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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

3人の面談の模様… その10

カスターは笑いをとめようと努力したが、上手くいかなかった。
「し、失礼…。3人はそれなりに楽しくやっているようです。劇団の経営も安定しましたし、子供達も自立しましたし」

「お子様達のことを、もう少し詳しく伺ってもよろしいでしょうか?二人はそれぞれどのような進路を選んだのですか?」
担当者1はきらりと目を光らせた。この部分を聞かない訳にはいかない。彼女はそう思った。

カスターは視線を上のほうに泳がせながら話した。
「妹のほうは、17歳で役者を目指すのをやめました。学校まではやめませんでしたが。今は別の土地で生活しています。
兄のほうも、学校を卒業した後、演劇とは関係ない学校に入学しました。彼なりに、自立してお金を稼げるようになりたかったようです。そして就職もしたのですが…、ちょっとしたトラブルがあって、27歳の時にそこを辞めて、新しい仕事に就いています」

27歳の時に起こったトラブルが少しばかり気になったが、担当者1は追及しなかった。もう十分だと彼女は思った。
「ありがとうございます。お子様達がお元気のようで安心しました」

ベールに包まれていたカスターの経歴が分かった。
今までの話しから、天竜人であっても安穏な生活が約束されているとは限らないらしい。人事担当者達の心境は複雑なものがあった。

カスター自身も、両親と父の親友のことを改めて考えていた。
劇団や役者というのは、もちろんカスターの脚色である。実際には、カスターの父親は政治を担っていた。そして、あまりに多くの支持と注目を集めたことで、世界政府の上のほうの誰かに目をつけられてしまったのである。

自分達の両親を陥れようとしていたのが誰だったのか、実はカスターはいまだに知らされていない。
(世界政府のトップは五老星だが…。または、その近辺の人物だろうか。私には推測することしかできないが)

カスターの両親と父の親友は、実際に今も自作自演した事件の延長線上で暮らしている。人事担当者達にさっき言ったことは、まるっきり嘘ではなかった。

父はあの時、政治家からも、一家の当主という立場からも退き、親友がその両方の跡を継いだ。
父の親友という人物は、もともと父と同じ一族の出だったので、ふたつの家の当主を兼務してもさほど問題はなかった。
(命が助かっただけでも良かったということなのだろう。父も今では隠居生活を楽しんですらいるようだし…)

父の異変に乗じた、父の親友による陰謀だったのではないかと疑われても仕方のない出来事だった。カスターの父から当主の座を継いだことで、彼が保有する財産は二倍に増えてもいた。

(仲違いして、いずれ互いに潰し合うだろうと思わせることこそが、彼らの狙いだったのだ)

実際には敵などおらず、結局は全て父の親友による陰謀だったのではないかと疑う者もいた。彼にとっては、父を政治から引退させただけでも満足だったのではないだろうかと。

(確かに同じ政治家として、父に対する嫉妬や対抗心が心の中にあった可能性は否定できないが、両親に対する長年の支援を考えると、彼は味方と考えて良いだろう。それに、他に敵がいたことは確かなようだ…)

それから、事件当時、父の支持者達が兄妹を連れ出したのは予定外のことだった。しかし、結果として、これは大きな手助けとなった。その時の両親と父の親友は、自分達ではどうすることもできないほどに状況が厳しかったのだそうだ。

担当者1の声で、カスターは物思いから覚めた。
「長期休暇制度の作成を進めますので、楽しみにしていてくださいね」

「はい。父と母と、それに妹にも、久しぶりに会えそうです」

面談を受ける前は面倒に感じたが、終わってみると、たまには面談も悪くないとカスターは思った。
長期休暇制度ができたら、数十年ぶりにゆっくり休んでやろう。
明日はダイニングルームに絨毯や家具を入れる日だ。

***
インペルダウンからマリージョアに帰る船で、人事担当者達は甲板から海原を眺めていた。
「ねえねえ、カスターさんが最後に行った学校と就職先ってぇ、どこだと思う~?」
「え?」
「さあ…」

「私は海軍学校と海軍だと思うなぁ」
担当者1の意見を聞いて、担当者2と担当者3は顔を見合わせた。
「歩き方とかぁ、なんとなくそれっぽいと思わなかったぁ?」
「う~ん?」
「どうでしょうねぇ…」
「学校や海軍でも、素性を隠してたってことかしらぁ~?」担当者1は空を見上げた。

「ところで、インペルダウンの娯楽スペースはどうしましょうか?」
「まず、予算がどのぐらい取れるがでずね」
「担当者1さん、頑張って予算を取ってきてください」
「そうねえ~、インペルダウンからなかなか出られないのは、特別室担当の看守さん達だけじゃないしねえ」
インペルダウンの他の職員も、地理的な要因等でそんなに頻繁に島の外に出られない。娯楽スペースの充実は職員の気分転換に役立つはずだ。

「ドフラミンゴちゃんにも会いたかったわね~」
「さすがにそれは…」
「彼はとでも危険な人物です。会いだいだなんて、なんて恐ろしいごどを…」

マリージョアに到着してすぐに、人事担当者達は面談の報告書を上司に提出した。
数日後、上がくだした判断を聞いて、人事担当者達は文字通りひっくり返った。
なぜなら、3人の看守が出した長期休暇に関する希望が、全て通ったからである。

***
・期間は1か月とする
・特例として、囚人の同行を許可する。ただし、同行させた者が全ての責任を負うこととする
***
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