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狂い咲き

ジャンル: 異世界(恋愛) 作者: saran
目次

麗憐の怒り

「何故、俺がお前の服を選ばなきゃいけないんだ」

「え、何故って・・・だめなんですか?私達の世界だと、そのー・・・愛があればやる事なんですけど」

「言ったろう、俺には愛がないと」

「分かってますけど、力が欲しいならちょっと努力も必要です!
ね、一枚私に似合うの選んで下さいよ」



これには、ユノはかなり困惑した様だ。
しばらく黙り込むと、顔をしかめて服を眺めだした。


「ふふ」
「何笑っている」
「あ、いやいや。なんか、ちゃんと考えてくれるんだなって思って」

「お前が選べと言ったんだろう」
「そうなんですけども」


何を選ぶのかな?
ユノ様はかなり清楚な色の服を着てるし、立場はさておき、あんまり派手なものは好きじゃないのかも。



その後、ひなのも気に入ったものを幾つか選び終えた頃、ユノはどこからか一枚の羽織りを持ってきた。


「これは、絹でできた羽織ものだ」


真っ白で飾り一つない、サラッとした・・・ひなの達が言う所の、ショールカーディガン。



「白は何にでも合うし、俺は白を着ていると落ち着く。
これなら袖もまくれるし、腕が短い者でも着られるはずだ」

「腕が短いって・・・」


私の事ですよね、どうせ。・・・まぁ、いいけど。


「ありがとうございます!じゃ、それにします」



ひなのはお会計を済ませると、財布がとんでもなく空になった。
ただ幸いだったのは、こっちの世界はどうやら物価が安い。


財布に二万しかなかったからね、私。普通こんなに買えないよ。



「満足したか?」
「うん、とても!」
「他はどこに行きたいんだ?」
「あとは、えっと・・・雑貨屋さんとかあれば。

鏡とか、化粧品とかも欲しいし・・・あの、でもなるべく安い所でお願いします・・・」


次に連れて行かれた店は、ひなのが求めるものが、なんでも置いてありそうな店だった。

ここにはかなり長居してしまったが、ユノは文句も言わず、腕を組んで黙って待っていてくれた。


「長かかったな」

「欲しいものがいっぱいあって!しかも、安いし!びっくりですよ本当」


・・・なんか私、こっちに来てから初めて、ちょっとだけ楽しいと思えてるかも。
女子にとって、買い物の力ってすごいや。



「楽しそうな顔をしているな」
「えっ、そうですか?」
「ずっと、死んだような顔しかしていなかったろう」

「そ、そんな・・・まぁ、でもそうかも。

だって、急に自分の生活から引き離されて、人斬りの町に来るって・・・私からしたら、死んだも同然ですからね」

「・・・そうか」



少しだけど、ユノと普通に話せるようになってきた気がする。
まだ緊張はするし、なるべく目を見たくないけれど・・・
でも、"今すぐ斬られるかもしれない"っていう恐怖は、いつのまにか消えていた。




「他は何を買いたいんだ?」
「えーっと、あとは・・・」


そう言いかけて、ひなのは前から何気なく歩いてくる女を見て、ピタリと立ち止まった。

向こうもパッと立ち止まる。



「ユノ様・・・!」


あの人だ!ここに着いた時、失礼にもひなのに暴力を振るった女。
確か・・・れんれんとか、えいれんとか、れいれんとか、そんな感じの名前の!


「あぁ、麗憐(レイレン)か」


麗憐はユノの後ろのひなのを見ると、顔色を激変させた。
ひなのも、体全体に警戒態勢がひかれる。


「ユノ様!こんな女を迎え入れたなんて、本当だったんですね・・・!

麗憐は悲しいです!」

「何故だ?」
「人間と我々は、相容れぬ関係!高貴なユノ様に、そんな女がまとわりつくかと思うと・・・!」

「八龍が決めたことだ」



この麗憐とか言う女は、ユノのことを相当慕っているらしい。


・・・私だって、好きでここにいるわけじゃない。
そう、叫んでやりたかった。



「ユノ様、行きましょ」


ひなのは急に居心地が悪くなって、思わずユノの背を軽くプッシュし、歩くのを促したー・・・が。



「おのれ!!」


その瞬間だった。麗憐が憤怒の形相で、狂わんばかりに怒鳴った。


「ユノ様に触れるな!!」


「大声を出すな、麗憐」


ユノの声が低くなり、背後からスーッと殺気のあるオーラが放たれる。


「ユノ様・・・!

なぜ、その女を庇うのですか・・・!?」

「俺の言うことに不満があるのか?」

「そんなことはないです!でも、こんな何も取り柄がなさそうな、ちっさくて間抜けな顔した人間より・・・

あたいの方が、ユノ様のお側にいるのに相応しいはず!


ユノ様は一度もそれをお許しにはならず、そんな女をお連れになるなんて・・・!」



ひなのはユノの後ろにいながら、この上ない危機を感じた。
自分の身ではなく、この麗憐とかいう女性にー・・・

ユノが恐ろしく凍った空気を、放つのが分かったからだ。



「八龍が決めたことだ。二度言わせるな。・・・行くぞ」



ユノはイラただしそうに吐き捨てると、ひなのを急かすようにグッと背中を押して、引き寄せてきた。



その瞬間、麗憐の顔は凍りついた。




・・・そうか、そういうことね。
この麗憐って人、ユノ様のことが好きなんだ・・・





「ユノ様、おやめ下さい!!」



麗憐は金切り声をあげると、事もあろうことか、二人の間に飛び込んできて、ひなのとユノを力ずくで引き離した。


初めて会った時もそう。
この人女なのに力が強すぎてー・・・

ひなのは跳ね飛ばされて、地面に倒れこんだ。



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