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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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薬草を求めて

 それがあることで、ピエロくんの知識の中の植物に関する補助的な役割をしてくれるのだとか。
「便利……なのか?」とハンク。
「使い方次第かな」とマックス(仮名)。
 もう個々にふれこれとツッコミを入れていられる時間はない。
 マックス(仮名)とジェラルドの姿が霧に包まれて消えた。

※※※

「大丈夫でしょうか……」
 ついさっきまで、そこにいたはずのふたりの姿がなく、その場所を見ながらシャールが呟く。
 ピエロくんとオーレン(仮名)の存在を抜けばハンクとふたりだけ。
 ほんの一日前まではふたりきりの旅だったははずが、たった二日の間に多くの人と関わりを持った。
 こんなに濃厚な時間を、かつて経験したことがあっただろうか。
「マックス(仮名)の方はわからんが、ジェラルド軍曹は、受けた任務は必ず遂行する。そういう人だ。信じて待っていればいい。問題は……」
 ハンクは視線の先で横たわっているオーレン(仮名)を見た。
「おそらく、すべてが解決するまでは、双方にとって一番いい落としどころにもっていくためのパフォーマンスを繰り広げるだろうが、解決してしまった時の処分は……」
 ハンクには彼、オーレン(仮名)の末路がわかっているような口振りであった。
 ピエロくんにもわかっていいるようで、なにも言わない。
 シャールはふたりの態度から、なんとなく察してしまえる自分が悲しくなっていく。
 なぜ、そんな考えが過ぎれるのだろうか。
 なぜ、反省をしているのならそれを汲んであげてほしいと言えなかったのか。
 わかっている……目の前で、あれだけ無関係の一般人が無惨に殺されたのだ。
 許されるはずがない。
 もしかしたら、本人もわかっていながら足掻いているのではないだろうか。
 だとしたら、なぜ足掻くのだろう?
 そこになにか理由がある……シャールはそんな風に考えはじめていた。
「あの……」
 黙っていよう、こんな風に考えてしまう自分が嫌いになってしまいそう……シャールはそう思っていたのにも関わらず、口から声となって出てしまっていた。
 ハンクの視線が自分に向いていることで、声に出ていたことに気づいた。
「どうした? なにか気になることがあるか?」
「えっと……」
「別に畏まることはない。通常の考えではないことを俺は自覚している。末路がほぼ決まっていることを知りながらひと芝居をうち、誘導して聞き出そうとしているんだ。シャールが言いたいことくらい、予想はできる」
 だから気遣いはするな……と言いたいのだろう。
「たしかに、ハンクさんたちのやっていることは……その、もう決まっているのにそうではないように誘導しているのは……。でも、そうしなければ聞き出せないこともあるのだし、仕方のないことと思うことはできます」
「ああ、それでいい」
「それで、その感情論的なこととは別に、私、ひっかかることがあって。その、末路がわかっていながら相手の芝居にのっかっているのだとしたら、そこにどんな意味があると思いますか?」
「……ん? どういうことだ? やつも、知りながらこちらの芝居にのっている。と、言いたいのか?」
「はい」
「……そうだな。もし、そうだとしたら、時間稼ぎ。なにかを引き延ばしたい。なにかを待っている。そんなところじゃないか?」
「そうだとして、それをするのはなんででしょう?」
「それは、本人に聞くしかないな。なあ、そうだろう? そろそろ芝居も終わりだ。寝ているふりをするな」
「……え?」
 シャールと話していたハンクは、いつのまにか気絶したままでいるオーレン(仮名)に話しかけている。
「側にいるピエロも気づかなかったわけはないな。なぜ気づかないふりをしていた?」
 空気が重々しくよどむ。
 この流れは、ビエロくんもオーレン(仮名)側の人で、ふたりで打ち合わせをしたと思われても仕方がない。
 いま、ここにはマックス(仮名)がいない。
 ムードメーカー的な彼が不在のいま、一度険悪な雰囲気になったら最後、殺伐とした空気がより酷なるに決まっている。
「あの……、ハンクさんも酷いです。気づいていたなら、さきに言ってください。黙っていたなら、ハンクさんもピエロさんも同罪です!」
 ここはどちらが悪いわけではないという流れにしたい。
 だが……。

※※※

 残してきた四人がそんなことになっているとは知りもしない、マックス(仮名)とジェリド軍曹は……。

「ここは?」
 霧が晴れるとそこは森の中だった。
 見れば森とわかる場所なのだが、聞かずにはいられなかったジェラルドである。
「森だけど? て答えが聞きたいわけじゃないよな」
「そうですね。ここはもうあなた方の世界、なのですよね?」
「そうだね……森なんて、どこの世界もあまり変わらないと思うけど? ほら、自然界ってそうそう歪なものなんてないでしょ。まあ、オーレン(仮名)の巨大植物や人喰植物は次元が違うけど」
「……そういったものは、人工的なので?」
「そうだね。だけど、世の中、なにが存在しているかなんて、すべて把握している人はいないでしょ」
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