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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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長期休暇制度ができ上った翌日 その2

担当者1はヘラヘラした調子で言った。
「“天竜人は不可侵”かあ~。この国ではそれが常識よね。でも、今回のことで、そういうのがすっかり嫌になっちゃったわあ~」

担当者2と担当者3は青ざめた。
「い、嫌になったというのは…」
「本気じゃありまぜんよね?だだの愚痴ですよね?」

担当者1は、一瞬だけ担当者2と担当者3に鋭い目を向けたが、すぐにどこか別のところを睨むように見ながら言った。
「私も今回の仕事を担当するまで、インペルダウンの中に特別室っていう天竜人専用の牢獄があって、そこの看守として元天竜人が雇用されてるなんて知らなかったわ…。そもそもレベル6というフロア自体も非公式のものだし…。下っ端は分からないことだらけね」

「そ、それは…」
「無理もないごどです…」

担当者1は二人の反応を無視して続けた。
「腐っているのは、やっぱり世界政府という組織なのよ。看守さん達は天竜人じゃないけど天竜人と同じ扱いで良いって、一体何なのっ?!
一見ものすごぉ~く優遇してるように見えるけど、これって、“元天竜人”の背後にいるであろう天竜人の存在が恐ろしくて、毅然とした態度を取れないってだけなんじゃないかしら。元天竜人の人達って、本人達は天竜人ではないけど、当然ながら身内は天竜人なのよね。その身内が味方なのか敵なのかは、その人によっていろいろみたいだけどお~っ」

「うう…」
「ええと…」

「そういう過剰に優遇されることがある一方で、歴代の特別室担当の看守さん達は、100年前から変わっていない奴隷みたいな労働条件で働いてきたわ。
このちぐはぐな対応の根本は同じよ。つまり、今までの担当者達が、そういう元天竜人っていう微妙な立ち位置の人達のことを、厄介だから関わりあいになりたくない奴らだって思って、必要最小限のことすらせずに放っておいていたってことよっ。特別室の看守は元天竜人が良いっていう理由で労働者として雇ってるのは、自分達のくせにっ!
今回、たまたま例の看守さんの誘拐事件がきっかけで、やっと労働条件を改善しようってことになった訳だけど、第一段階として作った長期休暇制度はお世辞にも良いものとは言えないわ。法律を曲げてまで媚びへつらっちゃって、これが世界政府のやることなのっ?
しかもよっ!? それに口を突っ込まないのが役人としてのあるべき姿だなんて、よくもそんなことが言えたものだわっ。
私達は、より良い労働環境を作るために、インペルダウンくんだりまで行って、看守さん達に直接会ってヒアリングして来たのよっ。それを天竜人が怖いというだけの超つまんねぇ~理由で、私達がきめ細かく行った調査の報告書の中から、看守さん達の希望だけを抜き取って制度を作っちゃうなんて、マジでふざけんなってことなのよっっ!
なんでこういうことしかできない訳っ?! 世界政府の役人として間違ってるのは、アンタ達のほうじゃないのっっ」

「ご、ごもっとです…」
「ず、ずみまぜん…」
担当者2と担当者3は思わず謝った。担当者1が怒っている対象の中に、自分達が入っているかどうかははっきりと分からなかったが、謝らざるを得ないような気持ちになったのだ。

担当者1は自嘲するように言った。
「…もしかして、私達って捨て駒なのかも…」

「え…」
「捨て駒とは…」

「元天竜人みたいな訳ありの労働者と関わるような仕事なんて、ちょっと頭が回る人は、危険を察知して断るんでしょうね。上の人間も、将来有望な部下にはこういう仕事は振らないでしょうし。もしも、この仕事を通じて気に入らないとか思われて、身内の天竜人にチクられて目を付けられちゃったりしたら、世界政府の役人として致命傷だもの。
そんなことにも気が付かないで、ヤル気満々でこの仕事に一生懸命に取り組んだ私達って、はたから見たらただのバカよね。上からしてみれば、ヒアリングするんなら看守さん達から希望だけをチャチャっと聞き出して終わりにすれば、それで十分だったのよ。
でもさっ、自分の仕事に真剣に取り組んで、何が悪いって言うのよっっ。きいいい~~~~っっ!
ああ腹立つぅぅぅ~~!! 」

担当者1は、急に静かになった。自分の心の内をぶちまけて、少しはすっきりしたせいもあったが、担当者2と担当者3に想像以上のショックを与えてしまったことに気が付いたからだった。

「ふ、二人とも…、今私が言ったことは気にしないで…。そうなんじゃないかって思っただけで、本当にそうだとは限らないから…」
「大丈夫です…。でも、担当者1さんがおっしゃったことは間違いではないと思います…」
「はい…。でも、自分が情げないです…」

しかし、担当者2と担当者3は呆然とした表情でうつむいたままだった。
「私…、採用時の筆記試験では1番だったんです」
「私も上位5人の中に入っでいました…」

「そ、そう…。二人とも優秀なのね」
二人に向かって言い過ぎただろうか?担当者1は内心ではかなり慌てていた。

「でも、その後の昇進は他の同期よりも遅くて…」
「私もです…。それに希望しでだ部署には第5希望まで受け入れてもらえなぐで…。でも、ここの部署で誠心誠意やってたつもりだっだのに…」

「二人とも泣かないで…。ごめんね、私が余計なことを言ったばっかりに…」
担当者2と担当者3は悔し涙を流した。担当者1はおろおろと慰めることしかできなかった。
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