ドフラミンゴの日記 その7
レベル6の特別室(ダイニングルーム)に大量のネズミが出たこという報告を受けて、監獄署長のハンニバルは顔をしかめた。
特別室はその名の通り「特別」な部屋だった。特別室であるからには、すぐに汚れた絨毯と壁紙を取り換えて、部屋を元通りにしなければならない。
「作業員は夜中まで働かなければなるまいが…、仕方がない。特別室だからな」
レベル6は最近こういうことが多い。ちょっと前にも独房前の廊下の床が2回も壊れたし、特別室の寝室のほうも、蜘蛛が出たとかの理由で破損した。
(これをやったのが全て看守とは…。囚人がやったよりはいいが)
監獄署長は特別室を担当している3人の看守の顔を思い浮かべた。
(まあ、絨毯と壁紙の取り換えだけなら、今夜中に終わるだろう…)
しかし、この作業は思った以上に時間がかかった。壁紙を剥がしたところ、壁の板にネズミが齧って開いた穴が見つかったのだ。
翌朝、ドフラミンゴは寝室にやって来たカスターから、何日間かダイニングルームが使えないことを聞いた。
「特別室の壁は、石の壁の上に板を張っていたのですが、石と板の間に隙間があったようで…」
「そこにネズミが入り込んだってことか」
ドフラミンゴはネズミの大群の姿を思い出して鳥肌が立つ思いだった。
「穴が開けられた壁の板を外してみるとネズミの巣があったそうで、それで隣の壁の板も外してみたらそこにも…」
「もういい。想像させるな」
しかし、カスターには説明する必要があった。カスター自身もげんなりした顔をしながら、説明は続けられた。
「床板のほうも同じ状態ではないかということで、あの部屋は壁と床を全部張り直す必要があるかもしれません。その間、食事はこの部屋でとっていただくことになります」
「わかった」
よって、カスターと数名の看守が、ベッドを寝室の端のほうに寄せ、空いたスペースに小さめのテーブルと椅子を置いた。
「しばらくは狭くて不自由ですが…」
「別に構わねえ」
こいつらの気の使いようはやはりただもんじゃねえと思いながら、ドフラミンゴは気になっていることを訊ねた。
「バーティの様子はどうだ」
「ただの貧血のようです。また明日から仕事に戻ります」
ハンニャバルやマゼランは、バーティからあの時の様子をまだ聞いていないのだろうか?
どうにでもなれと思いつつも、ドフラミンゴはやはりそれが気になった。
「ところで…」
そんなドフラミンゴの様子を気にするふうもなく、カスターはちょっとウキウキとした感じで話し出した。
「新しい壁紙や絨毯に何かご希望はございますか」
「特にない」
「それでは、新しい内装は私が決めさせていただきます」
一瞬だが、カスターは待ってましたとばかりに顔を輝かせた。自分好みの内装にできるのが嬉しいらしい。
「この寝室のほうは大丈夫なのか?」
ドフラミンゴは、この部屋の壁の中がダイニングルーム同様にネズミの巣窟である可能性を訊ねた。
「この部屋は大丈夫です」カスターはきっぱりと答えた。
「この部屋の壁は上から板を張ったのではなく、漆喰を塗って作ったので隙間はないはずです」
「ふうん」
「この寝室とダイニングルームは作った職人が違うのです。この部屋のほうがだいぶ前にできたのですが、ダイニングルームを作る時にはその職人はすでに退職していて…」
カスターとそんな話しをしているうちに、給仕人が朝食を運んできた。
***
×月×日
昨夜の件でバーティのことが気になるが、気にしていてもしょうがないので、御志理探偵の最新刊を読んで過ごす。
まだ途中までしか読んでないが、シーズン3から登場した悪役の大泥棒は、どうやら主人公が子供の頃に飼っていたミシシッピアカミミガメの生まれ変わりらしい。
年齢設定が合わないんじゃないかとも思うが、カメが死んだのは主人公がかなり幼少の時だということなのだろうか。
×月×日
御志理探偵の悪役の大泥棒は、カメの生まれ変わりではなかったようだ。作中に主人公が子供の頃から飼っているというカメが出てきたのだ。でも、あのカメ目線の描写は何なんだろう。
今日の10時からの看守はバーティだった。おれの身の周りに変化がないということは、こいつが何もしゃべっていないということなのだろう。バーティもネズミが出た時のことには触れてこない。
思えばカスターやペラムは割りと自分からしゃべってくるが、こいつはそうではない。無口な性格なのだろうか。
×月×日
御志理探偵だが、作中に主人公が少年だった時の友人が出てきた。こいつも主人公と同時期にカメを飼っていたようだ。大泥棒の正体はこの友人だろうか。
×月×日
御志理探偵の最新刊を読み終わった。やはり悪役の大泥棒の正体はミシシッピアカミミガメ(の生まれ変わり)だった。
主人公が子供の時に飼っていたカメは二匹いたのだ!
