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Moon face

原作: 名探偵コナン 作者: takasu
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27

全員が彼女の名前を叫ぶ中、僕は駆け寄ることも、名前を呼ぶことさえもできなかった。

"また僕の周りにいる人間が死んでいく"

そんな言葉が頭を駆け巡った。

ぼうっと助け出される彼女をただ見つめることしかできないでいると不意に誰かに肩を掴まれてはっとした。

赤井「降谷くん!しっかりしろ。どういう状況でこうなった。今説明できるのは君しか居ないんだぞ。」

降谷「あ、かい…」

風見「降谷さん!矢神さんが…矢神さんがこれをっ…!」

そう言ってくしゃくしゃで所々に血のついた折り畳まれた紙切れとUSBを渡して来た風見は涙ぐんでいた。

それを受け取り紙切れを開いて僕は絶句した。





今回の組織の件での報告事項です。

資料に使ってください。

全てを知っていた上で騙しててすみません。


万が一、雪と涼にもしものことがあったら。

私が死ぬことを許してください。

お願いです。助けないでください。

p.s.最期に仕事を丸投げしてしまってすみません。

矢神美弥妃


僕はその手紙を握りしめた。

降谷「クソっ…!」

僕は何もわかっていなかった。

彼女は初めから全てしっていたんだ。

こうなることも、全て。

その上で一人で動くことを選んだ。

それなのに僕達が動いたせいでこうなってしまうこともわかっていて

自分の命を投げ打ってでも奴らを抑えるつもりだったんだ…!

悔しくてたまらなくて僕はその場に膝をつき拳を地面に叩きつけた。

何度も何度も。

自分の不甲斐なさに腹が立って仕方がなかった。

風見「降谷さん!やめてください!降谷さん!」

風見がそう叫ぶが降谷の耳には届いてなかった。

赤井「やめろ。やめるんだ、降谷くん。」

赤井に腕を掴まれて止められたがそれを乱暴に振り払おうとした。

があいつの方が冷静だった。

赤井は僕の頬を叩くとしゃがみこみ僕の手元の手紙をするりと奪い取った。

赤井「冷静になれ。…ちゃんと手紙を読むんだ。」

そう言って突き返された手紙の裏面には続きがあった。

"爆弾がまだ残っています。地下です。一刻も早く現場に残っている人の避難指示をお願いします。"

先程の手紙の丁寧に描かれた字とは違って慌てて書いたような字だった。

赤井「反省も何もかも後だ。今は地下の爆発に巻き込まれないようにここにいる者達を避難させるのが先だ。」

赤井はそう言って立ち上がるとその場にいた者達に簡潔に説明し、指示を出し始めた。


赤井に言われてハッとした僕は風見と周りに指示を出した。

今回は仕方なく…FBIと協力して無事に全員避難させることができた。

全員が爆発範囲内から避難し終えた直後、会場は大きな爆発音とともに崩壊した。

赤井「彼女が手紙を残してくれていなかったら危なかったな。」

避難し終わり警察車両の近くにいた赤井と降谷達は変わり果てた会場に目を向けていた。

降谷「…っ」

風見「降谷さん…」

悔しそうに拳を握りしめる降谷に風見がうろたえていると赤井が降谷の方に視線を移した。

赤井「米花中央警察病院だ」

風見「え?」

赤井「先程搬送されたらしい。」

風見「降谷さん、行きましょう!」

降谷「……今は現場の収集が先だ。」

風見「降谷さん!」

赤井「彼女の見舞いに行って貰いたい。なんせ搬送されたのは警察病院。FBIが倒してもらうのには時間がかかりそうだ。こちらとしては今回手を組んだ相手の状況も把握しなければいけない。現場の収集は我々FBIにまかせてくれないか?日本の現場検証を学ぶいい機会になる。優秀すぎる君達二人がいれば勉強する間もあたえてもらえそうにないからな。風見くん、だったかな?降谷君と行ってくれないか」

風見「行きましょう、降谷さん!今回はFBIに任せて…」

降谷「まかせられるか!FBIなんかにっ…!」

赤井「意地を張っている場合じゃない。彼女は君の上司だろう。安否の確認くらい直属の部下がやるんだな。」

降谷「意地なんかっ…!!」

そう言いいながら赤井につかみかかろうとした降谷を止めたのは風見だった。

風見「…いきましょうっ…降谷さん…」

降谷「はなせ、風見!!」

風見「…っ…貴方ほど優秀な方ならわかるはずです!今自分達が何処へ行くべきなのか!」

そう言った風見に言い返そうとした降谷だったが風見の泣きそうな顔に驚いていた。

そんな2人を見て赤井は一言

赤井「…頼んだよ、風見くん」

そう告げると早々に現場の収集へと行ってしまった。


風見「矢神さんはっ…あの手紙を渡す時も…自分の事よりも…部下達の心配を…していたんですっ…言葉ひとつ発するだけでも辛いはずなのにっ…部下達を、周りの人間達を心配して…大丈夫だと伝えるとよかったって…っ…。自分は…矢神さんの元に少しでも早く行きたい…です…降谷さん、どうかお願いします。一緒に、彼女の元に行ってください…」

風見はそう言って深々と降谷に頭を下げた。

降谷「…行くぞ、風見。」

降谷は頭を下げる風見の横を通り過ぎるとRX-7の運転席に乗った。

風見が助手席に乗ったのを確認した降谷はゆっくりと車を発進させた。
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