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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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意外な協力者

「マックス(仮名)がここに来ませんでしたか?」
「いや。なにかあったのか?」
「ええ、まあ。少し意見の食い違いが出まして、そのあとから姿を見なくなってしまって。少し言い過ぎたと思いましてね。信頼の回復をはかろうと捜しているのです。もしかしたら、あなた方に愚痴を聞いてほしいとくるかと思いますが、その時はこちらにも教えていただきたい」
「つまり、足止めをしろと?」
「そうですね。お願いできますか?」
「……ああ」
「それと、ついでといってはなんですが、シャールさんと少し個人的にお話をしたいと思っていますので、時間を割いていただけないでしょうか?」
「シャールがよければ。だが、ここで話しても差し支えはないんじゃないか?」
「無粋ですね。あなたがいては話せないこともあるのではないでしょうか? 擬神兵のことをお聞きしたいのです。お父上のことに触れてしまうかもしれないですし。それは、あなたとしても避けたいことなのでは?」
「擬神兵のことなら、シャールではなく俺に聞けばいい。俺は擬神兵だ。それとも、ケインに関しての探りか? シャールは確かにケインと共にいた時期もあったが、それだけだ。なにも知らない。聞いたところでなにも出てこないぞ?」
「……っう。それは……」
 ハンクがアストレイ(仮名)を威嚇する。
 ジェラルドはアストレイ(仮名)にも疑惑をかけていた。
 こういう下心を見抜いていたのだろうか……
 張りつめた空気がひんやりとする。
 先に視線を逸らしたのはアストレイ(仮名)だった。
「……そうムキになって否定されると、余計に怪しく思われるものですよ。今日のところはこれで失礼しますが、またいずれ……」
 アストレイ(仮名)はそう言って去っていった。
 ハンクは、
「シャール、絶対にひとりにはなるな」
 と念を押す。
 その口調が重く、これから何かが起こる予感がしてならなかった。
「マックス(仮名)さん、心配ですね。行方がわからないと嘘を言ってもどんな得があるかわからないので、本当ではないでしょうか?」
「そうだろうか。自身で隠しておきながら、消えたと騒ぎにしたという事例は少なからずある。いったん、戻るか……」
「どうやって? 私たちだけでは無理です。それに、いま戻ったら、少佐はどうなりますか?」
「……そう、だな。それがあったな」

※※※

 脱獄に成功したマックス(仮名)は、凹凸コンビに連れられ、薄暗い岩肌の合間にいた。
「なんで、こんな辺鄙な場所に移動するんだ、凹凸コンビ!」
「凹凸っていうな!」
 このやりとりは今後も定着しそうだと、大柄の男は思った。
「ふん! こっちだってな、大切な場所のひとつを提供する羽目になってんだ、感謝しろ」と小柄の男。
 それに対し、大柄の男は「よけいなことを言うな」と囁く。
 つまり、あまり知られたくない場所なのだとマックス(仮名)は悟った。
「そういう場所をいくつか持っているってことだな」
「……っ!」
「ああ、いいよ。深く詮索はしないから。なんていうかさ、一族の結束は堅いとか言われて育ってきたけど、実際、大人の世界に入れば一枚岩でないことはわかるじゃん? 組織内だけは団結と思ってもそうじゃない。その中にいくつもの小さい組織みたいなのがあってさ。凹凸コンビは組織とは別に動いていたってことだろ? 頑なにオーレン(仮名)の契約の解除を拒んだのって、その活動絡みもあるってことだ……」
「……なっ……」
「ああ、いいって。そっちはなにもしゃべってない。俺の勘がよすぎるってことでいいんじゃないか?」
「……っう……。おまえ、嫌いだ」
「ああ、気があうね。俺も好きか嫌いかの選択でいうなら、好きじゃないよ。人を洗脳するようなことをする輩はさ」
「……言ってろ」
「はいはい……」
 岩肌に沿って歩くと、人ひとりが入れる空洞が出現。
 彼らはその中に入った。
 入り口は本当に狭かったが、中は広々としている。
 地中で生きる生き物の住処のような作りで、凹凸コンビはその中のひとつの部屋に入った。
 部屋の中は薄暗く、辛うじて相手の顔が認識できる程度。
 岩をくり抜いて作ったのだろうか、部屋というよりは穴の中といった方が適切な場所だった。
 そこに明かりが灯る。
 灯るといっても、小柄な男が作りだしたもので、術によって灯っている。
「へえ、そういうこともできるのか」
「……どうせ、気色悪い、とでも思ってんだろうが」
「え? どうして? 純粋に凄いなって感じだけど?」
「おめでたい奴だな、おまえ。なあ、なんであいつらは面を付けなきゃいけなかったのか、知ってるか?」
「やたらと本名を名乗るな、素顔を別の種族に晒すなっていうのは、厳しくいわれてたからな。別に不思議は思わないな。人間の世界でも名前を名乗るなっていうところもあったし、えっと、言霊とかに囚われるだったかな。東洋の島国あたりではあるらしいけど」
「……面を付けているのは能力者だ。純粋な吸血鬼にはそれほどの能力はない。突然変異と以前は言っていたらしいが、古い書物にはほかの種族との交わりで希にそういった者が生まれるらしい」
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