一匹は今も生きているが、もう一匹は主人公が二歳の時に死んでいて、そいつが生まれ変わって悪役の大泥棒になった。
悪役の正体が判明したので、御志理探偵のシーズン3はあと1~2巻で終わるだろう。
それと、ダイニングルームの内装のことで看守の3人がもめているらしい。
特別室はその名の通り「特別」な部屋だった。特別室であるからには、すぐに汚れた絨毯と壁紙を取り換えて、部屋を元通りにしなければならない。
「作業員は夜中まで働かなければなるまいが…、仕方がない。特別室だからな」
レベル6は最近こういうことが多い。ちょっと前にも独房前の廊下の床が2回も壊れたし、特別室の寝室のほうも、蜘蛛が出たとかの理由で破損した。
(これをやったのが全て看守とは…。囚人がやったよりはいいが)
監獄署長は特別室を担当している3人の看守の顔を思い浮かべた。
(まあ、絨毯と壁紙の取り換えだけなら、今夜中に終わるだろう…)
しかし、この作業は思った以上に時間がかかった。壁紙を剥がしたところ、壁の板にネズミが齧って開いた穴が見つかったのだ。
翌朝、ドフラミンゴは寝室にやって来たカスターから、何日間かダイニングルームが使えないことを聞いた。
「特別室の壁は、石の壁の上に板を張っていたのですが、石と板の間に隙間があったようで…」
「そこにネズミが入り込んだってことか」
ドフラミンゴはネズミの大群の姿を思い出して鳥肌が立つ思いだった。
「穴が開けられた壁の板を外してみるとネズミの巣があったそうで、それで隣の壁の板も外してみたらそこにも…」
「もういい。想像させるな」
しかし、カスターには説明する必要があった。カスター自身もげんなりした顔をしながら、説明は続けられた。
「床板のほうも同じ状態ではないかということで、あの部屋は壁と床を全部張り直す必要があるかもしれません。その間、食事はこの部屋でとっていただくことになります」
「わかった」
よって、カスターと数名の看守が、ベッドを寝室の端のほうに寄せ、空いたスペースに小さめのテーブルと椅子を置いた。
「しばらくは狭くて不自由ですが…」
「別に構わねえ」
こいつらの気の使いようはやはりただもんじゃねえと思いながら、ドフラミンゴは気になっていることを訊ねた。
「バーティの様子はどうだ」
「ただの貧血のようです。また明日から仕事に戻ります」
ハンニャバルやマゼランは、バーティからあの時の様子をまだ聞いていないのだろうか?
どうにでもなれと思いつつも、ドフラミンゴはやはりそれが気になった。
「ところで…」
そんなドフラミンゴの様子を気にするふうもなく、カスターはちょっとウキウキとした感じで話し出した。
「新しい壁紙や絨毯に何かご希望はございますか」
「特にない」
「それでは、新しい内装は私が決めさせていただきます」
一瞬だが、カスターは待ってましたとばかりに顔を輝かせた。自分好みの内装にできるのが嬉しいらしい。
「この寝室のほうは大丈夫なのか?」
ドフラミンゴは、この部屋の壁の中がダイニングルーム同様にネズミの巣窟である可能性を訊ねた。
「この部屋は大丈夫です」カスターはきっぱりと答えた。
「この部屋の壁は上から板を張ったのではなく、漆喰を塗って作ったので隙間はないはずです」
「ふうん」
「この寝室とダイニングルームは作った職人が違うのです。この部屋のほうがだいぶ前にできたのですが、ダイニングルームを作る時にはその職人はすでに退職していて…」
カスターとそんな話しをしているうちに、給仕人が朝食を運んできた。
***
×月×日
昨夜の件でバーティのことが気になるが、気にしていてもしょうがないので、御志理探偵の最新刊を読んで過ごす。
まだ途中までしか読んでないが、シーズン3から登場した悪役の大泥棒は、どうやら主人公が子供の頃に飼っていたミシシッピアカミミガメの生まれ変わりらしい。
年齢設定が合わないんじゃないかとも思うが、カメが死んだのは主人公がかなり幼少の時だということなのだろうか。
×月×日
御志理探偵の悪役の大泥棒は、カメの生まれ変わりではなかったようだ。作中に主人公が子供の頃から飼っているというカメが出てきたのだ。でも、あのカメ目線の描写は何なんだろう。
今日の10時からの看守はバーティだった。おれの身の周りに変化がないということは、こいつが何もしゃべっていないということなのだろう。バーティもネズミが出た時のことには触れてこない。
思えばカスターやペラムは割りと自分からしゃべってくるが、こいつはそうではない。無口な性格なのだろうか。
×月×日
御志理探偵だが、作中に主人公が少年だった時の友人が出てきた。こいつも主人公と同時期にカメを飼っていたようだ。大泥棒の正体はこの友人だろうか。
×月×日
御志理探偵の最新刊を読み終わった。やはり悪役の大泥棒の正体はミシシッピアカミミガメ(の生まれ変わり)だった。
主人公が子供の時に飼っていたカメは二匹いたのだ!
一匹は今も生きているが、もう一匹は主人公が二歳の時に死んでいて、そいつが生まれ変わって悪役の大泥棒になった。
悪役の正体が判明したので、御志理探偵のシーズン3はあと1~2巻で終わるだろう。
それと、ダイニングルームの内装のことで看守の3人がもめているらしい。
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