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神様はアタシの胸に

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: 山科
目次

第20話

 表情は少ししか見えないけど、どこか悲しそうに見える。
「……はぁ」
 あたしは、そんなシャルを見て、嘆息した。
 そんな顔をされたら、あたしは――
「仕方ないな。その機械とやら、探すか」
 ――助けないわけにはいかないじゃないか。
「っ! てつだって……くれるのか?」
「当然だろ。それに、これはあたしのせいでもあるしな」
 綾瀬川奈々子の提案を断ったから、こうしてあたしの学校が標的にされているんだ。
 あたしにも、責任の一端がある。
「今は……10時ちょっと前か。タイムリミットまであと三時間。早く見つけないとな」
「うむ! がっこうじゅうをすみずみまでさがそうぞ!」
 羽織ったあたしの制服の上着で目を拭うと、さっきまでの暗い表情が嘘のように明るい顔で、シャルはそう言った。
「それしかなさそうだな」
 あたしは、シャルの笑顔がもとに戻ったことに喜びを感じながらも、本当に3時間でなんとかできるのか、不安を感じていた。



 2時限目の授業をサボり、学校内をくまなく捜索すること約1時間。
 今のところ、怪しげな機械なんて発見できていない。
 そもそも、この広い真龍高校を、あたし一人で隅々まで捜索するというのは、やっぱり無理がある。
 シャルが人の姿になっていられる時間は、69分間だけ。
 さっき少しの間人の姿になっていたから、実質今日人の姿になれるのは1時間程度だろう。
 そうなると、不用意に人の姿にさせるわけにはいかない。
 機械を見つけた後に、あたし一人じゃ機械を壊すことができない、なんてことになってしまうかもしれないから。
「くそっ!」
 誰もいない廊下を疾駆する。
 焦ってはいけない。
 手がかりを見落としてしまうかもしれないから。
 でも、タイムリミットが刻々と迫っているので、焦ってしまう。
 頭ではわかっていても、身体が動いてしまう。
「はぁ……はぁ……」
 あたしの体力も、限界に近づいてきた。
 当たり前か。
 1時間近く、全力で駆け回っているんだから。
 このままでは、ヤバい。
「シャル、何かわからないのか? 機械が仕掛けられそうな場所とか」
『すまぬが、現状は何も……。モザイク化計画のことは、妾たちもよくわかっていないからの』
「くそっ!」
 あたしは立ち止まり、その場に座り込んでしまう。
「もう……だめ。体、力の……限……界」
 校内に2時限目終了のチャイムが鳴り響いた。
 こんなところに座っていると、教師に見つかってしまうかもしれない。
 そうなったら、捕まってかなりの時間を食うだろう。
 でも、疲労のせいで身体が動かない。
 これは、間に合わないかもしれないな。
 まあ、仕方がない。
 もともと無理な話だったんだ。あたし一人でなんとかするなんて。
 もう、無理だ。諦めよう。
「よ! 大丈夫か?」
 あたしがそんな負の思考を巡らせていると、頭の上から声が聞こえてきた。
 ゆっくり顔を上げると、そこには、
「ほれ、コーヒー牛乳」
 紙パックのコーヒー牛乳を差し出す、幼馴染みの姿があった。
「さんきゅー」
「ゆあーうぇるかむ」
 受け取ったコーヒー牛乳を口に運んでいく。
 口内に広がる、コーヒー牛乳の甘味。
 疲れが、いくらかましになった。
「なんか、あったのか?」
 あたしの隣に腰を下ろし、尋ねてくる涼太。
 あたしは、簡易版モザイク化計画のことを、涼太に話す。
「なら、俺も探すの手伝うさ」
 全てを聞き終わった涼太は、スマイル全開でそう言ってくれる。ちょっとキモい。
「お前、授業は?」
「んなの、今はどうでもいいだろ? 幼馴染みを助ける方が大事だよ」
『下心丸見えじゃのう』
「何か言ったか、おっぱい?」
『言ってほしいのか?』
「……ごめんなさい」
「?」
 何かわけのわからないやり取りを交わすシャルと涼太。
 ともかく、これは頼もしい。
 あたしたちは、二手に分かれて校内を探し始めた。



「あった?」
「いや、こっちは見つからなかった」
 二手に分かれて1時間が経過した。
 あたしたちは、あらかじめ決めていた合流ポイントで合流し、お互いの成果を報告しあう。
 でも、二人とも見つからなかったようだ。
『うむ……どうするか……』
 シャルが唸り声を上げる。
 校舎内は、ほとんど探したことになる。
 教室の中はさすがに探してないけど、もし怪しげな機械があったら誰かしら気が付くだろう。
 となると。
「校舎内にはないんじゃないか?」
『うむ……たしかに、この情報は敵からのものじゃしのう……その可能性も、なくはないが……』
 でもなにか違う、とでも言いたげなシャル。
 むう……なら、どこにあるんだ?
「そういえばさ」
 思い出したように、涼太が声を上げた。
「地下倉庫は探したか?」
「地下倉庫?」
 そんなのあったっけ?
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