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赦されざる者たちは霧の中に

原作: その他 (原作:かつて神だった獣たちへ) 作者: 十五穀米
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催眠療法?

 シャールの目には、この二日間で見慣れてしまった光景が広がる。
 惨劇ではあるが、戻ってこられたという安心があった。

「よし。これでオッケーっと」とマックス(仮名)。
「こんなところでも、戻ってこられると、安心するっていうか……」
 と付け加える。
 普通なら不謹慎と言いたいところだが、実のところ、シャールも戻ってこられたことに安堵していた。
「それで、あの……」
 シャールはどのタイミングで切り出すのが正解なのか、考えてもでないことは考えないようにした。
 だからといって、直球で訊くこともできず、濁す。
「ああ、そうだった……」
 とマックス(仮名)が気づく。
「それはちゃんと順序立てて話すね」
 マックス(仮名)がどこか落ち着ける場所はないかと聞くので、それなら客室車両がいいのでは? とシャールは提案。
 その後、列になって移動した。

 ハンクとシャールが使っていた部屋ではこれだけの人数は入らない。
 そこでオーレン(仮名)を部屋の簡易ベッドに横たわらせ、様子をビエロくんに託す。
 扉はあけたままで、ほかの面々は通路の壁によりかかりながら、これまでのことを話、共有を果たす。
「……と、いうわけなんだよ」
 マックス(仮名)がそう締めくくった。
「では、こちらにいれば、オーレン(仮名)さんの追っ手は来られないということですね?」
「ん~、厳密にはちょっと違うかな。オーレン(仮名)を追えと命令が下れば、人間界へ行くことを禁止されていない一族の者はくると思うな。ただ、人間に手を出すかどうかは追っ手の考え方次第。でも、オーレン(仮名)を庇おうとすれば敵と判断されるとは思う」
「……そうですか。では、あまり時間はありませんね」
「そういうこと。じゃあ、なにから始めようか」
「やはり、ライザさんの救出、捜索ではないでしょうか?」
「そうだね。でも、少佐をこちらに連れてくることも忘れちゃいけない」
「……あ、そうですね。アストレイ(仮名)さんにお任せしていれば、安全ではないかと思っているのですが」
「うん。それは信じてもらって平気。でも……」
「そうですね。絶対はないですよね。あんな、あんな冷酷な感情を持っている人、はじめてです」
「普通はそうなんじゃないかな? 今の状況が異常なんだよ。ごめん。俺にも責任がある。キミたちをあっちの世界に連れていったから」
「そんな……そんなこと、ないですよ、マックス(仮名)さん。ハンクさんと旅を続けていれば想定外のことばかりかもしれないですし」
 するとハンクが「やめるか?」と訊く。
 シャールは即答「やめないです」と答えると、少しだけ場が和らいだ。

「さてと。仕切り直して優先順位を決めなきゃだな」
 珍しくマックス(仮名)が真顔でしかも落ち着いた口調と声色で言う。
 それに対しハンクは……
「優先順位はオーレン(仮名)の体調回復だな」
「まあ、そうなるだろうね。彼がすべての鍵を握っていると言っても過言ではない」
「そうだな。だが、ライザの居場所は、あの者たちも知っているようだったが?」
 ハンクは居場所がわかるのなら、先を越されるのではないかと危惧する。
 ライザを人質にとられ、オーレン(仮名)との交換などを要求されれば、打つ手がない。
「ん~、そうなんだよね。でも、彼らがその場所に行くことはできないと……思う」
「……なんだ、その間は」
「あ~、うん。断言できないっていうのが本音。一応、意識のシンクロは可能。でも、作り出してもいない幻覚の中に入る術は……知らないな。俺が知らないだけで存在するかもしれないから、断言できない。その辺はピエロくんが詳しいと思うよ」
 マックス(仮名)がオーレン(仮名)の様子を見ているピエロくんを見た。
 ピエロくんは、オーレン(仮名)の様子を気にかけながらも、しっかりと会話は聞き取れていた。
「……ホウホウガ、ナイ、ワケデモ、ナイ」
「え? 本当に?」
「……なぜマックス(仮名)がそう驚く? おまえ、自分が知らないだけで存在しているかもって言った。おまえが」
「ああ、うん……悪い。けど、ピエロくんの言い方から察すると、あまり効率さは期待できなさそう」
「……ヨク、ワカッタナ。ソノ、トオリダ」
「……やっぱり。それで? どうするつもり?」
「マズ、コイツ、オーレン(カリナ)ニ、アンジ、カケル」
「意識ぶっ飛んでるそいつに?」
「サイミン、リョウホウ、テキナ?」
 そこにジェラルドが加わった。
「寝ている間でも片方の脳は起きていると聞いたことがあります。軍内部でも、寝ている間に知能的な学力アップが期待できるという話が出ていたらしいです。実現はしていないようですが」
 その話を聞いていたマックス(仮名)が驚く。
 が、すぐに真顔に戻り……
「あれだろ? 人体実験の範囲に入る入らないで揉めたんだろう?」
「……お察しの通りです。擬神兵のことがありましたから。人を人以上に人工的に作り出すのはいかがなものか……と。学びであればよいとの意見もありましたが、寝ている間に……というものがひっかかりだったようです。それが、可能なのですな、ピエロ殿」
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