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狂い咲き

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: saran
目次

芽生えた愛

相変わらずヒンヤリした空気をまとってるけど、もう慣れちゃった。

ユノ様がまとうシトラスのような香りも落ち着くし、着物や髪が揺れるのもなんだか好きって・・・

そんな風に思えるようになったよ。



それに・・・




・・・そばでよくよく見ても、ユノ様って本当、綺麗な顔してるよね・・・


「なんだ?」

「えっ、あ、いや!すいません、ジロジロ見てて。ユノ様、すごい淡麗だなーと思って」

「・・・なんだ、それは」

「え、褒めてるんですよ!」

「・・・そうか」



え、分かってる?伝わった?

一応かっこいいって、意味なんだけどな・・・


「人斬りの人達ってみんな綺麗だし、ユノ様こっちの町にいたら、すっごい人気だと思いますよ!

女子が放っておかないっていうか」



無感情の力を持つユノ様が、喜んだり、驚いたりとか・・・
そういうのが見たくて。
ついついそんな事を口走っちゃった。


ユノ様は、しばらく意味がわからなそうな顔をしていた。

「・・・そうか」

「ま、いいんですけど。これ、お茶菓子食べましょ」


反応が鈍すぎて、言った私が恥ずかしくなるよ。


「お前は、不思議な事ばかり言ってくるな。
俺はお前に会ってから、初めて言われる事が多々ある」

「そうですか?


・・・私最初、ユノ様は恐ろしい人だと思ってました。

もちろん今だって、きっと人を斬る現場を見ちゃったら、怖くて震え上がると思うけど・・・



でも、本当はすごい優しいですよね?
私、ここに来てユノ様といながら、そう思いました」



「・・・お前は、俺を戸惑わせるのが好きなのか?」

「え、何ですかそれ!思った事言っただけなのにー!

ユノ様はいつも、黙って私の願う通りにしてくれるし、何ていうかー・・・

居心地が、良いです。
そう思うようになりました」



・・・これ、本当の話。



ユノはかなり困惑したような表情になったが、ひなのは何となく、そんなユノが見れられて嬉しかった。




・・・人斬りといて居心地がいいなんて、まるで狂ってるよね。

私だって、そう思うよ。
でも、本当なんだもん。


何にも動じないユノ様、静かで不思議なオーラを放ってて。

人斬りだけど怖くなくて、サラリと私を受け入れてくれてる気がして・・・





・・・なん、だろ。



この気持ち。




・・・やだな、なんか嫌な予感がする。



片思いが始まる前って、こんな気持ちじゃなかったっけ・・・




・・・


ははっ・・・まさか。


「居心地が良い・・・か。


そんな事を思われるとはな。

お前は人間で、俺は人斬りだ。
不思議な事もあるもんだな。



俺もお前といて、斬りたいと思った事は今まで一度もない。


愛は分からないが、それが嫌なものではないことは、お前といると良く分かるようになった」


「・・・ユノ様」


そんな事、言われるなんて・・・。



「ありがとうございます。嬉しい」


・・・今、言った方がいいかな?
八龍のこと。

言いにくいな・・・



「・・・あの、ユノ様」

「なんだ?」

「あの・・・


お、美味しいですか?」

「これか?・・・あぁ、良い甘さだ。疲れも癒える」

「良かったです」



・・・って、ちがーう!!

違うよ・・・。



「そうだ、お前に言おうと思っていたんだが。

・・・宮古寺に行って、お前が八龍の使い手だと言うことを、自覚できたろう?


だから八龍を、そろそろ手にしてみたらどうだ」


・・・え!


「それって・・・

えっと、八龍をただ持ってみろってことですか?
それとも・・・くれるってことですか?」

「妖刀は二人の使い手がいると言ったろう。

使い手が現れれば、妖刀は二つ現れる」

「・・・はい。・・・え?どういう事?」

「コピーされると言えば早いか。
まぁ、やれば分かる。

お前が望むならな」


ちょっと待って、この話って・・・ナイスタイミングすぎない?!


「もちろん!欲しいです!」

「・・・そうか。てっきりその逆かと思ったが・・・


それなら話が早い。お前の用が済んだら呼んでくれ」

タイミング良くそんなことを提案され、ひなのは夕飯前に、ユノの元へ向かった。



心の準備を、していた。
妖刀を持つということは・・・

ただの人間では、無くなるということ。

それでも、十士郎の言う通りにしたら、帰ることができるわけだ。
その時には、妖刀など手放して帰ればいい。


そう思った。



「・・・準備をするから、少し待っていてくれ」



ユノの部屋で待たされること30分。

ユノは空牙と麗憐、もう一人知らない人斬りの、三人を連れて来た。



「妖刀を持つんだってな、ひなの。人斬りの仲間入りだな」

「急にそんなことになってるから、びっくりだよ本当」


麗憐と空牙にそう言われ、苦笑い。


覚悟は決めたけど、人斬りの仲間入りだなんて言葉にされると・・・

なんだかな・・・。
そんなんじゃないって、言いたくなるけど。



「ここに立て」

「・・・はい」


ひなのはユノの言う通りに、部屋の中央に立った。


なんだか、緊迫したような空気が流れる。
儀式みたいな雰囲気。


ユノが指示をすると、知らない人斬りの男が、細い刀を持ってきた。


「それを受け取って、横に持っていろ」

「はい。・・・っと、うわ、重い・・・!」



何これ、刀って見た目以上に重いじゃん!


「おいおい、それで重いって・・・一応、細くて小さいの選んだんだけど」

空牙は半ばあきれ顔だ。


「え~・・・ごめん、重い・・・

でも、平気、大丈夫」

「始めようか。子(ね)の方に空牙、酉(とり)に麗憐、服部(ハットリ)は卯(う)だ」


なに言ってるか分からないが、それぞれ三人はひなのを囲うように位置に着き、ユノはひなのの正面に立った。
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