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原作: 名探偵コナン 作者: takasu
目次

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「それじゃっ、私仕事に戻るねっ!」

そう言ってゆりはあやりに背を向けた。

あやり「ゆり!」

あやりに呼ばれてゆりはふと振り返った。

「ん?」

あやり「ゆりも無理しちゃだめだよ!」

「…っうん!ありがと!」

そう言って急ぎ足で仕事場に戻るゆりの背中を見送ったあやりはふうっと一息ついた。

あやり「あんたが一番心配だよ…」

あやりはゆりのここ数日の姿を思い出していた。

考える暇もないように仕事詰めの毎日、降谷の分まで率先して仕事をこなして、毎日ろくな食事も睡眠もとっていない。

お陰で窶れた顔と、毎晩泣きはらした目と酷いクマを隠すための厚化粧とすっかり痩せてズレてくるスカート。

本人はそんなことよりも降谷の事を心配していた。

一番心配なのは彼女だ。

あやり『降谷の奴…こんなにゆりに心配かけて…覚えとけよ!』


あやりがデスクに戻るとゆりから降谷への差し入れと、それとは別に小さな箱にメモが貼って置いてあった。

"零くんをお願いします。少しだけどお礼です"

丁寧な字で書かれたメモを剥がして箱を開けると前から欲しかった愛用ブランドの新作の化粧品だった。

あやり「まったく、あの子は…」

そう呟いて有り難く化粧品と降谷への差し入れをバッグに詰めると降谷元へ行くためにいつもの倍速で仕事を終わらせた。

あやり「ゆり…ゆり!!」

「わぁっ!あやりちゃん!びっくりしたっ!」

あやり「化粧品、ありがとね♪気使わなくていいのに!」

「ううん!ほんの、気持ちだよっ!…私には…零くんを支えてあげること出来ないから…」

あやり「はぁ、まったく…。降谷が憎い!」

「へ?」

あやり「ゆりにこんな顔させて、1ヶ月も休暇だなんて!これで辛気臭い顔してたら一発ぶちこんでやるんだから!」

「あ、あやりちゃん…;」

あやり「なーんて!心配しないで!辛気臭い顔してたらちょっと喝入れてくるからさっ^^」

「ありがとっ^^」

あやり「ま、ゆりも降谷の心配ばっかしてないでちょっとは自分も休みなよ?」

「うん^^大丈夫」

あやり「…じゃ、行ってくる!」

「お願いします^^」

あやり「お疲れ様!」

そう言ってあやりはゆりのデスクにココアを置いていった。


…ピーンポーン…

降谷「…」『またか…どうせ警察庁の人間だろ…出なければ諦めて帰るだろう…』

…ピーンポーン…

…ピンポンピンポンピンポンピンポンピーンポーン…

降谷はしつこいインターホンに重い腰を上げてドアを開けた。

あやり「おっじゃましまーす!」

いつもなら追い返してくるはずの降谷はそんな気力さえないようで、あやりはぼうっとしている降谷の横を通り過ぎて部屋へと入っていった。

降谷「何しに来たんだよ…」

あやり「遊びに来た!」

降谷「悪いがそんな気分じゃ…」

「ちょっと、降谷ずっとスーツのまま?ありえない!ほら、はやく着替える!シワになるよ!あ、でもシャワー浴びたほうがいいわ!今お風呂沸かすから入りな!あー、それからご飯も食べる!ひっどい顔よ!」

降谷「うるさいっ…!…俺のことなんか放っておけよ…!」

降谷はそう言って壁にドンっと拳をぶつけた。だがあやりはそれに怯むこともなかった。

あやり「うん!無理!」

降谷「は?」

あやりの返答に降谷はぽかんとした顔をした。

あやり「あんたには万全の状態で早く仕事に復帰してもらわないと困るの!まったく…あんたが休んでるせいで(名前)は仕事詰め!私と飲みに行ってさえくれないのよ!!」

降谷「あいつ、仕事してるのか…」

あやり「はぁ?あったり前でしょ?」

降谷「ハハ…あいつにとって…それだけのことだったのか…」

渇いた笑いをこぼす降谷にあやりは苛立ちを覚えた。

あやり「は?…あんた、何言ってんの。」

降谷「…」

あやり『だめだ、ゆりのため、怒っちゃだめ…!』「はぁ、もういつまで辛気臭い顔してんのよ!ちょっとお風呂にでも入って頭冷やしな!ほら!」

あやりはそう言って降谷の手を引くとお風呂に無理やり入れた。


降谷がお風呂に入っている間にあやりは袋から差し入れを出して行く。

タッパーに入った美味しそうなおかゆやおかず。
ゼリーや果物、栄養ドリンク、風邪薬まで入っていた。

あやり「降谷は病人かよ(笑)」『ま、ある意味病人みたいではあるけど…』

その中にまた一つメモが入っていた。

"零くんは何も悪くないので怒らないであげてください。私の話はしないであげて。あと、ここ数日何も食べて無かったと思うので消化にいいものから食べさせてあげてください。特におかゆは一口でもいいので絶対に食べさせてください"

あやり『まったく…この状況も予想がついたってわけね…。優しすぎるのよ、ゆりは…』

暫くしてお風呂に入り終わった降谷はリビングへと戻って来てソファに座っていた。

あやり「はい!次はこれ食べてよね!」

あやりはタイミングよく温め終わったおかゆを降谷の前に出した。

降谷「いらない…」

あやり「飢え死にするわよ!」

降谷「かまわない…」

あやり(ブチっ…)「ふざけんなよっ」

降谷「…」
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