶ「…何とか一命は取り留めましたが…目を覚ますか…」

2人が廊下で肩を落としているとゆりえの鎹烏が飛んできた。

クロ「柱タチユルサナイッ…!ユルサナイッ…!」

鎹烏に言われた言葉に2人は返す言葉もなかった。

クロ「オ館様ガオ呼ビダ!…サッサトイケ!緊急柱合会議ダ!サッサトイケ!サッサトイケ!」

鎹烏はそう言うと2人の間を飛んでゆりえの眠る側に寄り添っていた。


「「お館様のおなりです。」」

挨拶をしたのは愛だった。

お館様「…愛。君に挨拶をされる筋合いはないよ。」

その言葉にしのぶ、甘露寺、宇髄、冨岡、不死川以外の柱達はどう言う事だといわんばかりの顔をしていた。

お館様「今日集まって貰ったのは愛を鬼殺隊から追放する為だよ。」

愛「ど、どうして私がっ…?!」

煉獄「親方様のおっしゃっていることがわかりません!何故でしょう!」

伊黒「追放されるのは愛ではなくあの矢神めの方じゃありませんか。だいたいあいつは…」

悲鳴嶼「嗚呼…尊敬する親方様の意思に疑問を抱くとは…」

無一郎「悪いのって、あの月柱じゃないの…えっと…誰だっけ…」


お館様「私はね。珍しく怒っているんだよ。」

その言葉に柱達はしんっと静まり返った。

お館様「ゆりえは責任感の強い子だから自分が悪いと思い込んでずっと我慢してきたんだよ。…しのぶ、蜜璃、義勇、天元、実弥は気付いたみたいだけど、少し遅かったね。」

お館様「愛はゆりえに任務を押し付けて手柄を横取りしていたね。それに、他の隊士の手柄を奪って柱に登り詰めた。君は鬼殺隊に必要がない。今日限りで解雇させてもらうよ。」

愛「そ、そんなこと私はっ…!」

お館様「してないとは言えないね?この報告書もあまねがいつも不審がっていたよ。名前以外綺麗な字で書かれているのに、君の名前だけ字体が違うとね。ゆりえの任務の報告書と同じ字で書かれた報告書が届いておかしいと思っていたんだ。」

愛「それは矢神さんに嵌められてっ…!」

お館様「ゆりえは愛が呼吸を使って人を操っていたことを知っていたよ。それでも柱の皆を信じて、それでも嫌われるのは自分のせいだと言ってずっと努力を惜しまなかった。愛のことも自分が何かしてしまったのだろうと言って愛の気が晴れるなら自分はこのまむでもいいと。…ずっと仲間だと思っていた柱達に傷つけられた時も自分の不注意だと言って誰も責めなかったんだよ。自分のせいだから黙っているようにと言われていたけれど、今回の件でそれは無視できなくなってしまったよ。」

愛「っ…!私はっ…!」

お館様「処罰が追放だけで済んだこと、ゆりえに感謝することだよ。今すぐここから出て行きなさい。」

愛「っ!」

愛はそう言われて悔しそうに刀を投げ捨てるとお屋敷を去って行った。

お館様「ゆりえが鬼舞辻に重傷を負わせている。回復までに時間がかかるだろう。ゆりえは自分の能力を過小評価しているからね…。…暫く鬼の動きが緩やかになるかもしれない。その間、これからどうするのか、皆でよく考えて欲しい。…今日の柱合会議はここまでだよ。」

お館様は怒った様子でその場を後にした。


柱合会議の日を境にお館様の読み通り、鬼達の動きはぴたりと止んだ。

あの日からそれぞれに思うことがあり、ゆりえの元を訪れ、どの者もゆりえの姿を見て自責の念に駆られた。

とんでもない間違いをしてしまったと。

ゆりえはあの日から1週間経った今も全く目を覚さなかった。

死人のように白い肌、ストレスからか白くなってしまった髪。宇髄に左目を移植する時に残った傷。
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