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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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3人の面談の模様… その1

その日の朝8時、3人の人事担当者を乗せた船は、予定よりも丸一日遅れてインペルダウンに到着した。本当なら昨日のこの時刻に到着する予定だったのだが、運悪く巨大な海王類に遭遇して航海を中断せざるを得ない程の大きな損傷を受けてしまったのである。

3人を乗せた船の船長は、一番近くの島の海軍支部に救援を要請し、やって来た海軍の手を借りて折れたマストと船体に空いた穴を応急処置し、インペルダウンへの航海を再開させた。

「いやぁ~ん、もうっ。一時はどうなることかと思ったけどぉ、無事にインペルダウンに着いて良かったぁ~」
「ええ、本当に。ここがインペルダウンですか…」
「何だが、ぢょっと緊張しますね。こんな気持ぢは久しぶりです」

3人は颯爽とインペルダウンに上陸した。遠くからだと女性2人と男性1人に見えるが、近くで見ると、少なくとも3人のうちの1人が(全員の場合も多々ある)、性別不明と判断される。

一人は2メートル以上の長身のすらりとした筋肉質で、小麦色の肌をしている。髪型はセンターパーツのショートボブ。メイクはフルメイクで、タイトスカートのビジネススーツをゴージャスに着こなしている。この人物が担当者1である。

二人目は、身長は165センチくらいで痩せても太ってもいない。髪は肩までの長さで、この人物もタイトスカートのビジネススーツとブランド物のパンプスを着用している。全体的な雰囲気は担当者1よりもかっちりしている。これは担当者2である。

三人目は、身長は担当者2と同じくらいで、体形はやや細身で扁平。紺色のスラックスのビジネススーツにホワイトシャツを着用し、ネクタイを締めている。四角い眼鏡と短い七三分けの髪型が妙にかわいらしい。担当者3である。

人事担当者達は、まず署長のハンニャバルとの顔を合わせを済ませ、面談が始まる9時になるまでの間、これから面談をする予定の看守達の職場であるレベル6のフロアをひと通り見学した。
ドフラミンゴが独房に移動した後の空の寝室と、改修工事が終わる直前のダイニングルーム、それにバスルーム等も、もちろんその中に入っていた。

「ここが看守さん達の職場である特別室ね…」
「他とは全然違いますね」
「ダイニングルームも完成した後の状態で見たがっだですね」

これら特別室の壮麗さは3人を圧倒した。暗くて陰気で恐ろしい牢獄の地下深くに、こんなにも美しい、お城のようなスペースが存在していたとは…。

「8時40分。そろそろ面談場所の会議室に移動しましょ」
「は、はい。看守さんをお待たせすることになってはいけません」
「ますます緊張してぎました…。私、面談でちゃんどしゃべれるでしょうか…」

3人は会議室におもむき、面談のための準備を整えた。3人の胸は高鳴った。いよいよ特別職の看守達に会えるのだ。

インペルダウンという不気味な要塞に守られた魔法のお城に閉じ込められた悲劇の王子様。世間と隔絶するため、自らの選択で古城の地下牢に隠れて生きる古い血筋を持つ孤独な男性。残るもう一人も、理由は不明だが、きっとそれなりの事情があってここで働いているに違いない。

それぞれがドラマチックな経歴を持ち、これからもそれを背負って生きなければいけない3人の看守達の労働環境を整えるために、自分達はここに来た。彼らにとって一番良い長期休暇制度を自分達の手で作ってみせる…!
特別室が持つ特殊な雰囲気に当てられた3人の人事担当者は、使命感をますます燃え上がらせた。

***
最初の面談はペラムだった。丸顔で小柄でホンワカとした雰囲気を持つペラムは、人事担当者達が想像していた悲劇的な運命の持ち主のイメージとは、少し違っていた。

(何だかかわいいオジサンね…)
(愛嬌のあるお顔立ちですね…)
(でも、こういう人が身内から虐げられでいると思うと、余計に腹が立づような気がします)

担当者1は、いつものアクセントを出さないように気を付けて話した。
「本日はわざわざお時間をとっていただきまして、ありがとうございます。人事担当である私共は、長期休暇制度を新設するにあたりまして、皆さまのご希望をぜひお伺いしたいと思っております」

会議室で人事担当の3人と向かい合わせに座ったペラムはかなり緊張し、恐れおののいてもいた。この人達から、一体何を言われるんだろう…。
「は、はい…」

「新設される長期休暇制度は一週間程度の予定です。どのような過ごし方をするか、もう考えていらっしゃいますか?」
担当者2が、できる限り軽い感じに聞こえるように、笑顔で質問した。

「い、いいえ…。まだ何も…」
しかし、ペラムは顔をさらに強張らせ、上ずった声でやっとこう答えた。額に汗がにじんだ。

「ペラムざんは、普段のお休みはどんなふうに過ごされでいるんですか?」
担当者3もニコニコ顔で質問した。相手はかなり緊張しているようなので、場の雰囲気を“楽しい雑談”に近付かせなければ、本人が本当に希望していることを聞きだすことはできないだろう。

「い、い、いいえ…別に何も……」
これらの何でもない質問は、ペラムを余計に怖がらせていた。
余計なことを言ってリストラされたり、ワイン担当者の買収のことをあばかれることになったりしたらどうしよう…。ああ、一体何と答えれば、この場をうまく切り抜けることができるんだ…。

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