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ローを牢屋敷から助けたのは誰でしょう?

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

その一 若様(ドフラミンゴ)の場合

ワノ国花の都羅刹町―。牢屋敷にほど近い建物の屋根の上に、ピンクのフェイクファーを羽織った大男があぐらを組んで座っていた。この大男…ドフラミンゴがここに来た理由は、単なる気まぐれかもしれないし、何か目的があってのことかもしれない。

今日、この町では花魁の葬儀と将軍に盾ついた元大名の処刑が行われていたが、これが予期せぬほどの大騒ぎに発展してしまっていた。民衆が暴動を起こし、麦わらの一味の数人が大暴れしている。
しかし、ドフラミンゴの関心を強く引いていたのは、そのさ中に現れたローの姿だった。

(あいつ、虚無僧のカッコなんかしてやがる…。一緒にいるのは「最悪の世代」のホーキンスか。)

ドフラミンゴが今いるこの場所は、高みの見物を決め込むのにちょうどいいところだった。屋根が上手い具合に重なっていて、地上にいる誰かに自分の姿を見咎められることもない。

この町に住む人間は、SMILEのせいでどんなに悲しくても笑うことしかできないらしい。気味の悪い町だが、自分が売ったものをどういう使い方をしようが客の勝手だというのがドフラミンゴの考え方だった。ビジネスには余計な良識や温情は必要ない。

ローとホーキンスの間には険悪な空気が流れている。この分だとさっそく戦闘が始まるかと思って見ていたが、二人は睨み合ったまま動かない。檻の中に捕まっている罪人の中に、ローの味方が二人ほどいるらしいのがなんとなく分かった。

二人の間で交わされている会話の内容はもちろん聞こえなかったが、ドフラミンゴはこの場はホーキンスが制していることを察した。おそらく、ローはあの二人を人質に取られて、何らかの取引に負けたのだろう。

ローとホーキンスが牢屋敷の中に入っていく。そして、しばらくした後で、さっき檻の中にいたローの二人の味方と、大きな白い熊が出てきた。

(あのシロクマは…ミンク族か?ローの奴、面白いの飼ってやがるな。)

ローは牢屋敷の中から出てこない。ドフラミンゴは牢屋敷の屋根に飛び移った。


牢屋敷で、ローは海楼石の鎖に繋がれて、ホーキンズやドレークに尋問を受けているようだった。

(能力者は海楼石の鎖に繋がれちまったら終わりだろうに…。ローは何をやってやがるんだ?)

ドフラミンゴはローのこの行動にほとんど呆れていた。ローは仲間を逃がすためだけに自分が捕まったのだろうか。何か策があってのことなら話しは別だが、今のローの状態を見る限りでは、そういう訳でもなさそうに見える。あまりに無謀で、愚かなやり方だと思った。

(あのバカが…。あまりの無策っぷりに情けなくて涙が出てくるぜ…。ガキの頃のほうが少しは利口だったな。)

暴行によってローの帽子が脱げて落ちた。こうしてみていると、ローは子供の頃からあまり変わっていないように見えた。

(お~お~、なかなか派手にやられてやがる。フッフッフッ)

ローの尋問は長い間続けられていた。額や口から血が流れ、苦痛で顔が青ざめているが、ドフラミンゴはローをすぐに助け出すつもりはなかった。今出て行けば自分がこの国にいることが知られてしまうし、生意気な弟が痛い目に会わされているところを見るのはちょっと面白かった。

昔、ファミリーの一員だった時はあんなに自分を慕っていたローが(何せ自分はローに勉強を教えてやっていたのだ)、コラソンに連れ去られてファミリーの前から姿を消し(足抜けを認めた覚えはない)、13年後に自分の前に姿を現した時は、自分を陥れようとしてきたのである。ざまあみやがれと思いながら暴行の様子を観察していた。

しかし、その様子を見ているうち、ドフラミンゴはだんだん機嫌が悪くなってきた。はらわたが煮えくり返る思いを我慢しつつ、時を待つ。

やがて尋問はいったん中止された。周りに人がいなくなったことを確認すると、ドフラミンゴはローの前に音もなく姿を現した。

「お前は…!なぜここにいる?インペルダウンに収監されたんじゃなかったのか?」

ローがかすれた声を上げたが、ドフラミンゴはなぜ自分がここにいるのかを親切に説明してやる気はなかった。床の上に座っている傷だらけのローを見下ろす。

「可愛さ余って憎さ百倍ってのもあれば、憎さ余って可愛さ百倍ってのもあるのかもしれねえよなあ…。そう思わねえか?」

ローは下からドフラミンゴを睨み付けた。ドフラミンゴは薄く笑った。

(ガキが…。)

ドフラミンゴは無言でローの鎖を切った。ローはドフラミンゴの行動をいぶかしんだ。

「どういうつもりだ…ドフラミンゴ。」
「それはこっちのセリフだ。てめえはアホか。自分が捕まってどうする…。情けなくて涙が出る思いだったぜ…。」
「…」
「…まあいい。これは貸しにしておく。ずいぶんと高い貸しになるだろうがな。」
「こんなちんけな貸しを貧乏くさく覚えておくつもりか?そんなんだから額が上がっちまうんだよぉ、おっさん!」
「言ってくれるじゃねえか…。悪いがな…ロー、おめえの額もたまに結構広いぜ。その年でよお!!」

二人の喧嘩がどうやって収まったのか…もしかしたら、運の悪いホーキンスが尋問の続きをしに一人でやって来たのかもしれない。

ローは牢屋敷から脱出し、ドフラミンゴはどこかに飛び去った。

ホーキンスをそっちのけにして、この場でローとドフラミンゴの戦闘が行われなくて良かったかもしれない。
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