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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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看守たちの長期休暇(準備編)その1

この日の朝9時、担当者1から監獄署長のハンニャバルに電伝虫が入った。内容はもちろん、特別室担当の看守達の長期休暇制度についてである。

「文書でもご連絡しようと思って通知文を昨日発送しておりますが、そちらに届くまでにもう何日かかかると思いますので…」
担当者1は、電伝虫の電話口で、新しくできた長期休暇制度の内容を読み上げた。

“期間は1か月とする。特例として、囚人の同行を許可する。ただし、同行させた者が…”

これを聞いて、ハンニャバルは思わず怒鳴り声をあげた。
「囚人を休暇に同行させるだとっ?! なぜそんなことが許されるのだっ!!」
(そうよね~。やっぱり普通はそう思うわよね)
ハンニャバルの反応に、担当者1は秘かにニンマリとした。

「これは上が決めたことでして…。私もハンニャバル署長と同意見です」
担当者1が理性的な口調でこう述べると、ハンニャバルが次に発しようとしていた言葉をぐっと飲みこむのが分かった。

「ご説明させていただきますと、これは同行させることが可能だと言うだけで、そうしなければいけないという意味ではありません。
これは、長期で休暇を取ったら、その間は囚人を監視する人手が少なくなる訳ですが、それをどうするか話し合っている時に飛び出した案が採用されてしまったものです。
本来はこういう解決の仕方ではなく、周りが協力してフォローすべきものなのですが」

「ふ~む…」ハンニャバルは唸った。
(しかし、ドンキホーテ・ドフラミンゴは万が一の場合でも死なせちゃいかんと言われておってだな…。奴の扱いはいろいろと難しいのだ…)

インペルダウンには、ドフラミンゴ以外にも、狂暴な極悪人や悪魔の実の能力者が山ほど収監されている。これらの囚人は、看守に対して反抗的な態度を取ることもあるし、時には暴動も起こす。看守達は毅然とした態度でそれらを叩き潰す。

ハンニャバルを始めとするインペルダウンの職員は、法の秩序を守るために、誇りを持って自分達の職務を遂行している。全ての囚人は彼らの冷酷な支配下にあり、その扱いに例外はないはずなのだが…。
(殺してはいかんとなると、手加減せざるを得ん訳で…)

担当者1の声が電伝虫から聞こえてくる。どうやら、役に立つと思われる方法を提案してくれているつもりらしい。
「看守が休暇に出ている間、ドンキホーテ・ドフラミンゴ囚の特別室の使用を一時停止するのも一案かもしれません。寝室やダイニングルームと独房の間の移動がなくなれば、監視する側の手間ががかなり少なくなると思われ…」

ハンニャバルは眉間に皺を寄せた。
(そんなことして、ドフラミンゴが“なんでいつもの寝床や飯がねえんだ~!”とかキレて暴れだしたらどうするんだ…。海楼石の量を増やして動けないようにしても、何日かすれば慣れてしまうだろうし…)

殺さないように手加減しながら取り押さえなければいけないというのは、場合によってはかなり難しい。下手をすれば自分の命が危うくなる。

ドフラミンゴは強い。そんな奴と、相手を殺さないように手加減しながら戦うなんて羽目には誰だって陥りたくはない。よって、対戦する可能性自体を最小限に抑えるのがベストなのだ。

特別室担当の看守達はうまくやっているらしく、ドフラミンゴはインペルダウンに収監されてから一度も騒ぎを起こしていない。反抗的な言動はたまにあるようだが、いちいち制裁を加える程のものではない。

(あの看守達が休暇の間は、気が休まらんだろうな…)

この時、ハンニャバルの頭の中に、さっき電伝虫越しに聞いた長期休暇制度の一文が浮かんだ。
“ただし、同行させた者が全ての責任を負うこととする”

(つまりそれは…!! )ハンニャバルの額を汗が伝い落ちた。

電伝虫からは担当者1の声がずっと聞こえている。
「それから、この長期休暇は誰にも知られないように取得させなければいけません。先日の誘拐事件もいまだ記憶に新しいと思いますが、もしも看守の方達に対して敵意を持つ人間に休暇のことを知られたら、また同じことが起こる可能性が…」

しかし、ハンニャバルはほとんど聞いていなかった。
(ドフラミンゴを看守が休暇に同行させたとして、同行中に何か起こったとしても、それって監獄署長の私の責任じゃなく、同行させた者の責任ということか?! )

「遠方での研修を装うなど、こちらで協力できることがあれば協力いたします。…」
(囚人が逃亡しても、死んじまっても、私の責任でないってことだよなっ?! そうなるよなっ?!
なら看守が休暇の間にドフラミンゴをどうするか知恵を絞るよりも、休暇に同行させたほうが、あらゆる面で楽だが…)

「この件はハンニャバル署長にご協力をお願いしなければいけないことがたくさんありますので、よろしくお願いいたします。…」
(だが…、普通に考えれば、囚人を牢獄から出すなどもってのほかだ。監獄署長である私がこんなおかしな制度を使うことを許して良いはずがない。人事担当者が言っている通り、周りがフォローして対応すべきことだ。そうだ、自分の職業に対する誇りを忘れてはいかんっ!私はインペルダウンの監獄署長だ。しかし、しかししかししかし…)

「…ハンニャバル署長?! これまでのことで何か質問は…」
「この件は……少し考えさせてもらいマッシュ!」
ハンニャバルはぶつりと電伝虫を切った。
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