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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

3人の面談の模様… その2

白眼をむきかけているペラムの様子を見て、3人の人事担当者は顔を見合わせた。どうやら自分達の質問の仕方が悪かったらしい。こういう場合は、ある程度率直に話したほうが良いのかもしれない。

担当者1は、フィクションを織り交ぜ、言ってはいけないところはオブラートに包むようにしながら、自分達が何をしにやって来たのかを説明することにした。

「実は別の部署で長期休暇制度を作った時、約10年ぶりに職場から外の世界に出た人が、さっそく賊に襲われたことがあるのです。動機は借金の取り立てだったそうなのですが…」

これは担当者1の作り話である。ペラムに対して、「あなた、この前お父さんにさらわれたみたいですが」などとは、やはり言えない。

担当者1は一度言葉を切り、担当者2と担当者3と視線を合わせてから、再び話し出した。

「人事担当者である私達は、ペラムさんの以前の身分を存じています。こんなことをお伺いするのは大変失礼かもしれませんが、ペラムさんが長期休暇でインペルダウンの外に出た場合、同じようなことが起こる可能性はありますか?もしもある場合は、未然に防ぐために、何らかの対策を考えたほうがいいと私共は考えております」

「…そうですか」
ペラムの表情に変化があった。面談の理由が分かって不安と緊張が解けたようだ。人事担当者達は、自分達の戦略が上手くいったと思った。

ペラムが3人に向かって静かに話し出した。
「具体的には、どのような対策が必要だと考えていらっしゃいますか?」

担当者1が答えた。
「私達にも完璧と言える方法がある訳ではありません。実は、この対策方法を当事者の皆さまと相談することが、今回の面談の目的のひとつです」

担当者2が提案した。
「私達が思い付いた方法は、休暇中に護衛を付けるか、外部に知られないようにこっそりと休暇を取るかくらいです」

担当者3が付け加えた。
「後ろ向ぎに聞こえるかもしれませんが、インペルダウンの中で休暇を過ごすのが、安全面では一番確実かもしれません。旅行等に行ぎだい場合もあると思うので、無理に勧められませんが…」

「う、う~ん…」ペラムは唸った。
長期の休暇が取れるなら、インペルダウンの外に行きたかった。母上とも今度こそゆっくり過ごしたいし、何より太陽の光が降り注ぐ地面の上を歩きたい。

(でも、休暇中にマリージョアの母上のところに行ったら、父上はやはり快く思わないだろうか…。実際にこの間あんなことになったし…)

難しい顔をして考え込んでしまったペラムを見て、人事担当者たちが口々に声をかけた。
「すぐにいい考えが思い浮かばない場合は、後日、手紙や電伝虫などでやり取りすることも可能ですので…」
「大丈夫です。あまり固くならずに考えましょう」
「ぎっどいい方法があるはずです」

ペラムは黙ったままだった。人事担当者達はさらに声をかけた。
「ペラムさんが休暇を楽しく過ごせるように、私達も全力で努力しますわっ」
「離れたところでの研修や出張を装うという手はいかがでしょうか?」
「定期船の荷物の中に隠れてインペルダウンがら出るという手もあるど思います」

その時、ペラムが顔を上げた。
「休暇は一週間ということですが、もっと長く休むことはできないでしょうか。できれば一月くらいいただきたいのですが」

「一月ですか?」人事担当者達は声を上げた。

「特別室担当の看守は現在3人しかいないので、さすがに一月の休暇となると、交代のための人員が確保できません。業務に支障をきたすことになりますので、認められないかと…」

ペラムはにっこりと微笑んだ。世間知らずで無邪気そうにも見えるが、どこか抜け目ない表情にも見える。

「では逆転の発想で、看守の3人が一斉に休んで、その間は特別室は閉鎖してしまうという方法はいかがでしょうか?ドンキホーテ・ドフラミンゴの監視をどうするかについては…、誰かが休暇に一緒に連れて行けばいいと思います。強いので護衛にするのにちょうど良いでしょう」

「え……」
ペラムがとんでもないことを言い出したので、人事担当者達は顔をしかめた。囚人を休暇に連れて行くなど考えられない。

担当者1がペラムの考えを却下しようとした。
「それは受け入れられません。最も、最終決定権は私達ではなく、もっと上の者にありますが…」

ペラムは自分の意見を引っ込めなかった。
「ダメもとで上に提案してください。国によっては一月のバカンスが普通のところもあります。私達は今まで長期休暇が一切ありませんでしたし、多少の配慮をお願いできないでしょうか、と」

痛いところを突かれて、人事担当者達は口を閉じた。

「もしも一月の休暇が認められたら、取得できるのは毎年でなくて結構です。もともとの計画が1年に1回で1週間の予定だったのなら、単純に計算すると、4年に1回、1か月の休暇を取ることができることになります」

「し、しかし、囚人を連れて行くというのはやはり…」
「囚人は罪を犯したから監獄に入れられている訳でして…」
人事担当者達は抵抗したが、ペラムは平然とした顔でこう切り返した。

「ドンキホーテ・ドフラミンゴに関しては、別に連れて行かなくてもいいのであれば、それで結構です。一月くらい、看守が代わったり、特別室待遇を受けられなくなったりしても、特に問題はないでしょう」
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