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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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友の灰

 いったん話を切ってから、再び話し出す。
「で、その血は続く。絶対ではなく、隔世遺伝的に、突然だ。俺とこいつはその血族の子孫で、能力者の予兆があったとかで親に捨てられた。拾って育ててくれたのが、変わり者の人間でな。自らを魔術師だと名乗っていた。そいつは吸血鬼の男に惚れてこっちに来たものの、吸血鬼化するのを躊躇した。中途半端な状態でいたことで、術に対して能力が発展した。それを吸血鬼は忌み嫌った。そいつの子孫が残ることを恐れ、辺鄙な場所に隔離した。そのひとつがここだ。もう主はいない。俺たちがひとりでも生きていけるようにと、知る知識を教えて骨になった。その育ててくれたガキたちの中に、おまえたちがピエロと名乗っていた者とオーレン(仮名)もいた」
「……ちょっ、ちょっと待った! オーレン(仮名)と俺は結構子供の頃から知ってるけど?」
「吸血鬼は能力者を毛嫌いしていたが、組織としては能力者は戦力のコマとして使えると判断をし、ガキの頃からそういうものだと躾れば手懐けられると考えた。俺やこいつは素行がわるかったからか、なかなか貰い手がなくて魔術師の元に長くいた。が、オーレン(仮名)はあの小心者的なところが気に入られて、さっさと連れて行かれた。おまえが出会ったのは、その後だろう。あいつの植物に対しての能力の異常さは今回の例で知ってるだろう?」
「……まあね。もともと次元が違うって思ってたけど、あそこまでとは」
「ピエロって呼んでたやつも、そこそこガキの頃に貰われていった。で、まさか考え方が敵対している組織にいるとは思わなかった。今回の件で、すぐにあいつだとわかったが、あいつは俺たちのことを知らなかった。記憶の操作を受けたのかと思ったが、そうじゃない。あれは、ピエロであってビエロじゃない。じゃあ、誰だ? 灰になって死んでいたって、いつの頃だ? で、ちょっと思い出したんだよ。ドロ人形の魔術を使えば可能なんじゃないかってな。が、あれは高度だ。俺はほんの少し、時間稼ぎ程度しか使えないが、ずっと使いつづられるくらいの能力者に心当たりがある」
「……つまり、ピエロに死因に疑問があり、いままでのピエロは誰だったのか、犯人を捕まえたい、ってこと?」
「そうだといってるだろーが」
「ああ、もう、カリカリしない。その話でいうと、吸血鬼化を迷った人間がやっばり人間の世界に戻りたいわ~といって戻ったり、もしくは逃げたりした事例なんかもあるのかな?」
「はあ? そっちかよ! まあ、あるんじゃね? ……て、そうか、そっちの線か! ケインの元となったオリジナルは人間。吸血鬼化の途中で人であることを選んだ人間。それだったら、そいつが人間との間に子孫を残せば、血は薄くなるが人間の常識外の能力があったとしても不思議じゃない。もしそうなら……」
「オリジナルを突き止めるのは難しい。エレインって人も知らずに採取かなんかして、その人にあったものじゃなく、研究の結果と思ったとしても……」
「ふん、それにもっと早く気づいていれば、こんなにややこしくはならなかっただろうな。けど、もう手遅れだ。黒幕は吸血鬼も人間も、そしてそれらのハーフ、その子孫も憎んでいる。憎しみの連鎖は止まらねーよ。で、別に復讐とか好きにやれよって感じ。けど、許せねーんだよ。やり方がよ」
「オーレン(仮名)を契約で縛っておいて? ……て、違うな。そうか。きみらは、契約で縛ることでオーレン(仮名)を守ったんだ……小心者のオーレン(仮名)が間違いを起こさないように。だけど、まさか人間を殺してしまうほど暴走するとは思わなかった。……いやいや、待て待て。そうじゃないな。横やりがはいったんだ……俺は自分の幻覚にオーレン(仮名)が横やりをしたんだと思ったが、さらに横やりをしていた人物がいた。それがピエロだ。入れ替わっていたピエロは、俺たちと行動をともにすることでより確実に横やりを入れられるようになった。少佐の回復に必要なのは、入れ替わったピエロの命……オーレン(仮名)を殺しても意味はない。じゃあ、なんでオーレン(仮名)を殺したいのか……」
「決まっている。あのバカが、黒幕を知ってしまったからだ。変に能力に長けていたがために。いや、小心者すぎていろいろ準備しすぎたんだろうさ。あのばか」
「それで、誰が黒幕だと思ってるわけ?」
「……簡単に言えるか! さきに、おまえの知るピエロのことを言え」
 マックス(仮名)はともに行動していた時のピエロについて語った。

「はあ? カタコトの言葉だ? まんま怪しいじゃねーか。なんとも思わなかったのかよ」
「いや、そういうのもあるんじゃないかと。それに、話しているとことか、そっちも聞いていたよね?」
 そうだっけか? と小柄な男が大柄の男に聞く。
 聞かれた方が頷くと「マジか!」と叫び、
「そーいうおまえは気づかなかったのか?」と責める。
 マックス(仮名)は、どっちもどっちだと思った。
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