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ニーナの苦悶

原作: その他 (原作:ときめきメモリアルGIRLSside3) 作者: 中野安樹
目次

後悔 バンビ編

「……ニーナ。ねぇ。この先はさ……。大学合格したお祝いにしよう?…ねぇ。約束覚えてる?」


こんなことを言ってしまったのは、付き合い出して何回目かのおうちデートのときだったっけ?なんかこの日はやけにしっとりした雰囲気でなんか流されそうな気分だった。


……だけど。なぜだか急に流されて行き着いて、離れてしまったらどうしようって漠然と不安になってしまった。自分にとって大事な人なら優しくすればいいだけのはずなのに。私はいつも、逃げてばかりだ。このときも、甘えるような仕草を見せれば、ニーナは優しいから無理やりどうこうしないって知っていた。私は、ズルい……確信犯だ。本当は自分に自信がないから。わざともったいぶって、ふざけたりイタズラと称してニーナを気持ちを振り回しているだけだ。

「あー、もう。アンタといったらホント。ヤダヤダ。ヤダ」

……ほら。ニーナはいつだってアンタ私の気持ちを優先させて、スマートに譲ってくれている。いつだって、ニーナの方が私なんかよりずっと大人なんだと思う。


そして、ニーナの優しさにふれる度、なんで私は素直じゃないんだろうって悩んじゃうんだ。馬鹿馬鹿しい。自己嫌悪に陥るなら、素直にあなたが「ほしい」って言えばイイ。なりふり構わずに、言ってしまえばいいんだ。ニーナの全てがほしいって。あなたのことは誰にも分けてあげたくないって。独り占めしたいんだって、言えばイイ。だけど。可愛くない私が、こんなときばっかり顔を出す。つい、いっこ下の男のこだと思ってたニーナに軽々と気持ち譲られて、優しく守られてなぜだか悔しくなって反発してしまう。ホントまるで近所のがきんちょだ。情けない。


今みたいに心がコントロールできなくなったのは、卒業式のあと、私は大好きなニーナに告白をされたときからだ。あのときは、一生懸命自分の気持ちを伝えてくれたニーナの気持ちが痛いほど伝わってきたように思う。私も、ニーナに気持ちを伝えていこうそう思っていた。


それなのに。


いつの間にか、高校生の頃には考えもしなかった後悔ばかりが私に付きまとってくる。


どうして不二山くんの誘いを受けて柔道部のマネージャーにならなかったのか。どうしてあのとき海辺でのニーナの告白に気が付かなかったのか。


ニーナのそばに可愛らしい女のこが近づく度に思うんだ。


どうして私はニーナより先に生まれてしまったのかって。今さらなにバカなことを思ってるかなんてわかってる。


……でも。本当は、ニーナに近づく女のこ全員に、近づかないでって言ってしまいたい。他のこが近づけないようにニーナに、近づけるチャンスを全部奪い取ってしまいたいくらいなんだから。我ながら恐ろしい思考回路だ。


だけど。


どうしても私はニーナのいっこ上のおネーサンで、バイトを理由にマネージャーを断った。何度後悔したってあのときの私は変えられない。もちろん、生まれ変わることだってできない。


なんとかおネーサンらしく、大人の余裕を見せなきゃって思いながら、どうしても寂しくて切なくなる。


「ねぇ。センパイ?…イイコで頑張るからさ。ちょっとだけ……充電させて?」

マンガの続きが気になるフリして、ちょっと素っ気ない態度を取りすぎたかもしれない。



だけど。せっかく遊びにきたのに、勉強に集中してばかりで、素っ気ないニーナが悪い。そりゃ一緒に勉強しようって誘ったけど、私レポート終わったし休憩ぐらいしてくれてもいいじゃん?


「ほらこの部屋。暑いでしょ?水飲む?」

ペットボトルの水を頬に当てながら、隣にすり寄ってくる。

「ねぇ?」

ギシッとニーナが動く度ベッドがきしむ。そういえば、よくベッドに寝転んでたら勘違いするからやめてって叱られたことがあったっけ?ニーナの香りがする布団が思いの外居心地よくてお気に入りだなんて、ヤバすぎて言えない。

「頑張ってるっしょ?アンタからご褒美ちょうだい?」

攻め攻めモードなニーナをみてたら、さっきまでむくれていた気持ちがみるみるしぼんでいく。ニーナの顔を見えいたら急にあぁ、私構ってもらえなくて寂しかったんだって自分の気持ちがわかった。

「可愛くおねだりしてくれたらイイよ?旬平くん」

なんだか、素直に寂しかったんだよっていじけて見せたらいいはずなのについつい恥ずかしくてイジワルなセリフを選んでしまう。本当に、素直じゃない、私。キライだ。

「センパイ。ほっといてばかりでごめんね。寂しかった?」

「……うん」

ごめんねって謝りながら、抱きしめてくれる体温が愛しい。ニーナの香りに包まれているとトゲトゲした私の心が一瞬で柔らかくなっていくのを感じる。本当に、ニーナは私を甘やかすのが、上手だ。

「ニーナ。…マンガ」

だから、もう少しだけワガママに振る舞ってみてもいいのかもしれない。

「ぁーあ。ホント、アンタはもう。ヤダヤダ、ヤダ」

こんな風にいつでもニーナは、私の気持ちを受け入れてくれる。それにね。


いつだって、構ってほしいって合図を送ると、すぐに察知して飛んできてくれるニーナが大好きなのだから。


「完」
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