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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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看守たちの長期休暇(出発編)その2

直ちにマリージョアへ向けての船が用意された。本来であれば、ドフラミンゴ級の囚人の移送には物々しい警備が必要だが、ハンニャバルは内密に事を進めるよう指示した。

よって、ドフラミンゴのマリージョア行きは、インペルタウンの中でも限られた者だけにしか知らされることのない秘密事項とされたが、その中にはこのような人物も含まれている。

「いつもと同じ飯だ。インペルダウンの料理人も一緒にこの船に乗ったのか?」
船室で朝食を摂りながら、ドフラミンゴはカスターに向かって質問した。

「はい、一人乗船しています。彼はマリージョアに着いたら、船と一緒にインペルダウンに引き返しますが」
「ふうん、そりゃ残念だな」
カスターはドフラミンゴのカップに熱いコーヒーを注いだ。

インペルダウンからごく普通の輸送船を装って出航した中型船の、一番奥の船室のひとつがドフラミンゴの独房になった。
船室は広くも豪華でもなかったが、テーブルや椅子やベッド等の家具は、ある程度良いものが置かれている。マリージョアに着くまでの間の数日間、ドフラミンゴはほとんどこの部屋の中で過ごさなければいけない。

ノックと共にバーティとペラムが部屋に入ってきた。
バーティは制服でなく私服姿だった。茶の革靴に紺色のパンツ、白地にエメラルドグリーンの水玉のシャツにソフトオレンジのジャケット、バイオレット色のハンチング帽。バーティにしては控えめな装いである。

バーティは笑顔がはち切れんばかりになっているが、話す時は慎重に小声になった。
「食事中、失礼します。もう少しでニョロニョロ島に到着します。私はここから別行動になりますので、ご挨拶に来ました。カスターさん、休暇中はドフラミンゴさんをよろしくお願いいたします」

バーティの目的地は遠い。途中でマリージョアに立ち寄っている時間はないので、ここで船を降りて、別の船に乗り換えることになっていた。他の船員には下船する理由を特に説明していないが、黙っていれば、内密の命令が下ってどこかに行かなければいけないのだろうと、勝手に思うだろう。

「バーティ、良い休暇を。休暇明けの楽しい報告を心待ちにしていますよ」
カスターが笑顔で言った。ドフラミンゴはふんと鼻をならしたが、機嫌は悪くなさそうだ。

ペラムはバーティを見送るために一緒に甲板に出た。ペラムも明日、この船を降りる。その後、近くの島で母上と合流することになっていた。
「バーティさん、良い休暇を!道中はくれぐれも気を付けて」
「ペラム、君も良い休暇を!母上によろしく」

翌日、ペラムも船を降りた。この日、ドフラミンゴとカスターは、15時のおやつの時間をドフラミンゴの独房で過ごした。
「こんなことができるのも休暇中だけですねえ」
今日のおやつは、某有名洋菓子店のクッキーとチョコレート、それに熱い紅茶だ。

「普通の囚人は、休暇中でもできねえだろうがな」
ドフラミンゴは素っ気なかったが、まんざらでもなさそうである。

「分かっているとは思いますが、他言は無用ですよ。今日のおやつのことも、これからの休暇中のことも」

ドフラミンゴの手足に付けられている海楼石の鎖は、インペルダウンにいた時と変わっていなかった。増えてもいないし減ってもいない。一応、予備の鎖を持ってきてはいるが、カスターの荷物の中に突っ込まれたままになっている。

ペラムが誘拐された時、カスターはドフラミンゴの海楼石の鎖を外したが、この休暇中に同じことをする気はなかった。あの時は、ドフラミンゴに働いてもらわなければいけなかった。でも、今回はその必要はない。

数日間、二人は部屋の中でこんなふうにダラダラと過ごした。

カスターは内心、ちょっと飽きてきた。世界政府の船の中なので、人目があってドフラミンゴの監視を怠ることができない。実は自分は休暇中なのだが、周りの人間はそれを知らない。

(バーティは無理だが、ペラムにもっと長くいてもらえば良かった…。そうすれば、監視を交代することができたから…)

思いっきりあくびをすると、ドフラミンゴがカスターの胸の内を見透かしたかのようにニヤニヤ笑ってこっちを見ていた。気付かぬふりで、読んでいた本に目を落とす。

そして、ついに船はマリージョアに到着した。カスターはドフラミンゴの鎖を引いて船から降りた。

マリージョアは久しぶりだが、カスターはここに10歳までしか住んでいない。
懐かしくない訳ではないし、両親に会えるのは嬉しい。だが、マリージョアという街に、自分はそんなに愛着を持っていないことにカスターは気付いた。

「ドフラミンゴさんも、子供の頃マリージョアに住んでいたのですよね」
「ああ」
「久しぶりのマリージョアはいかがですか?」
「別に普通だ。数年前にも来たことがあるしな」
ドフラミンゴもあっさりしていた。

(来年以降は、まず両親に会いにマリージョアに立ち寄って、その後、妹と二人で点々とした各地を訪れるのもいいかもしれない。なにせ休暇は一か月もあるのだから。そうすると、ドフラミンゴさんは来年は…。まあ、来年のことは来年考えよう)

カスターは、ドフラミンゴと共に馬車に乗り込んだ。
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